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救出編
あの子を逃がした日
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「どうしてですか姉様!」
「ごめん……ごめんね、ウィル」
普段あまり泣かないあの子が、目を真っ赤にして泣いているのが見えた。身勝手なのはわかっていた。でも、傷ついて欲しくなくて。
「僕だけ助かっても意味がないじゃないですか! 姉様……一人であんな奴らといるつもりですか?! 姉様も一緒に……」
でも、こうやってあの子が泣いてるのを見て、決意が揺らぎそうになる。だけど、仕方ない。女である私が外に出るわけにはいかない。あの子だけを外に出すのが、一番いい選択だと思ったから。
「ごめんなさい……」
絶対に守るって約束は、こうでもしなきゃ果たせないから。
「ウィル! 酷い怪我してるじゃない。またギルバート様にやられたの?」
私は屋敷の木にもたれかかっている大事な弟に駆け寄る。もう慣れたこととはいえ、顔を腫らして、身体中血とアザだらけな弟を見るのは胸が痛んだ。私の大好きなふわふわの金髪は泥で汚れてしまってるし、アクアマリンのような瞳も片方は重くなった瞼に隠され見えなくなっている。今日は特に酷い日らしい。
「姉様……。これは、その」
「またコケてとかいうつもり? 訓練着を着てその言い訳は通用しないわよ」
慣れた手つきで手当てをしながら、私は悔しくなる。ウィルは何も悪くないのに。なんでいつもこんなに痛い思いをしなくちゃならないんだろう。
「う……。でも、ソフィー姉様だって。あの人達に酷いこと言われても僕には教えてくれないでしょう?」
「それはその……。それに、私はウィルと違って殴られたりはしてないもの」
私とウィルは、ごく一部の人々からの扱いがとっても悪い。もう虫か悪魔か、極悪人かといったような扱いだ。
ウィルはいつも殴られたり蹴られたりしているし、私は怒鳴られたり責められたりしている。誰にって? 妹、メアリーのキシサマ方……要するに信奉者にだ。
信奉者曰く。
『お前達がメアリーを苛んでいるそうだな?!』
『血の繋がらない弟を愛そうとするメアリーになんて仕打ちを!』
『姉だからってメアリーの大切な宝石を勝手に奪うなんて、なんて悪女だ』
だ、そうである。
身に覚えが? あるはずがない。ちなみに、言ってなかったがウィルはお父様が色々あって引き取った子供で、私とメアリーとは血が繋がってない。もちろん、そんなことは気にしてないし、今では家族の中で私たちが気を許せるのはお互いのみとすら思っているけれど。
付け加えて言えば、義弟であるウィルを薄汚いと苛んだのはメアリーの方だし、私の宝石をメアリーが盗んだこともある。メアリーが私たちに嫌味を言ってきたことだってある。全てが反対なのである。
もちろん、そんなことはあの盲目キシサマ達やお父様、お母様には理解してもらえないわけだけど。
「いつかもっと強くなって、あいつらなんて倒したい」
痛みに耐えながら、そう呟くウィルも見つめて、胸がきゅっと痛くなる。私にはメアリーみたいにお父様達に好かれる愛嬌も、キシサマ方のような武力もない。この子を守る力がない。
最近、ウィルの傷はどんどん酷くなっている。一昨日だって六段とは言え、階段の中ほどから突き落とされたそうだし、その前は単純に集団に暴行を受けて、酷い熱が出た。それでも、誰も助けてくれない。見て見ぬふりをするか、こちらが悪いと一緒に責め立てるかだ。
このままだと、ウィルは本当に死んでしまうかも……。
だから、私はお父様に頭を下げた。いずれ後を継ぐ息子に留学という箔をつけてはどうかと。生意気だと叱られたが、おそらくお父様にとっても悪い選択ではない。そして、私にとっても——。
そうして、私はあの子を見送った。
「ごめん……ごめんね、ウィル」
普段あまり泣かないあの子が、目を真っ赤にして泣いているのが見えた。身勝手なのはわかっていた。でも、傷ついて欲しくなくて。
「僕だけ助かっても意味がないじゃないですか! 姉様……一人であんな奴らといるつもりですか?! 姉様も一緒に……」
でも、こうやってあの子が泣いてるのを見て、決意が揺らぎそうになる。だけど、仕方ない。女である私が外に出るわけにはいかない。あの子だけを外に出すのが、一番いい選択だと思ったから。
「ごめんなさい……」
絶対に守るって約束は、こうでもしなきゃ果たせないから。
「ウィル! 酷い怪我してるじゃない。またギルバート様にやられたの?」
私は屋敷の木にもたれかかっている大事な弟に駆け寄る。もう慣れたこととはいえ、顔を腫らして、身体中血とアザだらけな弟を見るのは胸が痛んだ。私の大好きなふわふわの金髪は泥で汚れてしまってるし、アクアマリンのような瞳も片方は重くなった瞼に隠され見えなくなっている。今日は特に酷い日らしい。
「姉様……。これは、その」
「またコケてとかいうつもり? 訓練着を着てその言い訳は通用しないわよ」
慣れた手つきで手当てをしながら、私は悔しくなる。ウィルは何も悪くないのに。なんでいつもこんなに痛い思いをしなくちゃならないんだろう。
「う……。でも、ソフィー姉様だって。あの人達に酷いこと言われても僕には教えてくれないでしょう?」
「それはその……。それに、私はウィルと違って殴られたりはしてないもの」
私とウィルは、ごく一部の人々からの扱いがとっても悪い。もう虫か悪魔か、極悪人かといったような扱いだ。
ウィルはいつも殴られたり蹴られたりしているし、私は怒鳴られたり責められたりしている。誰にって? 妹、メアリーのキシサマ方……要するに信奉者にだ。
信奉者曰く。
『お前達がメアリーを苛んでいるそうだな?!』
『血の繋がらない弟を愛そうとするメアリーになんて仕打ちを!』
『姉だからってメアリーの大切な宝石を勝手に奪うなんて、なんて悪女だ』
だ、そうである。
身に覚えが? あるはずがない。ちなみに、言ってなかったがウィルはお父様が色々あって引き取った子供で、私とメアリーとは血が繋がってない。もちろん、そんなことは気にしてないし、今では家族の中で私たちが気を許せるのはお互いのみとすら思っているけれど。
付け加えて言えば、義弟であるウィルを薄汚いと苛んだのはメアリーの方だし、私の宝石をメアリーが盗んだこともある。メアリーが私たちに嫌味を言ってきたことだってある。全てが反対なのである。
もちろん、そんなことはあの盲目キシサマ達やお父様、お母様には理解してもらえないわけだけど。
「いつかもっと強くなって、あいつらなんて倒したい」
痛みに耐えながら、そう呟くウィルも見つめて、胸がきゅっと痛くなる。私にはメアリーみたいにお父様達に好かれる愛嬌も、キシサマ方のような武力もない。この子を守る力がない。
最近、ウィルの傷はどんどん酷くなっている。一昨日だって六段とは言え、階段の中ほどから突き落とされたそうだし、その前は単純に集団に暴行を受けて、酷い熱が出た。それでも、誰も助けてくれない。見て見ぬふりをするか、こちらが悪いと一緒に責め立てるかだ。
このままだと、ウィルは本当に死んでしまうかも……。
だから、私はお父様に頭を下げた。いずれ後を継ぐ息子に留学という箔をつけてはどうかと。生意気だと叱られたが、おそらくお父様にとっても悪い選択ではない。そして、私にとっても——。
そうして、私はあの子を見送った。
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