ワルモノ

亜衣藍

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 そんな碇に、声が掛けられた。

「おい、お前」

「はい? 」

 見遣ると、ここの組員ではないが、どこか上層部の遣いらしき強面の男衆が、裏口の木戸を押し開けて止める間もなく五人ばかり入ってきた。

 皆一様に、紋付き袴の正装姿だ。

 中の一人の手には、風呂敷包みが大切そうに抱えられている。

 遅まきながら、どこぞの組が、新年の挨拶回りをしに来たのであろうか?

 今日は十五日、小正月だ。

 その可能性はある。

「すいませんが――兄さんたちは、どこの組の方々ですか? その、表の門番を通して頂かないと…… 」

「――表だぁ? 職人連中が忙しそうに出入りしていたが、肝心の門番の姿は見えなかったぜ? 仕方ないから、オレ達はこっち側に回ったんだ」

「へい……そうですか――」

 碇は、その門番を交替しようと、移動していた最中だった。

 もしかしたら、碇の到着を待ちきれない門番が、勝手に場所を離れたのかもしれない。

(ったく、まだ、交替前だってのに)

 ここしばらく催事が続き、組員たちには緩みが出ているようだ。

 これが、碇が王様だった学園であったなら、決して許しはしない失態だ。

 間違いなく、鉄拳制裁を繰り出しているところである。

 チンピラにしか過ぎない、今の自分には、もうそのような真似はできないが。

 内心で舌打ちして、碇は「とりあえず、こちらへどうぞ」と先導した。

 最近まで碇が身を寄せていた大木組は、それまでのかしらである天黄正弘が根城を構えていた上野へ、小さな事務所を構えていた。

 しかし、大木組の兄貴筋であった、肥後竜真が天黄組跡目になったことにより、大木組は解散を決め、そっくりそのまま肥後竜真一派との合流を決めた。

 それに伴い、肥後竜真は自身の構えていた浅草の組事務所と屋敷を、新たに大きく改装している次第である。

 それは、上野本家よりもはるかに大きな敷地面積となっていた。

 暗に、もう時代は天黄正弘ではなく、肥後竜真なのだと宣言しているようなものだった。

「――しかし、ずいぶんと広く作り直したもんだな。竜真のヤツ、かなり金回りがよさそうだ」

 紋付き袴の一人が、関心と嫉妬がない交ぜになったような口調で、そう言った。

 これに何と言って返したらいいものか戸惑い、とりあえず碇は、

「へい、おかげさんで」

 とだけ、曖昧に返す。

 そして、屋敷の応接間へと、一団を通した。

「じゃあ、こちらでお待ちになってください。今、兄貴を呼んでくるんで。えーと、兄さんたちは……」

「上野本家から、わざわざ来てやったんだ。ったく、茶はいいから、さっさと行きやがれ」

「本家ですか!? それは、ご足労でしたっ! ただ今、すぐに――」

 慌てて身をひるがえそうとした碇であったが、そのタイミングで、違う一人が口を開いた。

「ここの屋敷に、一ヵ月くらい前に綺麗な男が来ただろう? 」

「――はぁ? 」

「ああ、男っていうか、まだ子供――少年か? 」

「いえ、よく分かりません。オレも、ここに厄介になったのは一週間前からですから」

「ん? おめぇ……思ったより、まだ若そうだな? 」

 碇が意外と年若そうな事に気づき、一人がそう呟く。

 なので、碇は頷いて答えた。

「へい。オレはこのあいだ十六になりました。盃事は、ここの親分さんが為さってくれる段取りがようやく付きました。春には、オレも晴れて組員になれます」

「えぇ!? 十六って、マジかよ? たしか、あいつも同じ歳のはずだが――同じ歳でも、お前はあいつと全然違うな。老け顔だって言われないか? 」

 そんな不本意なリアクションを取られたが、それよりも、碇は気になる事を耳にした。

「――――同じ歳って? 誰のことです? 」

 碇の問いに、一人が答えを返す。

「この屋敷に来ているハズなんだ。御堂聖って少年で、えらい別嬪べっぴんなんだが」

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