悪役令嬢の面の皮~目が覚めたらケモ耳旦那さまに股がっていた件

豆丸

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 あの後、護衛騎士を見捨てたミリヤ妃は正妃さまからこってりとお説教され、当面買い物禁止を言い渡された。未払いのドレス代は王妃が立て替えて、今後の王子夫婦の予算から差し引くことになったそうです。 

 治療を拒否しあまつさえ交渉の駒にしたと。その場に居合わせた貴族や平民から醜聞は王都全域に広がってー。 
 ただでさえ税金の無駄遣いと尊大な態度、度重なる慰問会のおさぼりに愛想を尽かされていたミリヤ妃の評判は落ちた。特に元平民の聖女さまが王子妃になり、自分たちに寄り添ってくれると期待していた平民の落胆は大きかったみたい。  
 王子と聖女の真実の愛を語った演劇は軒並み閑古鳥が飛んでいるそうな。 
 でも、ミリヤ妃が容姿を生かし積極的に媚を売っている一部の貴族たちからは援護の声が上がっている。可愛らしい容姿に加え、王子妃という地位。脆弱だけど国にただ一人の聖女。担ぎ上げる利益は十分にあるそうです。
 
 ミリヤ妃は今後、慰問会以外の外出禁止。アリアナさまと王妃さまの監視の下、聖徳を高める勉強や授業、慰問会に集中させるそうです。 脆弱な聖女さまからレベルアップ出来ると良いけど……言葉巧みに上手く逃げそうですね。唯一の外出、慰問会も厳しい正妃さま付きの護衛騎士に、王城から直接護送中の犯人のように連行され連れていかれることになりましたとさ。まあ、自業自得です。

 そしてーー私は今日から、王城でアリアナさまに魔法学のお勉強を教わることになりました。
 隣に座るミリヤ妃は、ぎりぎりと歯噛みしながら私を射殺す勢いで睨んでいます。うう、視線がちくちく痛い。アリアナさま、この人と仲良くは無理そうですよー。

「しっかり授業に集中して下さい」 
 耳元でイケボの旦那さまが囁きます。吐息が掛かってます。耳から孕むので低音ボイスは止めて下さい。 
 
「んっ、旦那さま近すぎですよ」
 もぞもぞ動くと、の太ももの形が良くわかります。背もたれにしている腹筋が呼吸に合わせて上下しているのも感じますよ。 
 ああ、筋肉万歳!素晴らしきかなっ!
 
 「貴女が心配なのです我慢して下さい」
 私のお腹に回された腕に力がこもり、頭の後ろに鼻先をつけらます。 
 
「私に触れられるのはお嫌ですか?」
「嫌じゃありません!嬉しいです」  
 答えるとすりりすりりと鼻先を擦りつけ、わざと私に甘える旦那さま。部屋の端からジャスティス王子が呪い殺す勢いで睨んでいますよー。

 旦那さまがアリアナさまに提示した条件の1つ目は、授業中私の一番近くに居ることでした。 
 心配してくれるのは嬉しいけどわざわざにならなくても良かったのでは?
 そう………勉強中、私は椅子に座る旦那さまに座っている体勢なのです。確かに一番近いと言うか座ってますからね! 

 旦那さま椅子で勉強なんて嬉しいですけど、ミリヤ妃とジャスティス王子に見られ睨まれ、恥ずかしいし、たいへん居心地が悪いです。 
  
 ーーそれなのに旦那さまはどこ吹く風。心なしか嬉しそうで。 
  
 お姉さんとの閨の後に散々笑い者にされた仕返しを兼ねているらしく、これ見よがしに私の腰にがっちり腕を回し、時折髪を撫でたり、頬に触れて。
 触れながら持ち込んだ書類に目を通し仕事までこなしています。
 急ぎの書類は控える燕獣人のイザークさんに騎士団砦で待つタスクさんへと配達を頼んでいるので、仕事に差し支えないようで良かったです。

 書類仕事をこなす旦那さまは、もちろん銀縁眼鏡。賢い雰囲気と凛々しい魅力が溢れすぎています。
 はうぅ、素敵!
 貴重な眼鏡のご尊顔を拝見したくて思わず後ろをチラ見して、あまりのかっこよさにぽーっと見惚れてしまう。授業に全然集中出来ません~。折角教えて頂いてるのに、アリアナさまごめんなさい。

「そんなに私の顔が好きですか?見られ過ぎて穴が開きそうです。ヴィー……私ではなく黒板を見て下さい」 

「あっ!ごめんなさい。旦那さまの眼鏡姿が眩しすぎて、ついつい見ちゃいました」
 顔を赤くして、謝る私をジャスティス王子が唖然として見上げ。悔しそうに歯軋りしながら旦那さまを睨んでいます。
  
 ジャスティス王子は魔法学の見学をしたいとアリアナさまに申し出て。思慮深いアリアナさまが了承し、王妃さま付きの強面の護衛騎士に両側を挟まれ監視されながら部屋の隅に鎮座しています。
 見学はただの名目で私を説得し公妾にしたいようだけど、授業中の発言は控えるよう正妃さまに釘を刺れている。
 何か言いたそうに何度も何度も私に目配せしますが、旦那さましか見えませんし、王子の思惑に答えませんよ~。
 
 本当に夫婦揃ってしつこい。私と旦那さまに構わないでほしいです。早く諦めて帰って下さい。
 
 こんな混沌とした状態なのにアリアナさまは、「ミリヤ妃が真面目に授業を聞いてくださるなんて奇跡ですわ」と、嬉々として黒板に魔法属性の説明を書いて熱心に教えてくれてます。
  
 旦那さまに座る私に動じず。睨むミリヤ妃もジャスティス王子も気にならないなんて、アリアナさまってメンタル強いですね?それともただマイペースな天然さんなのかな~? 

 初めて魔法について学び、知らないことが多く授業は楽しいですが、外野が気になって集中できませんでした。 
 
 やっと授業も終わり休憩時間。次はアリアナさまにお願いされた魔法の研究のお手伝いです。黒丸くんを観察し、時止めの魔法を解読したいとのことですが……。アリアナさまは研究の準備があるからと一足先に部屋に戻っています。 
 
 束の間の休憩時間、私と旦那さまはお茶を飲もうと王妃さまにお願いし、王宮の中庭の一画の精巧な細工の施されたガゼボをお借りした。
 持参した紅茶と朝、シリウスと料理したチョコレートやフルーツ、ナッツのスコーンを大理石のテーブルに並べた。侍女のスージーさんも茶器をガチャガチャ言わせたり、スコーンを落としたりと不器用なりに手伝ってくれています。  
  
 ジャスティス王子とミリヤ妃を警戒して私の護衛兼侍女のスージーさんも一緒にお城に同行していた。いくら旦那さまがべったり私にくっついていても男性が同伴できる場所には限界がある。トイレは女性しか付いてこれませんからね~。 

 身分を重んじる王宮ではマクガイヤ家のお茶会のように侍女で平民のスージーさんと同席は出来ない。 
 スージーさんもきちんと弁えているので、手伝いが終わるとテーブルから離れた。すっと後方に控える。他人行儀な態度、距離感が寂しい。庭園の賑やかなお茶会を思い出してしまう。屋敷のみんなが待つマクガイヤ家に早く帰りたいなぁ。

「大丈夫ですか……疲れましたか?」 
 押し黙った私を心配し、旦那さまが頬を優しく撫で顔を覗き込む。
  
「大丈夫ですよ!ただ、シリウスや屋敷のみんなに会いたくなっただけです」 
 
「屋敷を出てからまだ3刻も経過していませんが……本当に困りました。貴女は屋敷の皆が好きなようですね?」旦那さまに呆れたように問われて、大きく頷いた。
 
「はい!屋敷のみんなもシリウスも大好きですよ。あっ、旦那さまは男の人として大好きですからね!勘違いしないで下さいね」 
 
「勘違いはしません。知っていますから」 
 とても満足そうに旦那さまは紅茶を啜る。私も紅茶に口を付けた。美味しいです。スッキリした味わいでチョコスコーンの甘さを引き立ててます。 

 前回、王妃さまにご招待頂いた時の紅茶も芳醇なお味で美味しかったな~。 
 今回お茶とスコーンを持参したのは、ミリヤ妃やジャスティス王子に何かを盛られる危険性を危惧したから。ミリヤ妃に至ってはマタタビ媚薬を旦那さまに盛った前科があるので。 

 
 授業が終わると、あんなに睨んでいたのが嘘のようにミリヤ妃と王子からお茶に誘われて、旦那さまが瞬殺でお断りしてくれました。

「おい!王子の俺の命令が聞けないのか!」
「そうよ!私たちは第一王子夫婦なのよ!お茶会を断るなんて失礼よ」  
 当然のごとく顔を真っ赤にして、烈火のごとく憤る二人の目の前に旦那さまは書簡を突きつけた。

 それはーー旦那さまがアリアナさまに出した条件の二つ目。国王直筆の王命書だった。
 
 そこには達筆で、『獣人騎士団隊長シオン・マクガイヤ。その妻ヴィヴィアン・マクガイヤの両名は聖女アリアナの魔法研究に協力し、その期間中は第一王子夫婦の命令に従う義務はない。何人なりともこれを侵し強制することは出来ない』と、書かれていた。 



  
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