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番外編 ある騎士の後悔
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※一人の騎士の視点から見たアシェンの様子。
「なあ、アシェン。最近ルーナ嬢ちゃんを見かけないが、何かあったのか?」
ライナー副団長がアシェン団長に話しかけているのを見て、訓練をしていた俺たちは耳をそばだてた。
毎日毎日アシェン団長に告白していたルーナ嬢は、最近姿を見せていない。数日、数週間が経っても彼女が現れないことに、俺たちは徐々に不安を覚えるようになった。
彼女が姿を見せなくなってから、アシェン団長は以前よりも増して激務に没頭するようになった。いや、激務というよりも、何かに憑かれたように見えた。彼は氷のような冷たさを纏うようになり、口数もめっきりと減ったのだ。
ルーナ嬢がいなくなったことと関係しているのではないかと思っていた俺たちは、理由を知ることができるのではないかと、ライナー副団長の問いかけに耳を傾けたのである。
「…………」
団長はライナー副団長を一瞥だけして、特に何も答えることなく身をひるがえした。残された副団長は、団長の背中をじっと見ていた。
そして、数日後。ルーナ嬢が病にかかっていたという話が俺たちの耳にも入った。彼女は今眠りについており、アシェン団長が必死に彼女を救う手段を探している、と知る。
「そんな……」
誰かが、俺たちの心を代弁するように、絞り出すようにそう呟いた。
俺たちは、今まで、何をしていたのだろう。
毎日、アシェン団長に告白しているルーナ嬢のことを、ただの面白い余興だとしか思っていなかった。
(あの、元気いっぱいの笑顔の裏に、そんな苦しみがあったなんて……)
ルーナ嬢の笑顔を思い出すたびに、俺たちの胸には深い後悔の念が押し寄せる。彼女の告白を「おもしろい」と笑っていた自分たちが、ひどく愚かに思えた。
俺たちですらそうなのだから、アシェン団長の苦しみはどれほどなのだろう。彼は一人、絶望と戦い続けているのだ。
三年もの間、アシェン団長は、ただひたすらに何かを探し続けていた。ただ、団長の目に宿る光は、常に一点を凝視しているかのようだった。
それは、かつて俺たちが知っていた、冷徹で感情を見せないアシェン団長の目ではない。そこには、深い愛情と、絶望に抗う狂気じみた決意が宿っているように見えた。
団長は変わらず任務は完璧にこなし、俺たちへの指導も厳しさを増した。しかし、彼のどこか遠くを見つめるような視線、そして、時折ふと廊下の隅で立ち止まり、何かを待っているかのような仕草を見るたびに、俺たちの心まで痛みを感じるようだった。
そして、三年が過ぎたある日。
「私は、しばらく休みをとる。その間も訓練を怠るな」
そう言い残し、団長はしばらく訓練場を訪れなかった。その少し後、仲間から『命の灯火病』に抵抗するための治療薬が開発されたと話を聞く。開発のために団長が莫大な支援金を出して、ようやく完成したらしい。
ルーナ嬢が無事に目覚めたとライナー副団長から情報が渡ってきて、訓練場は歓喜に包まれた。俺たちは全員彼女の見舞いに行こうとしたが、戻ってきた団長に鋭く睨まれて断念した。
そして、ルーナ嬢が再びアシェン団長の前に姿を見せるようになった。彼らの距離は近く、団長は常に彼女を気にかけている。団長は以前にも増して穏やかな表情を見せるようになり、彼らの関係が変わったのだ、ということが伝わってきた。
「ルーナ嬢! 失礼な態度を何度もとってしまい、大変申し訳ございませんでした!」
彼女が訓練場を訪れた時、俺たちは一斉に頭を下げた。彼女は慌てたように手を振って、「お気になさらないでください」と言ってくれた。その時の、団長のルーナ嬢を見る目は、今までに見たことがないくらいに優しかった。
「その反省を胸に刻み、もっと訓練に打ち込め」
団長は、俺たちには冷たかった。
「なあ、アシェン。最近ルーナ嬢ちゃんを見かけないが、何かあったのか?」
ライナー副団長がアシェン団長に話しかけているのを見て、訓練をしていた俺たちは耳をそばだてた。
毎日毎日アシェン団長に告白していたルーナ嬢は、最近姿を見せていない。数日、数週間が経っても彼女が現れないことに、俺たちは徐々に不安を覚えるようになった。
彼女が姿を見せなくなってから、アシェン団長は以前よりも増して激務に没頭するようになった。いや、激務というよりも、何かに憑かれたように見えた。彼は氷のような冷たさを纏うようになり、口数もめっきりと減ったのだ。
ルーナ嬢がいなくなったことと関係しているのではないかと思っていた俺たちは、理由を知ることができるのではないかと、ライナー副団長の問いかけに耳を傾けたのである。
「…………」
団長はライナー副団長を一瞥だけして、特に何も答えることなく身をひるがえした。残された副団長は、団長の背中をじっと見ていた。
そして、数日後。ルーナ嬢が病にかかっていたという話が俺たちの耳にも入った。彼女は今眠りについており、アシェン団長が必死に彼女を救う手段を探している、と知る。
「そんな……」
誰かが、俺たちの心を代弁するように、絞り出すようにそう呟いた。
俺たちは、今まで、何をしていたのだろう。
毎日、アシェン団長に告白しているルーナ嬢のことを、ただの面白い余興だとしか思っていなかった。
(あの、元気いっぱいの笑顔の裏に、そんな苦しみがあったなんて……)
ルーナ嬢の笑顔を思い出すたびに、俺たちの胸には深い後悔の念が押し寄せる。彼女の告白を「おもしろい」と笑っていた自分たちが、ひどく愚かに思えた。
俺たちですらそうなのだから、アシェン団長の苦しみはどれほどなのだろう。彼は一人、絶望と戦い続けているのだ。
三年もの間、アシェン団長は、ただひたすらに何かを探し続けていた。ただ、団長の目に宿る光は、常に一点を凝視しているかのようだった。
それは、かつて俺たちが知っていた、冷徹で感情を見せないアシェン団長の目ではない。そこには、深い愛情と、絶望に抗う狂気じみた決意が宿っているように見えた。
団長は変わらず任務は完璧にこなし、俺たちへの指導も厳しさを増した。しかし、彼のどこか遠くを見つめるような視線、そして、時折ふと廊下の隅で立ち止まり、何かを待っているかのような仕草を見るたびに、俺たちの心まで痛みを感じるようだった。
そして、三年が過ぎたある日。
「私は、しばらく休みをとる。その間も訓練を怠るな」
そう言い残し、団長はしばらく訓練場を訪れなかった。その少し後、仲間から『命の灯火病』に抵抗するための治療薬が開発されたと話を聞く。開発のために団長が莫大な支援金を出して、ようやく完成したらしい。
ルーナ嬢が無事に目覚めたとライナー副団長から情報が渡ってきて、訓練場は歓喜に包まれた。俺たちは全員彼女の見舞いに行こうとしたが、戻ってきた団長に鋭く睨まれて断念した。
そして、ルーナ嬢が再びアシェン団長の前に姿を見せるようになった。彼らの距離は近く、団長は常に彼女を気にかけている。団長は以前にも増して穏やかな表情を見せるようになり、彼らの関係が変わったのだ、ということが伝わってきた。
「ルーナ嬢! 失礼な態度を何度もとってしまい、大変申し訳ございませんでした!」
彼女が訓練場を訪れた時、俺たちは一斉に頭を下げた。彼女は慌てたように手を振って、「お気になさらないでください」と言ってくれた。その時の、団長のルーナ嬢を見る目は、今までに見たことがないくらいに優しかった。
「その反省を胸に刻み、もっと訓練に打ち込め」
団長は、俺たちには冷たかった。
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