公爵家の次男は北の辺境に帰りたい

あおい林檎

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二章 士官学校

新学期⑦

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「言い過ぎよ、アマーリエ」

ソフィアが嗜めるようにジェイデンを庇う。
そういえば、と話題を変えた。

「お兄様に会いにいくのはどうするの? 」

話題が逸れたことにほっとしながらも、続けられた言葉にジェイデンは声を詰まらせる。

「…思い切り目が合ってたからな。早いうちに会いに行った方がいいと思うが、さすがに7年ぶりなんだ。失礼のないように場を整えないといけないだろ」

他の弟妹ならまだしも、ベイルートは公爵家の後継だ。
北の屋敷からも、王都に戻るならと執事から手土産がわりに色々と届け物を持たされている。第一夫人に忠実なあの執事は、ベイルートにも盲目的な忠誠を誓っているのだ。

「寮に戻って荷物を取って来なきゃいけないの? 」

「ああ。セオドアにも準備があるだろうしな」


「それなら、放課後に中央寮に会いに行かれたらどうかしら。私も中央寮なのだけど、貴族の生徒が多いから、訪ねていらした家族と会えるように応接室があるの」

お兄様には先に伝書鳩で先触れを出しておかれるといいと思うわ、とソフィアが笑顔で助言する。

「学内の伝書鳩は、雀なの。可愛いわよ」

アマーリエが言う。

伝書雀は王都の中枢である主に騎士団と士官学校、王宮内など主要施設の施設内のみを飛び交う伝言用の雀である。飛行距離は鳩たちより劣るが、近距離の連絡用には十分で、情報の機密性を保つために王宮で管理されている。

「確かにその方が落ち着いて話ができそうだ。ありがとう、ソフィア」

「お役に立てたのなら嬉しいわ」

礼を言うジェイデンに、笑顔でソフィアが返した。











さっそくジェイデンは二羽の伝書雀を送った。
セオドアとベイルートに宛てた雀たちは、それぞれの返事を持って返ってくる。


『先に寮に戻って準備をしておく』

『了解した。では寮で待っているよ。久しぶりに会えるのが楽しみだ』


セオドアは従者でもあるので、細かい手配や連絡は彼の仕事になる。
突然の訪問になり、セオドアや兄の側近たちにも負担をかけてしまったかと心配にもなったが、それを聞いたソフィアからはきっぱりと諭された。

「それは彼らの役目なのだから、ジェイデン様が気にすることではないわ。彼らの誠意に感謝することは大切だけど、そのような気遣いは返って失礼になるの」

主人の振る舞いや社交術は、そのまま彼らに仕える者たちの評価に繋がるの、とソフィアにきっぱりと諭された。

ソフィアは王都でも名門のカルテス家の令嬢である。気位の高い、百戦錬磨のご令嬢たちには及ばないが、それなりの振る舞いは身につけている。
上流階級の作法には未だに慣れないジェイデンには耳が痛いが、身近に助言してくれる存在がいてくれたことに感謝した。

「ありがとう。北では貴族の付き合いはほとんどなかったから、気の利いた社交術には疎いんだ」

王都で子供時代を過ごしたとはいえ、北で自分のことは自分でする生活が長かったジェイデンは、つい感覚が平民に近くなってしまっている。自身が貴族の作法に疎いと自覚はあるのだ。

「これからも、何か気付いたら教えてもらえると助かる」

「私でよければ、喜んで」

そんな2人の様子を見ていたアマーリエが、隣から腕を伸ばしてにこにこと微笑むソフィアの頭を撫でる。

「うふふ、和むわぁ」

「アマーリエ?」

「良い子でしょう? 可愛いし」

さらさらの黒髪を撫でながら、アマーリエが言う。

「そうだな」

ジェイデンは同意を求められて、本心から頷いた。


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