貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

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第五章

毎日がスローライフ 完

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 翌日はカル島に出かけ、そこで海を堪能した。そして今日、中断されていた新しいものを見つける旅を再開させた。以前発見した光る草のような珍しい植物や、食べたことのない料理を見つけることが目的だ。

 ちなみに、光る草は庭に植えて少しずつ量を増やしている。二十四時間光るのであまり増やさない方がよく、しかもたまに動く。右に左に揺れるだけだが、インテリアとしていいかもしれない。

 この世界は元の世界と少しずつ違う。もしかしたら、人間だって違うかもしれない。例えば寿命が二百年あるとか。リルが知らないだけで。

 そう思うと、ただただ生きているだけでも沢山のことを見つけることができるし、毎日楽しく過ごすことができるだろう。

「百歳になっても、笑って過ごせていたらいいなぁ」

 右にはチョコ、左にはソラがいる。いつかはソラが親元に帰るだろうが、リルには魔法がある。魔法陣を描いておけばいつでも会いにいくことができる。空を飛べば世界中を回ることができる。リルの瞳が輝きを増した。

「なんかすごい楽しくなってきた」

 今は前回中途半端なところで終わってしまった北の街を散策中だ。ここは保存食の店が豊富で、知識の無いリルにとって参考になりそうな料理が多かった。

「これは魚ですか?」
「そうだよ。干した魚と野菜を細かくして練ったものだ」
「そうなんですね、三つください」
「ありがとう。またよろしくね」

 一通り回ると、一行は次の街へ移ることにした。手のひらサイズに変化してもらっていた二匹も元通りの大きさになり、飛行を楽しんでいる。

「ちょっと南に下るよ」

 ついでにドラゴン親子に遭遇した辺りを飛んでみる。親ドラゴンは現れなかったが、どこかの影からそっとソラを見守ってくれているかもしれない。

 次の街に着き、門をくぐろうとしたところでテレビ電話が鳴る。

「次の野菜についてかな」

 何気なく通話を始めるが、映ったルッツの顔色が少々悪いのが気になった。何か深刻な話題だろうか。

「どうしました」
『リル、つかぬことを尋ねたいのだが』
「はい」
『最近、ある人物から睨まれるようになって困っているのだ』

 それがどうしてリルに相談となったのだろう。リルと関係のないことであったら話をさっさと終わらせようと次を促す。

「どなたにですか?」
『カラット・ノーバーだ。以前、リルが名前を聞いてきただろう』
「ぶッッ」
『どうした?』
「い、いえ、何でも」

 まさかここで兄の名前が出されるとは想像せず、思わず吹き出してしまった。不思議そうに尋ねるルッツをどうにか咳払いをしてごまかす。

『リルの知り合いだったら、何故睨まれているのか聞いてほしいと思って。直接言うのは不躾だから』
「いやぁ、知り合いと言えば知り合いですけど、会うことはほぼないので。お役に立てずすみません」
『いや、私もいきなり失礼した。もしかしたら、単純に目が悪いからかもしれないし、ひとまず様子を見る』

 その後、世間話をして通話を終了させた。リルが汗を滲ませる。

「分かった……なんで兄様が王宮に私が行くことがあるのを知っていたのか」

 ルッツが睨まれていたのはおそらく気のせいではない。リルがカラットを見つけたように、カラットも見ていたのだ。ルッツといる男に変化したリルの姿を。そして、リルはあの日、カラットにその姿で最初に話しかけた。リルが魔法を使えることは知っていただろうから、ルッツといたのも変化魔法を使ったリルだと合点がいったのだ。

 しまった、こんなところでバレてしまうとは。もっと別の何かに変化して話しかければよかった。

「面倒だからって、同じ姿に何度も化けるのも考えものだな」

 バレてしまったなら仕方がない。いつか、カラットを通してルッツにリルの正体がバレてしまうかもしれない。その時はその時だ。彼ならきっと笑って許してくれる。

「なるしかない。気にしないでいこう」
「ギャオ」
「グゥ~」
「うんうん。おまたせ、さあ街の中に入ろうか」

 明日も明後日も、リルと二匹のスローライフは続いていく。


              了

 ひとまず完結となります。お付き合いいただきありがとうございました。
 番外編を数話上げる予定です。よろしくお願いいたします。
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