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「……つまり、増えてんのか減ってんのか、それを見極めたいっていうのか? 」
聖の探るような問い掛けに、正弘はニヤリと笑って答える。
「頭でもいい、腕っぷしでもいい。それこそ、色でも構わねぇ。とにかく増やしていたら、ちぃとおめぇの使い道を考えてやるよ。確かに、湯坊主のままじゃあ、そういつまでもここに置いちゃあおけねぇからな」
「……」
「このままじゃあ、おめぇ、近い内に気の荒い連中に取っ捕まって穴だらけにされて、どっちにしろ死んじまうぜ」
そう言うと、正弘は手ぬぐい片手に風呂場を出て行った。
一人残された聖は、湯船に浸かりながら思案する。
――――ここは、極道の本拠地だ。
いずれにせよ、正弘に気に入られれば、そのまま極道の仲間入りするのは間違いない。
嫌なら、出て行けばいいだけの話だ。
正弘は、べつに聖に屋敷から出るなと命令もしていないし、監視も付けていない。
聖が出て行こうと思ったら、いつでもこんな所は出て行ける。
穴だらけだか何だか知らないが、そうなる前に、さっさと連中に後ろ足で砂をかけて逃げてしまえばいいのだ。
しかし、聖は悩みながらも思い止まって、こうしてここに残っている。
(東京、か……)
半年前、聖は悲壮な覚悟をもって上京した。
そして、上野に降り立ち、山手線に乗り換えて東京駅へ向かった。
東京だから、東京駅。
そんな発想自体が、本当に田舎者だったと思う。
だが、ビルだらけのそこで何をやれるはずもなく、むしろ猥雑な印象だった上野の方が住みやすい気がして、再び同じ場所へ戻っていた。
そこで、真っ黒でクズ同然の銀細工を、それこそタダみたいな値段で手に入れ、酢でピカピカに磨き上げて売ろうとした。
その矢先に、ショ場代だ何だと因縁を付けられ、今に至る。
あの銀細工を、もしも真っ当に売っていたとしたら、どうなっていただろう?
そう考え、直ぐに結果が出た。
――――どうにもならないな。
聖の答えは、そう言っている。
完売したとしても、所詮は二束三文だ。
せいぜい三日の糊口を凌いだに過ぎないだろう。
そう考えると、こうして正弘に拾われ(極道とはいえ)寝食を提供してもらったのは、幸運かもしれない。
しかも、100万円でテストしてみて、それで結果が良ければ、湯坊主ではなく正式に聖の身の振り方を考えるという。
盃を貰い、自身も極道の仲間入りを果たしたなら、これまでのように、安易に聖へ手を出そうとする者はいなくなるだろう。
組で、認められるような男になりさえすれば、もう誰も聖を侮辱しない。
色子だ何だと、嫌らしく穿った色眼鏡で見る者もいなくなる。
「やってみるか……」
今更、極道だカタギだと、そんな事はどうでもいい。
どっちにしろ、聖には守りたい世間体だの家族だのは一切無いのだ。
ヤクザだ何だと後ろ指差される人生も、どうせ一人きりだ。
極道になるなら、それも上等だ。
道連れなど、最初からいないのだから。
あの男が100万円をやると言い切ったのだから、ウソではないだろう。
聖なりに頭を使い、必ず結果を出してやる。
そして、聖をバカにして来た連中を、まとめて足元へ平伏せてやろうではないか。
天黄正弘――――不思議な男だ。
聖の事を、欲望を抜きにして構いたがる男など初めてだ。
先程のやり取りを思い出し、聖は何とも言えない気持ちになる。
今はいない母親の言葉が懐かしかったのか、もう一度言ってくれとせがむとは。
「としょりのくせに、わらすみてぇでめんけぇな」
つい、またお国言葉が口からこぼれてしまい、聖は一人苦笑していた。
聖の探るような問い掛けに、正弘はニヤリと笑って答える。
「頭でもいい、腕っぷしでもいい。それこそ、色でも構わねぇ。とにかく増やしていたら、ちぃとおめぇの使い道を考えてやるよ。確かに、湯坊主のままじゃあ、そういつまでもここに置いちゃあおけねぇからな」
「……」
「このままじゃあ、おめぇ、近い内に気の荒い連中に取っ捕まって穴だらけにされて、どっちにしろ死んじまうぜ」
そう言うと、正弘は手ぬぐい片手に風呂場を出て行った。
一人残された聖は、湯船に浸かりながら思案する。
――――ここは、極道の本拠地だ。
いずれにせよ、正弘に気に入られれば、そのまま極道の仲間入りするのは間違いない。
嫌なら、出て行けばいいだけの話だ。
正弘は、べつに聖に屋敷から出るなと命令もしていないし、監視も付けていない。
聖が出て行こうと思ったら、いつでもこんな所は出て行ける。
穴だらけだか何だか知らないが、そうなる前に、さっさと連中に後ろ足で砂をかけて逃げてしまえばいいのだ。
しかし、聖は悩みながらも思い止まって、こうしてここに残っている。
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そして、上野に降り立ち、山手線に乗り換えて東京駅へ向かった。
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そんな発想自体が、本当に田舎者だったと思う。
だが、ビルだらけのそこで何をやれるはずもなく、むしろ猥雑な印象だった上野の方が住みやすい気がして、再び同じ場所へ戻っていた。
そこで、真っ黒でクズ同然の銀細工を、それこそタダみたいな値段で手に入れ、酢でピカピカに磨き上げて売ろうとした。
その矢先に、ショ場代だ何だと因縁を付けられ、今に至る。
あの銀細工を、もしも真っ当に売っていたとしたら、どうなっていただろう?
そう考え、直ぐに結果が出た。
――――どうにもならないな。
聖の答えは、そう言っている。
完売したとしても、所詮は二束三文だ。
せいぜい三日の糊口を凌いだに過ぎないだろう。
そう考えると、こうして正弘に拾われ(極道とはいえ)寝食を提供してもらったのは、幸運かもしれない。
しかも、100万円でテストしてみて、それで結果が良ければ、湯坊主ではなく正式に聖の身の振り方を考えるという。
盃を貰い、自身も極道の仲間入りを果たしたなら、これまでのように、安易に聖へ手を出そうとする者はいなくなるだろう。
組で、認められるような男になりさえすれば、もう誰も聖を侮辱しない。
色子だ何だと、嫌らしく穿った色眼鏡で見る者もいなくなる。
「やってみるか……」
今更、極道だカタギだと、そんな事はどうでもいい。
どっちにしろ、聖には守りたい世間体だの家族だのは一切無いのだ。
ヤクザだ何だと後ろ指差される人生も、どうせ一人きりだ。
極道になるなら、それも上等だ。
道連れなど、最初からいないのだから。
あの男が100万円をやると言い切ったのだから、ウソではないだろう。
聖なりに頭を使い、必ず結果を出してやる。
そして、聖をバカにして来た連中を、まとめて足元へ平伏せてやろうではないか。
天黄正弘――――不思議な男だ。
聖の事を、欲望を抜きにして構いたがる男など初めてだ。
先程のやり取りを思い出し、聖は何とも言えない気持ちになる。
今はいない母親の言葉が懐かしかったのか、もう一度言ってくれとせがむとは。
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