45 / 47
最終章
最終章-1
しおりを挟む上野の屋敷に到着したや否や、聖は、一ヵ月前まで自分に与えられていた四畳半の個室へ転がり込んだ。
そして、内側から鍵をかけ、そこに立てこもってしまう。
腕のケガも手当てしていないし、第一、東堂によって含まされたらしきクスリの影響もあるだろう。
出来るだけ早く、治療しなければならないのだが――。
「東堂の仕込んだクスリってのは、何だ? 」
「いえ、オレもよく分からねぇんです。救出したときは、あいつ気を失っていたし……」
顔や身体中に包帯を巻いた重傷の男は、だが、ケガの影響などまったく感じさせない様子で、正弘の隣に控えてそう言った。
「ふん……解毒方法が分からねぇんじゃ、手の打ちようがないな……」
舌打ちしながら言う正弘の耳には、室内にいる聖の、苦し気な嗚咽が聞こえる。
聞いているこっちが辛くなるような、そんな呻き声だ。
「ここを――力づくでぶち破るか……」
閉ざされた扉を前に、思わずそう呟くと、待ってましたとばかりに、包帯だらけの男は腕をまくった。
「任せてくだせぇ! 荒事なら、この近藤碇の専売特許だ」
だが、その気配に気づいたのか、室内からは悲痛な声が上がった。
「やめろ――! 誰も、来る、な……」
「小僧……」
「頼むから、誰も――――入って、くるな――」
だが、そういうワケにはいかない。
それこそ、命に係わるかもしれないのだから。
「……ここにいるのは、オレだけだ。おめぇが命を預けた、正弘の親分だ。おめぇは、それでも中に入れねぇってのかい? 」
「? お…や、ぶん? 」
「ああ、そうだ。オレ一人だ、入れてくんな」
すると、しばしの間の後、鍵を開ける音と共に、少しだけ扉は開いた。
「親分――? 」
「入るぜ」
「親分だけ、なら……」
その言葉を受け、正弘は背後に控えていた手下達に向き直り『てめぇらは、すぐに、向こうの騒ぎの方を先に対処しろ。行け! 』と、命令する。
散開し、人影が無くなったのを確認してから、正弘はスルリと、狭い室内へ入った。
四畳半の狭い部屋は、電灯が点っていない。
光源は、月明かりのみである。
「小僧――」
その姿を一目見て、正弘は声を失ってしまう。
明り取りの、小さな窓から入る月光に照らされた聖は、壮絶なほど淫らに美しかった。
そして、彼は、あきらかに発情していた。
纏っていた襦袢は、とうに脱ぎ捨てて全裸になっている。
月光に照らさる全身は、朱に染まったように緋色になり、薄紅の胸の突起は、痛々しいばかりに愛らしく震えている。
いつもは、刃物のようにキツかったあの眼差しはすっかり影を潜め、その瞳はうるうると潤んで真珠のような涙をこぼしている。
嫋やかな乙女のように儚げで、麗しい。
こんな姿を見るのは、初めてだ。
今まで、何度も一緒に風呂に入ったが、まるで全然違う生き物を見ているようだ。
「おめぇ……」
「――親分、苦しいよ」
己の手を分身に添えながら、聖は本当に、苦し気な声をもらす。
「熱くて、痛くて――腹の下が、燃えるような気分だ。自分でどうにかしようと、したけど……力、出なくて……」
ポロポロと涙をこぼし、聖は顔を歪ませる。
こんな姿など、誰にも見せたくなかった。
いつだって、意地と根性だけで生きて来た。
1
あなたにおすすめの小説
ハッピーライフのために地味で根暗な僕がチャラ男会計になるために
ミカン
BL
地味で根暗な北斗が上手く生きていくために王道学園でチャラ男会計になる話
※主人公へのいじめ描写ありのため苦手な方は閲覧ご注意下さい。
ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
発情期のタイムリミット
なの
BL
期末試験を目前に控えた高校2年のΩ・陸。
抑制剤の効きが弱い体質のせいで、発情期が試験と重なりそうになり大パニック!
「絶対に赤点は取れない!」
「発情期なんて気合で乗り越える!」
そう強がる陸を、幼なじみでクラスメイトのα・大輝が心配する。
だが、勉強に必死な陸の周りには、ほんのり漂う甘いフェロモン……。
「俺に頼れって言ってんのに」
「頼ったら……勉強どころじゃなくなるから!」
試験か、発情期か。
ギリギリのタイムリミットの中で、二人の関係は一気に動き出していく――!
ドタバタと胸きゅんが交錯する、青春オメガバース・ラブコメディ。
*一般的なオメガバースは、発情期中はアルファとオメガを隔離したり、抑制剤や隔離部屋が管理されていたりしていますが、この物語は、日常ラブコメにオメガバース要素を混ぜた世界観になってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる