ワルモノ

亜衣藍

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「おめぇに、そうねだられちゃあ袖にはできねぇなぁ」

「……」

「なんだか、初めての孫ができた気分だぜ」

「? 」

「オレの女房と子供は、昔――――……抗争に巻き込まれて、死んじまったのよ」

 たかが上野の地回りだと、高を括った関西系の連合組織に狙い撃ちにされた。

 その時に正弘は、戦後の焼け野原で失った『家族』を……せっかく、新たに手に入れたはずだった、愛する家族を再び失っていた。

 それからは所帯も持たずに、組を大きくする事だけに集中し、こうして今に至る。

「――だが、おめぇの居場所を作ってやるために、オレの養子にしてやるわけにはいかんのよ。そうしたら、おめぇ、絶対にタマぁ狙われちまう。組の連中の反感を抑えるには、オレだけじゃあ、もう、この組はデカく成り過ぎちまった」

「――」

「おめぇを、跡目の竜真のところへ預ける。そこで研鑽をつんで、立派に身を立てな」

「ああ……」

「盃は、用意してやるよ。だが、おめぇだけ特別に――極道が嫌になったら、いつでも返せるように計らってやるよ」

 そう言うと、しばらくの間、二人は本当に仲のいい親子のようにギュッと抱き締め合った。

――――内庭の、庭木に隠れた辻で。

 その様子を、怨念を込めたような目で睨みつける、近藤いかりという男がいたとは、この時は誰も気付かなかった。

   ◇

「おい」

 辻で正弘と別れ、一人で離れへ向かう途上、聖は後ろから声を掛けられた。

 振り返って、そちらを見ると、ずいぶんと厳つい顔をした男が立っている。

 良く言えば、目鼻立ちのハッキリとした、精悍な風貌とも言えるが。

――――悪く言えば、ゴリラだ。

 体格も、顔同様かなりガッシリしていて、相当な強面だ。

 縦は頭二ヶ分、横は、聖の倍は有りそうだ。

 だが、多分、年の頃は自分と同じくらいだろう。

 身体の方は成人と変わらないくらいに大きいが、表情は、どこかまだ幼い。

 しかしこんな場所で、同年代の男に会うのは初めてだ。

 珍しい物を見る気分で、聖は口を開いた。

「お前、誰かの子弟か? 」

 すると、その相手は有無も言わずに、拳を聖へと叩きこんできた。

(――っ! )

 咄嗟に身をひるがえしてそれを避けるが、拳は聖の肩をかすめ、その身へ痺れを残す。

「クソっ! 何しやがるっ!? 」

 だが、相手は鬼のような顔で、無言のまま、連続して拳を突いてくる。

 普通なら、悲鳴を上げて逃げ惑うところだろうが、生憎と、聖もそんな可愛い性格ではない。

 負けじと、聖はその長い足を一閃させた。

「うっ!! 」

 男の呻き声が上がる。

 聖の蹴りは、相手の脇腹側面へと、めり込んでいた。

 続けて、男の脛へと、強烈な蹴りを入れる。

 的確に、人体の急所を突いた攻撃だ。これで倒れない相手はいないだろう。

 この蹴り技で、今まで聖は己の身を守って来たのだから。

――――だが。

「ってぇな!! このオカマ野郎! 」

「!? 」

 相手は倒れず、逆に、体格差を生かして直接聖へタックルしてきた。

 こんな物理攻撃は避けようもない。

 それに、肩の痺れが残っていたので、回避するのが遅れてしまった。

 聖は、相手のタックルをまともに正面から受けてしまい、相手諸共、中庭の地面の上へと、その身を叩き付けられてしまった。

 不覚にも頭を打ってしまい、意識が遠くなる。

「う……」

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