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26 青の泰子
しおりを挟むたった半年。されど半年。
銀玲は金玲の執念さを思い知らされた。
そろそろ休憩をと言っても辞めず、まだ起きたばかりですよと言っても辞めず。
そりゃ精霊力を卵達に与えるのは大事だけど、それは何もそんな行為をずっと続けるのとは違うんじゃ………モゴモゴモゴ。
何度説得を試みても、行き着く先は
一緒だった。
漸くヒビが入り出した銀と金の卵を見て、どれだけ安堵したことか!
まぁ見つけた時は背面から攻められていて、顎を持たれて顔を上げされられ、見てごらんと言われて見た時だけど…。
出てきた赤子はふくふくとした元気な赤ちゃんだった。
泰子は泰家と精霊王の繋がりのせいか、精霊王に似るらしく、どちらの赤子も綺麗な顔をしていた。
金の泰子は金の睫毛バシバシのハッキリとした目鼻立ち、銀の泰子はスッキリとした顔立ちの秀麗な美形だった。
銀の精霊王は未だに蛇型で顔が分からなかったが、人型になったらこんな顔なんだと眺めた。
金玲は卵が孵ったら昼間は仕事に追われるので、夜だけになるのが残念だと言っていたが、まさか毎夜やるつもりだろうかと震えた。
緑泰家と赤泰家も無事卵が孵り、お互いがお互いに祝福を送り合う中、青泰家だけが暗い沈黙に包まれた。
泰子達が産まれてから、金玲が何度も青泰家へ足を運んでいたが、ある日金玲がすまないが、と頼んできた。
「一緒に青泰家入って青の泰子に会ってみてくれないか?」
青の泰子は霊薬虹色の恋花も抜け、体調は戻ったが、精神が少しおかしくなってしまったらしい。
いちおう身の回りの自分の事はするし、仕事も言われた通りやるのだが、ボンヤリとして喋らない。表情も変わらない。
起きてはいるが何を考えているのか全く分からないそうだ。
以前の青の泰子は丁寧に喋るのに辛辣な事を言う麗人と言った雰囲気だった。
近寄ったらグサグサと棘を打ち込まれるので、あまり喋った事はない。
「はい、構いません。会ってどうしたらいいでしょう?」
「そうだな……、青の精霊王が黒髪に何か反応があるのではと以前から言っていたんだ。とりあえず会うだけ会ってみよう。」
黒髪という事は翼を思いだすという事では無いだろうか?
青の泰子に対する最後あたりの翼の扱いは酷かったとだけ聞いているが、黒髪をみて大丈夫なのかな?
「私が一緒に行くから大丈夫だ。」
金玲がついてるなら大丈夫だろう。
青の泰子もどうにかしてあげたいと思っていたので、何かやれる事があるなら頑張ろうと思った。
青泰家は割と現代風の日本家屋で驚いた。何となく中華風でも日本風でも古風な建物ばっかりだったから、壁が木では無いのに懐かしさを覚える。
廊下は外に張り出した縁側なのは変わらないが、ガラスを使った障子がはまっている。流石にアルミサッシ等は無いが、彩飾が施された窓枠は手が込んでて美しかった。
「天霊花綾の世界観が分からない。」
誰にともなく呟いたのだが、金玲が拾ってくれた。
「精霊王様達は招霊門を通って色んな世界に行かれるらしいからな。青の精霊王様の趣味なんだろう。」
この色んなもの混ぜました感は精霊王の所為なのか。
好きなものを持ち帰っては世界を作っているのだろう。
ここの住人は精霊王の導くまま暮らすので、こんな事になってるんだな。
なんか納得した。
長い縁側を抜け、かなり奥まった部屋まで通された。
案内してくれたのは現青泰家当主の青翔(せいしょう)さんだった。四十代くらいの青の泰子にそっくりな美しい女性で、伴侶は白の巫女で男性なのらしい。
つまり青の泰子のお母さんとお父さんって事だ。
この部屋は外から見えないようにか襖が付いていた。
「此処でございます。」
丁寧に膝を突き、スススと襖を開ける。
中には青の泰子がいた。
座椅子に腰掛け低いテーブルに幾つか本を置いて読んでいたようだ。
濃紺の髪に薄い水色の瞳、女性と間違われそうな程の綺麗な顔。
一時期痩せこけた顔もすっかり戻ったようだが、眼には正気が感じられない。
本を読んでると言う事は正常な判断力はあると言う事と思うが、問い掛けても一切反応が無いらしい。
部屋に入ると空間が歪み青の精霊王が降り立った。目配せをすると、お茶を持って参りますと言って青翔は出て行った。
広い部屋には青の精霊王と泰子、私と金玲の四人だけ。
陽が入るのを嫌うのか、部屋の向きは陽射しと逆向きの部屋でやや薄暗い。
テーブルの上には葉っぱが水に流れる様を描いた透かしガラスのランプが乗っており、灯をつけて本を読んでいたようだ。
青の精霊王が私に目配せをして来た。
隣にいた金玲を見上げると、仏頂面で私の手を引いて青の泰子の側に近付く。
「青の泰子、今日は私の伴侶、銀玲を連れて来た。」
金玲の声に反応して少しだけ顔を上げた。
そして私を見て驚いた顔をする。
顔、と言うか黒髪だろうか?
髪を見て、顔を見て、金玲を見て、下を向いてしまった。
何も話さず反応は薄いようだが、青の精霊王は喜んだ。
「ふむ、黒髪には何かしら思うところがあるようだ。」
「そのようですが、銀玲は私のものだ。どうしてもと言うから連れて来たが、黒髪が欲しいなら他所を当たってほしい。」
「勿論。名を分けた番を離す事は出来ん。そうだな………。」
青の精霊王は思案しだした。
黒髪と言っても天霊花綾に黒髪は存在しない。全ての精霊力を持つ存在と言われるが、精霊力を混ぜると灰色になってしまい、どうやっても黒髪にはならない。
一般の住人達がその良い例で、色合わせが混ざり合い、殆どが髪も眼も灰色だ。たまに色合わせで同色が続いて金、銀、緑、青、赤の色味が出た時、精霊力が強い子が産まれたと喜ばれる。
「銀玲の元いた世界は黒髪黒眼だな?」
徐に聞かれて頷く。
嫌な予感がする。
「よし、行って良さそうなのを見繕おう。」
簡単に言うが、いや、それ連れてこられた人、失踪者扱い!
「お待ち下さい!それは連れてこられた者は向こうの家族や友人、もしくは恋人等と離れ離れになる事です!」
私の言い分に青の精霊王はまた、ふむと考え出した。
ぴーんと閃いた顔をする。
「では、お主と同じように死者を連れて来よう!魂を持って来て器に入れれば良い!器は元の身体の一部を使用し、そっくりそのまま複製させれば黒髪黒眼!」
凄く閃いたー!みたいな顔してるが、それって倫理的に怖い発想。
いや、ジオーネルもそうやって作られたのか?でも白髪だったしな……。
止める間もなく青の精霊王は消えた。
そしてポイと置かれたのは何と山部蒼矢こと、幼馴染の元恋人、蒼矢だった。
「………うわ。」
嫌な声を出したのは許して欲しい。
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