精霊の愛の歌

黄金 

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1 大学入ったら恋人盗られた

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 トボトボと大学のゼミの新入生歓迎会後の人波に付いて行きながら、着いた先は近くの公園。
 競技場や遊具のある遊びの広場、ランニングコースなどもありかなり大きな公園だった。
 一次会を奮発したらお金が無くなったという幹事に連れられて、皆んなで公園で飲み直そうとか言い出した。
 カラオケは予約しようとしたらいっぱいだったから、一時間だけ我慢して~という女性幹事さん。
 仕方なく皆んなでコンビニ寄って好きな飲み物買って思い思いに騒ぎ出す。
 お酒の入った先輩達はとても楽しそうだ。
 そして………少し離れたところでも、楽しそうに話す男性二人。
 俺の幼馴染の山部蒼矢(やまべそうや)と同じ新入生の村崎翼(むらさきつばさ)だ。

 蒼矢は小学生の頃からの幼馴染だった。背が高くてカッコよくて、昔からモテるやつだった。黒髪の短髪が似合っていて爽やかで、なんで少し猫背の俺と友達なのか不思議なくらいだった。
 俺こと鈴屋弓弦(すずやゆずる)は自他共に認めるほど平凡な人間だった。癖毛の髪は寝癖がついたままで、洗いっぱなしの顔色悪い顔面にはそばかすが浮いている。背は中肉中背でひょろっとしていて自信なさげに前屈みになった身体は、集団に混ざれば見つかる事はない。
 そんな俺は高校の時、自滅覚悟で告白した。幼馴染の蒼矢に。
 可愛くもないのにゲイの友達。
 きっと気持ち悪がられて嫌われるだろう……、そんな思いで告白した。
 でも、告白は成功した!
 なんと蒼矢もゲイだったが、誰にも言えずに悩んでいたと言う。
 じゃあ付き合ってみよう、と言われて天にも昇る気持ちで付き合い出した。
 それが高三の春。
 それから大学受験に向けて頑張った。
 蒼矢は頭も良くて、かなり頑張らないと同じ大学を受験する事が出来なかったからだ。
 頑張って頑張って学部は違うけど、同じ大学に合格した。
 すごく嬉しかった!
 でも、そこでちゃんと振り返ってみれば良かったのだ。
 俺たちキスすらした事ないって。
 付き合って恋人同士のはずなのに、会ってもどっちかの部屋で手を繋いで抱き合うくらい。抱き合うって、そのままの意味で服着たまま大好きだよって引っ付くだけ。
 全く関係が進展していない事に気付けばよかったよ。
 受験あるし、勉強しなきゃだもんな。
 俺バカだし、頑張らなきゃって思ってた。
 
 そうだよな。
 高校生男児が俺ゲイなんだ~って言いにくいよな。
 目の前に同族いたらキープしたくなるよな。
 
 俺は見事にステップアップに使われた。
 大学に入って世間が広がって、俺より物凄く可愛い奴が寄ってきたら、そっち行くよな。

 村崎翼(むらさきつばさ)は女の子みたいに可愛い顔をしていた。背は170センチちょい無いくらい。きめ細やかそうな肌の健康的な身体。俺みたいにガリガリじゃなくて程よくちゃんと肉が付いている。目はパッチリ二重でぷっくりした唇はプルプルで、ちゃんとケアしてるって自慢された。
 俺の一重の細目を笑われた。
 
 スマホの課金ゲームの悪役令息にそっくりと言われた。
 なんかの資料集?的なの見せられたら、髪の毛は白髪の長髪だったけど、癖毛で細目でそばかすなのがそっくりだった。
 しかも主人公が自分に似て可愛いとか自慢された。
 どんなゲームかと思ったら中華風の世界観で精霊がいるとか言う世界だった。
 主人公は突然その世界に迷い込んで、攻略対象者を攻略して結婚して子供作るんだとか。
 ていうか、BL恋愛シュミレーションゲーム?
 大学でもゲイって堂々と言い放つし、俺の恋人奪うしBLゲームをこれまた堂々とやってるし、こいつの強心臓が羨ましい。

 ボンヤリ欄干に座って買ってきたホットミルクティーを飲んでいた。
 振り返れば満月。
 自分の影出来るくらいに鮮やかな満月だった。
 下を覗き込めば桜の花が植えられていた。花は落ちてしまいもう葉が沢山生い茂っている。石畳が見えるので、きっと公園の遊歩道があるんだろう。

「弓弦君、ちょっといいかなぁ?」

 せっかくセンチメンタルに月見してたのに、嫌な声聞いた。

「………いいけど。」

 件の翼だった。
 声も少し高めで可愛らしい。自分の鼻に掛かったような高めの声と違って、これまた羨ましい限り。

「蒼矢と弓弦君付き合ってたんでしょ?ごめんね?蒼矢から付き合ってって言われたけど、やっぱり謝っとかないと気持ち悪いからさ。」

 えー…これ、マウントかな?
 僕の方が好かれてるんだよ?的な?
 今日はゼミの新入生歓迎会。
 そう、入学して入ったばかり。まだ四週間経つか経たないか。
 俺はその短期間で翼に幼馴染を盗られました。シクシク

「…………あーうん、いいよ。もう…。」

 他に言いようがない。
 もういいから、早く蒼矢のとこ行けばいいのに……。と思ったが、蒼矢は先輩達に捕まっていた。
 翼と付き合った事によりゲイとバレてしまったが、相変わらず蒼矢はモテている。
 翼はなんでか俺の隣に座ってきた。
 態々肩を並べて近寄ってくる。
 俺から翼に近寄ったわけじゃないのに、蒼矢が慌ててこっちに来ようとしているのが見えた。

「1年?くらい付き合ってたんだよね?僕、心配なんだよ。蒼矢がやっぱり弓弦君がいいって言わないか。」

 そんなわけないだろう。
 近寄っただけで翼からはなんとも言えない、良い匂いがする。

「……言わないんじゃ?」

「そうかなぁ?………こうしてみたら分かるかな?どっち助けるかな…?」

 翼が耳に口を近付けてきて、コソッと呟いた。

 ーーーえ?

 クンッと後ろに服を引っ張られ、欄干からお尻がずれた。何も捕まるものが無い。
 なんでか翼の身体も傾いてた。

 俺の伸ばした手は誰も掴まない。

 身体一つ分落ちた所で翼を抱きしめる蒼矢が見えた。
 翼は俺の方を見て、少し笑っていた。
 
 そこまでする?

 下には桜の木がある。という事は、地面は土だろうから、死にはしない……はず?痛そうだなぁ~

 ここ最近の失恋で傷んだ心は、只々静かにそう思った。
 ひっくり返った俺の頭は、逆さまに満月を見上げていた。
 
 ーーーー月見しながら甘いものいっぱいやけ食いしたいーーーー


 なーんてバカな事考えながら、俺は落ちたのだった。













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