ワルモノ

亜衣藍

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   ◇

 この半年の間に、傷付き痣だらけだった身体は、綺麗に回復した。

 汚く浅黒かった身体も、乳白色の元の色を取り戻して、ピカピカに輝いている。

 だが、それと同時に、物心ついてからずっと聖を悩ませていた事象が、その身へ再び起きるようになっていた。



 認めたくはないが――――どうやら自分は、かなり美しいらしい。



 そして、同性にとって、欲望の対象になるようなのだ。

 それは、聖にとって、全く喜ばしくない忌々しい事実だった。

 故郷では、母親が家に連れ込んだ男達に、何度も乱暴されそうになった。

 父親は都会へ出稼ぎに出たまま戻らず、母親はその鬱憤を晴らすように、幼い聖に当たった。

 面白半分、母親と男たちに身体を弄られそうになったのも、何度もある。

 持ち前の気の強さと喧嘩っ早さでその度に抵抗し、反撃し、傷だらけになりながらも、近所の家に助けを求めたりしてどうにか十の歳まで逃れられたが、成長と共に隠しようもなく美しくなる容姿に、男達がとうとう本気になり始め、さすがの聖も進退きわまり、自ら養護施設へ駈け込んで難を逃れた。

 だが、駆け込んだ先の養護施設もまた、おおよそ安心できるような環境ではなく、聖は荒れに荒れた。

 そして十二の時に、初めて人の優しさに触れる事になる。

 今となっては、それが同情だったのか憐憫だったのか分からないが、孤独と寂しさに震える聖を抱き締めて『愛している』と言ってくれた女がいた。

 中学の担任だった、畠山裕子という名の女教師だ。

 そして、ただ、一度だけの逢瀬――……。

 その後、その教師は妊娠したと風の便りに聞いたが、それも本当かどうか分からない。

 女教師の家は、その辺りでは有名な名家だった。

――――教え子と通じたなど、犯罪行為だ。

 もしも本当に妊娠したとしても、十中八九、その子は家族によって強制的に堕されている可能性が高い。

 しかし、もしも……と、どうしても確かめたかったが、聖の方にも逃れられない受難が待ち構えていた。

 なにせ、ウンザリするほどの田舎町だ。

 聖と女教師のウワサはあっという間に町中に広まり、聖は外出することも学校へ行くことも禁じられ、施設へ閉じ込められた。

 その後、施設の職員達によって乱暴されそうになり、着の身着のまま、聖はその日に施設を脱走するしか道がなかった。

 そこから、もうその場所には戻っていない。

 施設を飛び出したのは、十三になったばかりの冬だった。

 それからずっと、盛岡、仙台と彷徨い、十五の歳になって東京へやってきた。

 帰る故郷も家もない。家族もいない。友人もいない。

 聖には、何もない。

 しかしこのまま路傍ろぼうの石として朽ちていく前に、何かしら爪跡を残してから死にたい。

 その一念で、聖はたった一人でここまで来た。



 だが、今の自分は――……。



「なんでぃ? まぁた、やり合ったのかよ? 」

 その声に振り向くと、大島を粋に着こなした五十絡みの壮年の男が立っていた。

 一見すると、とても極道に見えない。

 ごく普通の、小柄な、温和な男に見える。

 だが、この男こそが、この天黄組の組長である天黄正弘なのだった。



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