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「その話、本当なんですか? 」
「あ、ああ……」
その時になって、この碇もまた、同じ十五の少年だったのだと思い至ったらしい。
苦笑しながら、一人が口を開いた。
「そういえば、お前もまだ十五だったんだよなー。オレよりデカいから、全然そんな気しねぇけど」
「って、マジでまだそんな歳かよ!? オレはてっきり、とっくに二十歳越えてると思ってたぜ!? 」
「ほら、こいつはお勤め中の、近藤夫婦の――」
「その話、本当なのか! 」
再び、碇は口を開いた。
真剣な様子に、一人が嘆息しながら答える。
「ああ、マジだ。愛人か養子かの審議は別にしても、何でも、親分のテストを見事クリアして、余計に歓心を得たのは本当らしい。近々盃を貰うんじゃないかと、本家ではもっぱらのウワサだ」
「――それじゃあ、オレだって正式に盃を貰いたい! いつまでも居候じゃなくて、ちゃんと、ここで身内にしてもらいてぇんだ! 兄貴たちだって、オレの気持ち知ってるだろう! 」
碇の訴えに、その場にいた男達は困惑顔になる。
「そりゃ……知ってるけどよぉ。お前まで、何も両親に倣って極道にならなくても――」
「狂犬って呼ばれるようなオレに、他にどんな生き方があるってんだ。なぁ、頼むよ! オレも正式に盃を貰えるように、本家に掛け合ってくれよ」
昔ながらの、地回りの気質が残る天黄組では、本家の意向が無ければ組員にはなれない。
末端の、この支部だけでは、決して認められない。
「お前の言い分は分かるが――」
兄貴分たちは互いの顔を見合わせながら、とりあえず折衷案を口にした。
「本家にツテのあるヤツに、幾らか握らせて話を通してもらうように計らってやるよ。お前の身の振り方は、それからだ」
その提案に、碇は不承不承頷く。
だが、内心で燻ぶるどす黒い感情は、抑えきれそうもない。
(その、別嬪だってツラを、二目と見られないようにグシャグシャにぶっ壊してやるよ)
上野の本家は、そんなに遠くない。
――――碇は、暗い嗤いを浮かべていた。
◇
あまり知られていないが、口座さえあれば、未成年でも株の売買はできる。
もちろん、それぞれの証券会社によって規約があり、未成年の口座開設を不可としている証券会社も多いが、可としている証券会社もあった。
聖は、そこに目を付けることにした。
しかし、実際に株売買をするには、親権者の同意書が必要となる。
聖の親権者は、田舎にいるであろう両親だ。
だが、今更、そんなところに頼るワケにはいかない。
だいたいにして父親も母親も、何年も音信不通なのだ。
聖が養護施設に入居していた期間、一度も面会に訪れず、連絡もなかった。
両親とも、とっくに野垂れ死にしている可能性がある。
そこで聖は、正弘の持つ証券会社の口座を使わせてもらうことにした。
何の株を買うのか、どうするのか?
全て、聖が裁量を請け負って。
そして、彼は今でいう、デイトレードを駆使した。
100万円を2分割して、上がると思う株の安値に50万円投資して上がれば売り、下がればここが底と思うところで、もう50万円を投資する。
つまり、100株50万円で買った株が55万円になって売れば、儲けが出る。
次に100株50万円で買った株が45万円になったら100株買い増しして200株90万円で持っておき、元の100株50万円(200株だと100万円)に戻ったところで売れば、儲けが出る。
ようするにデイトレードとは、短期で利ザヤを稼ぐ典型的な手法だ。
ましてや、バブル絶頂期。
「あ、ああ……」
その時になって、この碇もまた、同じ十五の少年だったのだと思い至ったらしい。
苦笑しながら、一人が口を開いた。
「そういえば、お前もまだ十五だったんだよなー。オレよりデカいから、全然そんな気しねぇけど」
「って、マジでまだそんな歳かよ!? オレはてっきり、とっくに二十歳越えてると思ってたぜ!? 」
「ほら、こいつはお勤め中の、近藤夫婦の――」
「その話、本当なのか! 」
再び、碇は口を開いた。
真剣な様子に、一人が嘆息しながら答える。
「ああ、マジだ。愛人か養子かの審議は別にしても、何でも、親分のテストを見事クリアして、余計に歓心を得たのは本当らしい。近々盃を貰うんじゃないかと、本家ではもっぱらのウワサだ」
「――それじゃあ、オレだって正式に盃を貰いたい! いつまでも居候じゃなくて、ちゃんと、ここで身内にしてもらいてぇんだ! 兄貴たちだって、オレの気持ち知ってるだろう! 」
碇の訴えに、その場にいた男達は困惑顔になる。
「そりゃ……知ってるけどよぉ。お前まで、何も両親に倣って極道にならなくても――」
「狂犬って呼ばれるようなオレに、他にどんな生き方があるってんだ。なぁ、頼むよ! オレも正式に盃を貰えるように、本家に掛け合ってくれよ」
昔ながらの、地回りの気質が残る天黄組では、本家の意向が無ければ組員にはなれない。
末端の、この支部だけでは、決して認められない。
「お前の言い分は分かるが――」
兄貴分たちは互いの顔を見合わせながら、とりあえず折衷案を口にした。
「本家にツテのあるヤツに、幾らか握らせて話を通してもらうように計らってやるよ。お前の身の振り方は、それからだ」
その提案に、碇は不承不承頷く。
だが、内心で燻ぶるどす黒い感情は、抑えきれそうもない。
(その、別嬪だってツラを、二目と見られないようにグシャグシャにぶっ壊してやるよ)
上野の本家は、そんなに遠くない。
――――碇は、暗い嗤いを浮かべていた。
◇
あまり知られていないが、口座さえあれば、未成年でも株の売買はできる。
もちろん、それぞれの証券会社によって規約があり、未成年の口座開設を不可としている証券会社も多いが、可としている証券会社もあった。
聖は、そこに目を付けることにした。
しかし、実際に株売買をするには、親権者の同意書が必要となる。
聖の親権者は、田舎にいるであろう両親だ。
だが、今更、そんなところに頼るワケにはいかない。
だいたいにして父親も母親も、何年も音信不通なのだ。
聖が養護施設に入居していた期間、一度も面会に訪れず、連絡もなかった。
両親とも、とっくに野垂れ死にしている可能性がある。
そこで聖は、正弘の持つ証券会社の口座を使わせてもらうことにした。
何の株を買うのか、どうするのか?
全て、聖が裁量を請け負って。
そして、彼は今でいう、デイトレードを駆使した。
100万円を2分割して、上がると思う株の安値に50万円投資して上がれば売り、下がればここが底と思うところで、もう50万円を投資する。
つまり、100株50万円で買った株が55万円になって売れば、儲けが出る。
次に100株50万円で買った株が45万円になったら100株買い増しして200株90万円で持っておき、元の100株50万円(200株だと100万円)に戻ったところで売れば、儲けが出る。
ようするにデイトレードとは、短期で利ザヤを稼ぐ典型的な手法だ。
ましてや、バブル絶頂期。
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