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第七話
しおりを挟むあれからどうやってエルンスト様の元から家に帰ったのかはよく覚えていません。彼の元に人が訪れて、特に話の進展はなく帰った気がします。あれは、本当にエルンスト様だったのでしょうか。偽物だったと言われても信じてしまいそうです。
いつも通り学園に行くために屋敷を出ると、見覚えのあるような、ないような馬車が止まっていました。
あの剣が特徴的な紋章は、ハイリヒ家を象徴する紋です。
「エレア! 迎えに来たよ。一緒に行こうか」
その馬車から笑みを浮かべたエルンスト様が下りてきて、わたくしの前に立ちました。このエルンスト様は、本物でしょうか。
「エルンスト様がどうしてこちらに?」
「エルだよ、エレア」
「……エル様が、どうしてこちらに?」
このエルンスト様は、確かに本物でした。彼の笑っていない目は、先日の彼と同じです。
「君を迎えに来たんだ。これからは、一緒に学園に通おうと思ってね。婚約者同士なら、当然のことだろう?」
彼の言葉に驚いて目を丸くしたわたくしを見て笑みを深めたエルンスト様は、わたくしの髪に視線を向けました。
「今日は、リボンを付けてくれていないのだね」
少し寂しそうなエルンスト様に絆されそうになりますが、あれは目立つので学園で付けるのは避けたいのです。彼はすぐいつもの笑みに戻って、流れるようにわたくしに手を差し伸べました。
「さあ、行こうか」
断る理由はありませんし、断ったらまた悪寒を感じそうなので、彼の手にわたくしの手を重ねました。彼の手に触れた時、指の先を握りしめられ、どきどきしてしまいました。
エルンスト様のわたくしを見る目がいつもよりも優しく思え、とても恥ずかしいです。
馬車に乗っている間、エルンスト様はぴったりとわたくしの隣に座っていました。わたくしの心臓はいつまで持つのでしょう。寿命が縮んでいる気がします。
学園に早く着くことを願っていましたが、着いてからも地獄でした。
まず、彼はわたくしをエスコートしながら校舎に入ってくのです。とにかく周りの生徒たちの視線がわたくしたちに向いていて、落ち着かなかったです。
わたくしとエルンスト様は学年が違うので、教室の階層が異なります。途中で彼と別れたら一安心、かと思いましたが、それは嘘でした。クラスメイトたちの質問攻めにあい、それの対応をしなくてはなりませんでした。特に、創作意欲に火がついたセルナの勢いが、恐ろしかったです。
「婚約破棄作戦がうまくいったの?」「うまくいったと言えば、そうかもしれません」
「エルンスト様と何か進展はあった?」「進展したと言えば、そうかもしれません」
「彼はどのタイプだった?」「理由型タイプでした」
「愛が重いヤンデレタイプだった? それともツンデレ?」「よくわかりません」
「口づけはした?」「し、してないです!」
沢山のことを聞かれたわたくしは、だいぶ答えを濁しながら、先生が教室に入ってくるのを待ち望んでいました。こういう時に限って、時が経つのが遅いのです。
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