17 / 47
5
5-2
しおりを挟む
◇
「どうした? やけに、顔色が悪ぃじゃねぇか?」
正弘がそう言うのも仕方がない。
三か月前は、鼻っ柱の強く、生意気で溌溂な牛若丸のようであったのに、今の聖は、俯いた夕顔の様にやつれて、悄然として見える。
もしかして――と、正弘は口を開いた。
「盃事のカネを工面しろとでも、言われたかい? 」
「う……ん……」
確かに、それもある。
だが、聖を悩ませるのは、それだけではない。
正弘はそれに気付かない様子で、ケッと笑った。
「なぁに、それならおめぇ、オレのカネを増やしたヤツがあるじゃねぇか。口座くれぇ、オレが作ってやるよ。おめぇが増やしたカネだ、そっくりおめぇの口座にくれてやらぁな」
そう言うと、一口茶を啜り、険しい顔になってチッと舌打ちをする。
「――しっかし、竜真の野郎、しばらくオレんとこに顔を出さねぇと思ったら、ずいぶんと、がめつくなったもんだな。これまで、組の為によく勤めてくれたと感心して、若頭から跡目にと、引き立ててやったってのによぉ」
忌々し気に吐き捨て、正弘は不満を口にする。
「子分の盃事のカネなんざ、親がぽぉんと出してやるのが道理じゃねぇか。しかも、おめぇは、オレんとこから研鑽を積ませるために、奉公に出したってのに――」
大親分の紹介で面倒を見ているハズなのに、これでは不義理もいいところだ。
憤然として、正弘は手慰みにしていたキセルを、パンっと灰皿に打ち付けた。
「子分の盃事のカネをケチるなんざ、極道の風上にもおけねぇ。ちっと、あの野郎に説教してやらねぇとダメみたいだな」
「それは――いいよ……」
聖は、かすれた声で制止した。
以前、正弘本人も言っていたではないか。
この組は、正弘一人の手に余るほどに、大きくなってしまったと。
正にそれは正鵠を射ていて、今やこの組の実権は、現組長である天黄正弘ではなく、次期組長と目される、跡目の肥後竜真へと移っていた。
竜真は、昔気質の正弘とは違い、冷酷で冷徹なヤクザだ。
正弘の元にいた頃は、巧みにその本性を隠していたらしい。
「どうした? やけに、顔色が悪ぃじゃねぇか?」
正弘がそう言うのも仕方がない。
三か月前は、鼻っ柱の強く、生意気で溌溂な牛若丸のようであったのに、今の聖は、俯いた夕顔の様にやつれて、悄然として見える。
もしかして――と、正弘は口を開いた。
「盃事のカネを工面しろとでも、言われたかい? 」
「う……ん……」
確かに、それもある。
だが、聖を悩ませるのは、それだけではない。
正弘はそれに気付かない様子で、ケッと笑った。
「なぁに、それならおめぇ、オレのカネを増やしたヤツがあるじゃねぇか。口座くれぇ、オレが作ってやるよ。おめぇが増やしたカネだ、そっくりおめぇの口座にくれてやらぁな」
そう言うと、一口茶を啜り、険しい顔になってチッと舌打ちをする。
「――しっかし、竜真の野郎、しばらくオレんとこに顔を出さねぇと思ったら、ずいぶんと、がめつくなったもんだな。これまで、組の為によく勤めてくれたと感心して、若頭から跡目にと、引き立ててやったってのによぉ」
忌々し気に吐き捨て、正弘は不満を口にする。
「子分の盃事のカネなんざ、親がぽぉんと出してやるのが道理じゃねぇか。しかも、おめぇは、オレんとこから研鑽を積ませるために、奉公に出したってのに――」
大親分の紹介で面倒を見ているハズなのに、これでは不義理もいいところだ。
憤然として、正弘は手慰みにしていたキセルを、パンっと灰皿に打ち付けた。
「子分の盃事のカネをケチるなんざ、極道の風上にもおけねぇ。ちっと、あの野郎に説教してやらねぇとダメみたいだな」
「それは――いいよ……」
聖は、かすれた声で制止した。
以前、正弘本人も言っていたではないか。
この組は、正弘一人の手に余るほどに、大きくなってしまったと。
正にそれは正鵠を射ていて、今やこの組の実権は、現組長である天黄正弘ではなく、次期組長と目される、跡目の肥後竜真へと移っていた。
竜真は、昔気質の正弘とは違い、冷酷で冷徹なヤクザだ。
正弘の元にいた頃は、巧みにその本性を隠していたらしい。
1
あなたにおすすめの小説
ハッピーライフのために地味で根暗な僕がチャラ男会計になるために
ミカン
BL
地味で根暗な北斗が上手く生きていくために王道学園でチャラ男会計になる話
※主人公へのいじめ描写ありのため苦手な方は閲覧ご注意下さい。
ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
発情期のタイムリミット
なの
BL
期末試験を目前に控えた高校2年のΩ・陸。
抑制剤の効きが弱い体質のせいで、発情期が試験と重なりそうになり大パニック!
「絶対に赤点は取れない!」
「発情期なんて気合で乗り越える!」
そう強がる陸を、幼なじみでクラスメイトのα・大輝が心配する。
だが、勉強に必死な陸の周りには、ほんのり漂う甘いフェロモン……。
「俺に頼れって言ってんのに」
「頼ったら……勉強どころじゃなくなるから!」
試験か、発情期か。
ギリギリのタイムリミットの中で、二人の関係は一気に動き出していく――!
ドタバタと胸きゅんが交錯する、青春オメガバース・ラブコメディ。
*一般的なオメガバースは、発情期中はアルファとオメガを隔離したり、抑制剤や隔離部屋が管理されていたりしていますが、この物語は、日常ラブコメにオメガバース要素を混ぜた世界観になってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる