公爵家の次男は北の辺境に帰りたい

あおい林檎

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二章 士官学校

新学期②

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「は?」

ジェイデンの脳裏に2つ下の異母妹の顔が浮かぶ。
最後に顔を見たのは7年前だ。
6歳の姿しか知らない彼には、その婚約者候補と言われても実感が湧かなかった。

「ちょっと待ってください。妹はまだ13になったばかりのはずですよ」
「ルイスはまだ21なので、そんなに離れ過ぎているわけではないですよ。まぁ、まだ婚約したわけではなく、ご両親・・・と言うか母君が熱心に婚約相手を探しているそうですが」

他にも年が近い候補が何人かいるようだ。
貴族にも派閥がある。婚姻による結びつき次第ではその力関係が大きく動くこともあり、この年末の社交界では、その話題で持ちきりだったそうだ。

年末に帰ってこなくてもいいと言われたのは、このせいかとセオドアは納得した。ジェイデンは気付いていないが、いい意味でも、悪い意味でも彼は目立つ。
ジェイデンが社交界に顔を出せば、妹の婚約話は霞んでしまっていただろう。

「ルイスとの話も、まだ噂の域を出ません。そう身構えずにいてください」

黙ってしまったジェイデンに、ユージーンが宥めるように言った。

「まあ、ノティス家ならロンデナートとも釣り合いが取れますしね」

セオドアがさらりと言う。
ノティス家は優秀な魔術師を多く輩出する名門だ。多くは文官として国の中枢で要職についている。

「・・・聞かなきゃよかった」

ジェイデンは眉間に皺を寄せながら息をはいた。

















職員室。
扉を抜けたところは大きな部屋になっており、大きなテーブルが置かれている。
その奥は長い廊下になっていて、教師の個室が並んでいた。

「ルイスの部屋はこっちです。セオドアは私の部屋で待っていてください」

そう言って、ユージーンは左手にある緑の扉を指差した。
彼の個室の前でセオドアと別れ、ジェイデンはユージーンについて廊下を進んでいく。

「じゃあな、また放課後に」
「ああ」

背中に掛けられた声に振り返って返事をし、前を行くユージーンに歩幅を合わせる。
何人かの教師とすれ違い、声を掛けられる度にユージーンが紹介をしてくれた。

「へえ、ロンデナートの次男か。長男とは似てないな」

その中には長兄の知り合いもいたようだ。
どの相手にも控えめに頭を下げて、前を通り過ぎる。

「貴族の付き合いも面倒なものですね・・・君は特に」

大変でしょう、とユージーンに気遣われてジェイデンが苦笑する。

「7年間田舎にいたもので。王都では気後れしますね」

暗に自身の見た目の事を言われていると気づきながらも、ジェイデンは曖昧な返事をする。
セオドアや周囲に自覚がないと言われ続け、最近では気をつけるようになったが、貴族の社交が苦手なのは昔からだ。
こう言う時にどう返せばいいか、ジェイデンはいまだに上手い言葉を見つけられない。

ユージーンはそんな彼の心情を察したのか、穏やかに微笑んで言葉を切った。
静かに廊下を進み、青い扉の前で立ち止まる。

「ここです。・・・ルイス」

扉をノックし、少し待っていると中から鍵を開ける音がした。

ゆっくりと扉が開き、銀髪の男が顔を出した。



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