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最終章
最終章-2
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こんな無様なザマを晒すくらいなら、死んだ方がマシだ――いつだって、そう思っていた。
「も、死に……てぇよ……」
身噛みする獣のように、聖は悲痛な声を上げる。
ああ、でも、どうすればいいのだ、この灼熱の情動は!?
身体は発火しそうな程に熱く、頭は霞が掛かったように意識が薄れていく。
もう何も考えられなくなり、聖はほとんど本能で自分の手を動かす。
耐え切れぬ波が、また来る!
「あぁ! 」
ガクッと身体が跳ねる。
だが、少量の熱はそれで放出できるものの、完全には至らない。
(――――苦しい、苦しいよっ! )
「あ、あ、あ……」
「聖っ! 」
言葉にならない声をあげ、のたうち回る聖をギュッと抱きしめる。
そして、正弘はすぐにソレへ心当たりを付けた。
(こいつはぁ――大陸産の催淫剤だな? 何度か噂は聞いたことがあったが――かなりの即効性と効き目があるが、常習性は薄いハズ……それなら、今さえ乗り越えればクスリの影響は残らない)
だが、このクスリによる発情は強力で、一人で耐え切るのはどんな猛者でも不可能だと聞いた。
場合によっては、発狂してしまうと。
「オレの大事な小僧に、こんなモン使うなんざぁ――あの外道、ぶっ殺しておけばよかったな」
物騒な声を漏らし、正弘は、聖をもう一度抱きしめた。
そして、その耳元で言う。
「おめぇは、極道になんのはヤメときな」
「え――? 」
「上野に来た時、おめぇの様子がおかしいのは直ぐに気付いた。オレはその後、おめぇを取り戻す算段に入ったが、幹部連中が渋って行動に移すのが遅れた。調べてみれば、相手は橋本会だ。オレの因縁はともかく、それは組にとっては悪い話じゃないときた」
ギュッと抱きしめながら、続ける。
「だが、昼過ぎに、ここへおめぇの危機を知らせに来た野郎がいた」
まごまごしてはいられないと、悟った。
「そっからオレは、代わりに青菱を引っ張る事で相殺したんだ。それで、ようやく組を動かすことができた。上野の天黄組組長天黄正弘――名前だけは立派だが、しょせんは昔気質の地回りだ。そうでもしないと、もう、己の思うままに兵隊も満足に動かせねぇ。情けない事だがな」
「親分……」
「今後は、天黄組は青菱会の傘下だ。とりあえずオレも幹部入りということで固めたが、実質、上が付いちまった。極道の世界ってのはな――完全な上下関係だ」
苦し気に、それを告げる。
「――おめぇは、この世界にいる限り、いずれは必ずヤツらに目を付けられるだろう。そんだけの別嬪だ。青菱の幹部連中に、おめぇを貸せと要求されたら――――オレは、もうおめぇを守れねぇんだよ」
ほぅっと息をつき、正弘は聖を見下ろした。
「天黄全組員の命を天秤にかけたら、おめぇは捨てなきゃなんねぇ。それが、極道ってもんだ」
いずれ、このままでは、聖に見切りを付けねばならない日は、遅かれ早かれ必ずや来るだろう。
正弘といえど、それは辛いのだ。
愛おし気に、絹糸のような髪を撫でながら、正弘は聖を諭す。
「いいな? カタギの仕事なら、いくらでもオレが口を利いてやる」
「……」
「いくら言い繕っても、極道なんざ、どいつもこいつもワルモノだ。おめぇは染まるな」
「い……や、だ――」
「クスリで今は辛いだろうが、それも今夜一晩だけ耐えれば影響も残らない。おめぇは、明日にはここを出て行くんだ」
「――嫌だ! 」
聖は、正弘の背中へ爪を立てる。
「小僧――」
「も、死に……てぇよ……」
身噛みする獣のように、聖は悲痛な声を上げる。
ああ、でも、どうすればいいのだ、この灼熱の情動は!?
身体は発火しそうな程に熱く、頭は霞が掛かったように意識が薄れていく。
もう何も考えられなくなり、聖はほとんど本能で自分の手を動かす。
耐え切れぬ波が、また来る!
「あぁ! 」
ガクッと身体が跳ねる。
だが、少量の熱はそれで放出できるものの、完全には至らない。
(――――苦しい、苦しいよっ! )
「あ、あ、あ……」
「聖っ! 」
言葉にならない声をあげ、のたうち回る聖をギュッと抱きしめる。
そして、正弘はすぐにソレへ心当たりを付けた。
(こいつはぁ――大陸産の催淫剤だな? 何度か噂は聞いたことがあったが――かなりの即効性と効き目があるが、常習性は薄いハズ……それなら、今さえ乗り越えればクスリの影響は残らない)
だが、このクスリによる発情は強力で、一人で耐え切るのはどんな猛者でも不可能だと聞いた。
場合によっては、発狂してしまうと。
「オレの大事な小僧に、こんなモン使うなんざぁ――あの外道、ぶっ殺しておけばよかったな」
物騒な声を漏らし、正弘は、聖をもう一度抱きしめた。
そして、その耳元で言う。
「おめぇは、極道になんのはヤメときな」
「え――? 」
「上野に来た時、おめぇの様子がおかしいのは直ぐに気付いた。オレはその後、おめぇを取り戻す算段に入ったが、幹部連中が渋って行動に移すのが遅れた。調べてみれば、相手は橋本会だ。オレの因縁はともかく、それは組にとっては悪い話じゃないときた」
ギュッと抱きしめながら、続ける。
「だが、昼過ぎに、ここへおめぇの危機を知らせに来た野郎がいた」
まごまごしてはいられないと、悟った。
「そっからオレは、代わりに青菱を引っ張る事で相殺したんだ。それで、ようやく組を動かすことができた。上野の天黄組組長天黄正弘――名前だけは立派だが、しょせんは昔気質の地回りだ。そうでもしないと、もう、己の思うままに兵隊も満足に動かせねぇ。情けない事だがな」
「親分……」
「今後は、天黄組は青菱会の傘下だ。とりあえずオレも幹部入りということで固めたが、実質、上が付いちまった。極道の世界ってのはな――完全な上下関係だ」
苦し気に、それを告げる。
「――おめぇは、この世界にいる限り、いずれは必ずヤツらに目を付けられるだろう。そんだけの別嬪だ。青菱の幹部連中に、おめぇを貸せと要求されたら――――オレは、もうおめぇを守れねぇんだよ」
ほぅっと息をつき、正弘は聖を見下ろした。
「天黄全組員の命を天秤にかけたら、おめぇは捨てなきゃなんねぇ。それが、極道ってもんだ」
いずれ、このままでは、聖に見切りを付けねばならない日は、遅かれ早かれ必ずや来るだろう。
正弘といえど、それは辛いのだ。
愛おし気に、絹糸のような髪を撫でながら、正弘は聖を諭す。
「いいな? カタギの仕事なら、いくらでもオレが口を利いてやる」
「……」
「いくら言い繕っても、極道なんざ、どいつもこいつもワルモノだ。おめぇは染まるな」
「い……や、だ――」
「クスリで今は辛いだろうが、それも今夜一晩だけ耐えれば影響も残らない。おめぇは、明日にはここを出て行くんだ」
「――嫌だ! 」
聖は、正弘の背中へ爪を立てる。
「小僧――」
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