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緩やかな変化①
しおりを挟むベッドの住民の二日間、私の不器用さに打ちのめされたミミさんに一日中縫い物強化練習をさせられましたよ。
背中の傷みは軽くなったのに、指先の傷は増える一方。でも血塗れの雑巾が血塗れのガタガタパッチワークに進化(?)したよ~!
頑張れ私!
来週末の誕生日までには、多少ガタガタかもしれないけど、血抜きしたファーストシューズを作るのだ!
シリウスくんは私にべったりで離れない。シリウスくんを投げ飛ばそうとした前科のあるお姉さんをシリウスくんと二人きりにはさせられないので、必然的に夜は旦那さまも私の部屋で一緒に寝るようなりましたよ。たとえ監視目的でも嬉しい。
旦那さまは相も変わらず、ベッドではなく一人離れてソファーですが。いつかシリウスくんを挟んでの川の字になれたら良いな~。まずはダブルベッドを用意しないと。
そんなこんなで、3日目の診察を無事に終えて晴れて、ベッドの住民から解放されました。
背中の痛くはほぼなく、打撲もアザがまだ残るものの小さくなっているので週末の閨の許可がおりました。やったーっ。ばんざーいっ!!
さっそく朝の『いってらっしゃいのちゅう』をしようとお見送りに玄関に向かった。久しぶりに階段を下りて、足が少し縺れてしまう。危ない後ろから付いてくるシリウスくんを巻き込むところだった。踏みたくないのでしっかり抱っこする。
階段下にはシャーリングさん、召使いさん、侍女さんたちが揃って見送りの準備をしていた。
私が近づくとみんなが笑顔で頭を下げて後ろに下がった。
あれ?前までみんな私に対して無表情だったのに。好意的とも取れる笑顔に戸惑うも素直に嬉しい。
「旦那さま~!おはようございます」
完璧に騎士服を着こなす旦那さま、今日もカッコいいです。後ろ姿の獣耳がピョコンと動いた。
「……おはようございます。
医師からすでに聞きましたが、本当に怪我は大丈夫なのですか?」
「はい!やっとベッドから解放されました~!今日のさっそくお昼前に騎士団にお邪魔しますね」
「……病み上がりで倒れられたら迷惑なのですが」
旦那さまは眉間の皺を深めた。
「絶対に倒れませんよ!久しぶりに料理もしたいので、私の手料理を旦那さまに食べてもらいたいですし~」
「………驚くほど縫い物が下手な貴女が料理ですか?毒でも盛られそうですね」
「料理は得意なんです。それに毒なんて盛りませんよ!愛情てんこ盛りです」
ニコニコと笑顔で告げる。
「……愛情ですか」
旦那さまは胡散臭げに私を見た後、肩を竦めた。
「……貴女のしたいようにして下さい。どうせ止めても作るのでしょう?」
「はーい!愛しい旦那さまのために頑張って作りますよ」
シリウスくんを片手に気合いのガッツポーズをして見せると、一瞬、旦那さまの口角が上がった……もしかして笑った?
ええええっ!激レアな微笑ですか~!?尊い!尊過ぎます。もっとみたいです。ワンモアプリーズっ!!
「まあ……ほどほどにして下さい。それより私は、遅刻するのでそろそろ出発します」
旦那さまは長い足で大股に歩き出した。
「ああ、お仕事前に足止めしてごめんなさい」
玄関先まで一緒に付いて外まで見送りますよ。
馬車の前まで来ると何故か立ち止まる旦那さま。振り返ると私をギリッと睨んだ。
あまりの眼孔の鋭さに抱っこされていたシリウスくんは全身の毛を逆立てて屋敷に逃げていく。
「あ、シリウスくん……」
追いかけようとする私の手首を旦那さまが掴む。
「奥様!私が追いますので大丈夫ですよ」
ミミさんが巨体を揺らしシリウスくんの後を追っていく。
「…………っ、自分から言い出したのにもう、お忘れですか?……しなくて………いいのですか?」
旦那さま、なんだか怒ってるよ。しなくて、いいって何が??
ああ、そうか!『いってらっしゃいのちゅう』でした。自分から言い出したのに!笑顔爆弾の威力で雑念が吹き飛んでたよ。
怒ったと言うことは、旦那さまも少しは期待してくれてたのかな?そうだったら嬉しいな~。
「よくないです!旦那さまと『ちゅう』したいです」
すがるように旦那さまの腕を掴むと、背伸びをして、旦那さまの頬に唇を押し当てた。ざわつく周りの気配を感じる。
ああ、旦那さまの頬っぺ柔らかくて冷たい。ニマニマしちゃう。本当は唇にしたいけど出勤前なので我慢。
「大好きですよ!いってらっしゃい旦那さま」
名残惜しくて頬をスルリと撫でた。
ああ、離れたがいなぁ。もっと一緒に居たいな。気持ちを込めて見つめると、旦那さまは益々顔をしかめるばかり。
はうう、伝わらない~。
「……本当に…貴女は……。
はあっ……何でもありません………行ってきます」
言い淀んだのに、結局何も言わずに目を伏せた。手を伸ばし私の頭をポンポンして馬車に乗り込んで行く。
はうう、頭ポンポンですか?
旦那さまから触れてくれるなんて、嬉しい!もう、一生頭の毛洗いませんから~。
シャーリングさんが「病み上がりですから奥さまもう、中にお入りください」と、諌めるまで、遠ざかる馬車が見えなくなっても立ち尽くした。
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