ワルモノ

亜衣藍

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「う……」

 全身を駆け抜けるような鋭い痛みと、ひどい鈍痛の両方に苦鳴をあげ、聖はゆっくりと覚醒した。

 ボンヤリとしていた視界が、段々にハッキリとする。

(ここは――どこだ? )

 まず、己の状態を確認する。

 骨折などのひどいケガはしていないようだが、全身打撲の痣だらけで、あちこち腫れて熱をもっているようだ。

 そして、ヤクザとトラブルを起こす以前から、体中に負っていた大小の傷には、清潔な包帯が巻かれている。

 頭にも丁寧に包帯が巻かれていて、蹴られて出血した箇所は入念に手当てされているようだ。



――――しかし、なぜ自分は裸なのか?



 どうやら、意識のない状態のあいだに、全裸にされ、身体を清拭せいしきされ、ケガをした箇所を手当てされたらしい。さすがに、一週間以上風呂に入っていない薄汚い体のままでは、傷口からの雑菌感染の方が憂慮されたのだろう。

 だが、勝手に体をいじられた事には間違いなく、不快感しか感じない。

(病院……か? )

 静かに半身を起こして、周りを見渡す。

 しかし、ここは病院などではなく、宮大工が手掛けたような豪奢ごうしゃな和室だった。
 
 螺鈿らでん細工ざいく欄間らんまなど、普通の一般家庭にあるわけがない。

 とんでもない金持ちの家か、曰くつきの家か――――多分、後者だろう。

 青い畳の香りに眉をひそめながら、聖はそろそろと、敷いたあった布団から起き上がる。

(早く、とんずらしねぇとヤバイな)

 だが、裸のままでは具合が悪い。

 とりあえず布団からシーツを剥ぎ取り、それを体へ巻き付ける。

(オレの服は、どこだ? それに、ここは――? )

 聖は辺りを警戒しながら、室内の物色を開始した。

 服もそうだが、生きて行くには、カネは何がなんでも必要だ。

 これだけ立派な屋敷なら、何かしら金目のものはあるだろう。

 ゴソゴソと、和箪笥の引き出しを探っていたところ、廊下の方から足音が聞こえてきた。

(マズイ! )

 聖は慌てて、廊下側とは反対側の障子を開ける。

 だが、カラリと開けた先には、強面の男が仁王立ちに立ちはだかっていた。

 どうやら、最初から聖は監視されていたらしい。

「くそっ! 」

 悪態をつき、聖は背後を振り返る。

 するとそこには、五十前後の壮年の男がクスクスと笑って立っていた。

 両隣には、かなり屈強そうな男達が付き従っている。

 どうみても、玄人暴力のプロだ。

 自分一人の力では、この場面を突破する事はムリなことだと悟り、聖は地団太を踏む思いでキッと男を睨む。

 屈強そうな男たちの中で、クスクス笑う男はむしろ貧弱そうに見えるが、確実にこの男こそがこの場のトップなのだと強烈に感じる。

 意識を失う前に、この男の腕に捕らえられた事を思い出し、なお一層、聖は警戒心をあらわに男を睨みつけた。

「――――言っておくが、最初に絡んできたのはそっちの方だぜ」

「ふん? 」

「オレはただ、許可をもらった商店の前で一畳程のゴザを広げて、銀細工の小物を売っていただけだ。それを、ショ場代を払えだ何だと、言いがかりをつけやがったのはそっちだ。おかげで、せっかく仕入れた銀細工もどっかに行っちまったよ。どうしてくれんだ? 」

 素っ裸にシーツだけを巻き付けた格好で、だが、聖はそう啖呵を切ってみせた。

 ここで、泣いて震えているだけのガキだったら、さぞかし可愛げもあるんだがと、正弘は苦笑する。

 しかし、この少年がそういうしおらしいタイプの少年であったなら、正弘はそもそも最初から、興味を引かれなかった事だろう。

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