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竜真は、カネの力と暴力という物を熟知していて、その力を振るって買い漁る様に、次々と組を吸収合併しては手に入れ、徹底的に暴力で支配した。
今や、関東一帯を、支配下に置きそうな勢いだ。
もちろん、正弘の元に残っている昔ながらの極道もいるが、その勢力は弱い。
義理人情だけでは、最早、新興勢力を抑える事は難しかった。
竜真は、正式に天黄組の跡目に格上げされたことで、もう正弘に遠慮はいらないと判断したのか、この数か月の間に瞬く間に勢力を拡大したのである。
それは、正弘の想定以上の勢いだった。
大親分の紹介で下に就いたハズの、聖に対する態度も――期待したものとは大きく異なっている。
遠慮するとか気を遣うとか、聖に対してそこまでしろとは言わないが、せめて、子分として大切に扱うだろうと踏んでいたのだが。
このままでは、聖の身も危ないかもしれない。
険しい顔のまま、正弘は聖を見遣る。
「――おめぇを、竜真に預けたのは……これからはあいつの時代になるだろうから、それを見越しての事だったんだが――オレとした事が、しくじっちまったらしいなぁ」
「大親分……」
「おめぇを、竜真の元から取り戻す。もう、野郎のとこには帰るな」
そう言うと、正弘はかすかに微笑んだ。
「盃事は、オレの屋敷で、来年の春に執り行おう。その頃には、おめぇの他にも何人か盃を貰う野郎もいるだろうから、纏めてやりゃあ依怙贔屓だ何だと言う連中もいねぇだろう。それまで、今日からまた、ここの離れに住み込みな」
その優しい言葉に、目頭が熱くなる。
――――だが……。
「……ありがてぇ言葉ですが、オレは――辞退します」
感情を押し殺し、聖は言った。
そう言うしかなかった。
「大親分には、こうして会うのは最後になるかもしれません。オレは、竜真の親分の元へ帰ります。今まで、色々と気遣ってもらって、申し訳ありませんでした」
「おい、どういう了見だい? 」
聖の顔色は悪い。
とても、本心からの言葉とは思えない。
訝し気に眉を寄せ、正弘は座席から立ち上がる。
そして、聖の横に身を移し、その麗しい夕顔のような横顔をジッと見た。
「――おめぇ……何か、脅されてんのか? 」
「……」
「だったら、尚の事、ここにいな。オレから、野郎にナシぃつけてやる」
「大親分――そのお気持ちだけで、オレは充分です」
そう告げると、聖はサッと立ち上がった。
これ以上ここにいては、決心が揺らぐ。
三か月前と変わらぬ、密かに父と慕った正弘の顔を見て、聖の気持ちは固まった。
この人の為に、意に添わぬ事でも受け入れると。
(こんなオレに、色恋抜きに優しくしてくれる物好きなんて――あんただけ、だったよ)
微かに笑い、聖は身をひるがえした。
夕刻までに帰らないと、鉄砲玉をぶち込むと脅されている。
畳に座ったまま、もの言いたげにこちらを見る正弘をチラリと振り返り、聖は最後の言葉を投げかけた。
「オレは、あんたが好きでしたよ」
今や、関東一帯を、支配下に置きそうな勢いだ。
もちろん、正弘の元に残っている昔ながらの極道もいるが、その勢力は弱い。
義理人情だけでは、最早、新興勢力を抑える事は難しかった。
竜真は、正式に天黄組の跡目に格上げされたことで、もう正弘に遠慮はいらないと判断したのか、この数か月の間に瞬く間に勢力を拡大したのである。
それは、正弘の想定以上の勢いだった。
大親分の紹介で下に就いたハズの、聖に対する態度も――期待したものとは大きく異なっている。
遠慮するとか気を遣うとか、聖に対してそこまでしろとは言わないが、せめて、子分として大切に扱うだろうと踏んでいたのだが。
このままでは、聖の身も危ないかもしれない。
険しい顔のまま、正弘は聖を見遣る。
「――おめぇを、竜真に預けたのは……これからはあいつの時代になるだろうから、それを見越しての事だったんだが――オレとした事が、しくじっちまったらしいなぁ」
「大親分……」
「おめぇを、竜真の元から取り戻す。もう、野郎のとこには帰るな」
そう言うと、正弘はかすかに微笑んだ。
「盃事は、オレの屋敷で、来年の春に執り行おう。その頃には、おめぇの他にも何人か盃を貰う野郎もいるだろうから、纏めてやりゃあ依怙贔屓だ何だと言う連中もいねぇだろう。それまで、今日からまた、ここの離れに住み込みな」
その優しい言葉に、目頭が熱くなる。
――――だが……。
「……ありがてぇ言葉ですが、オレは――辞退します」
感情を押し殺し、聖は言った。
そう言うしかなかった。
「大親分には、こうして会うのは最後になるかもしれません。オレは、竜真の親分の元へ帰ります。今まで、色々と気遣ってもらって、申し訳ありませんでした」
「おい、どういう了見だい? 」
聖の顔色は悪い。
とても、本心からの言葉とは思えない。
訝し気に眉を寄せ、正弘は座席から立ち上がる。
そして、聖の横に身を移し、その麗しい夕顔のような横顔をジッと見た。
「――おめぇ……何か、脅されてんのか? 」
「……」
「だったら、尚の事、ここにいな。オレから、野郎にナシぃつけてやる」
「大親分――そのお気持ちだけで、オレは充分です」
そう告げると、聖はサッと立ち上がった。
これ以上ここにいては、決心が揺らぐ。
三か月前と変わらぬ、密かに父と慕った正弘の顔を見て、聖の気持ちは固まった。
この人の為に、意に添わぬ事でも受け入れると。
(こんなオレに、色恋抜きに優しくしてくれる物好きなんて――あんただけ、だったよ)
微かに笑い、聖は身をひるがえした。
夕刻までに帰らないと、鉄砲玉をぶち込むと脅されている。
畳に座ったまま、もの言いたげにこちらを見る正弘をチラリと振り返り、聖は最後の言葉を投げかけた。
「オレは、あんたが好きでしたよ」
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