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番外編
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【エレアとエルをくっつけ隊】
「第十五回、エレアノールとエルンスト様の現状報告会を始めます」
厳かな雰囲気の中、『エレアとエルをくっつけ隊』の会長はそう口を開いた。それを皮切りに、会員たちが各々意見を述べ始める。
「会長。婚約破棄作戦は成功したのですか? 今朝、エレアノール様とエルンスト様が共に歩いている姿を見ました。エルンスト様はとてもお幸せそうに微笑んでいらっしゃって、眩しさで目が潰れるかと思いましたよ」
「エレア様エル様マジ神。一生推す」
「婚約破棄ブームを流行らせたかいがありましたね。あとは、お二人がお互い想いを伝える環境を整えることができたら、次の段階に進めるのではないのでしょうか」
「エレア様俺と結婚し」
「こいつはあとで絞めておきます。今朝のお二人の姿は自分も目にしました。あれは完全に恋人。もっとお二人が触れ合う場面を見たいです」
会長は頷きながら話を聞き、かっと目を見開いた。
「婚約破棄作戦は大成功しました」
会員たちが湧く。それを当然のように受け止めた会長は、片手を上げて会員を鎮まらせる。
「皆が二人の次段階を見たいのはよく分かります。わたくしだって、真っ先に見たい。ですが今までのことから分かるように、二人はとても奥手です。なんなら、エレアノールは自分の恋心を自覚してすらいないのです。先ずやるべきこととしては、彼女に想いを自覚させること。つまり、嫉妬作戦が有効なのです!」
「おお! 流石会長!」
薄い赤色の髪を揺らしながらうむうむと鷹揚に頷いた会長は、隣で絶えずペンを動かしている者に声をかけた。
「絵の進行具合は?」
「只今筆が乗って、止まりません! わたくし、エレアとエルンスト様が最推しだから、この二人を書きたくて書きたくてたまらなかったですよ! この前エルンスト様とお会いした時、彼の目を間近で見ることに成功したのです。あの目は良い。エレアのことしか頭になくて、暗く陰っていました。ヤンデレは至高、ヤンデレは正義!」
ヤンデレ主義の桃色の髪の絵師はその後も愛を語り続け、みるみると絵が完成していく。二人が触れ合うその絵を見た会員たちは、我こそがその絵を手に入れると意気込んでいる。
「わたくしの新作小説も筆が止まらない状態だわ。もう少しで、皆に読んでもらえると思います」
今までになく会員たちが盛り上がる。彼らが近くの会員たちと意見を交流させていると、会長はおもむろに立ち上がった。
「エレアの様子を見てきますわ。嫉妬作戦がどういう感じで進んでいるか、気になりますもの」
「我ら一同、結果を楽しみに待っております!」
それから約三十分後。この部屋は、歓喜に包まれることになる。
数日後には、世間で新作の恋愛小説が広まることとなる。主人公は鈍感な少女、ヒーローはヤンデレで愛が重い青年であるらしい。その小説には挿絵があり、ヤンデレさが際立っているそのイラストは、高値で取引されている。
【甘すぎるわたくしの婚約者】
「可愛い。このまま食べてしまいたい」
最近流行だという食べさせあいっこを試していたわたくしは、エルンスト様に真っ赤なイチゴを差し出すと、指ごとパクリと食べられてしまい心臓が飛び出るかと思いました。
彼が言った、食べてしまいたいという言葉は、物理的に叶えられてしまうという危険性を考えておいたほうがいいかもしれません。
「今度、『婚約破棄』という演劇を観に行きましょう」
わたくしの指を食べた犯人は、悪気がなさそうににこにこと笑みを浮かべたまま話を逸らします。『婚約破棄』というのは、巷で有名な『婚約破棄すると言ったら、婚約者がヤンデレでした』というタイトルの恋愛小説の略語です。
作者は未明ですが、確実にセルナでしょう。だって、一度この小説をちらりと呼んだことがありますが、見覚え聞き覚え身に覚えがありすぎて、羞恥心から最後まで読むことができませんでした。
それが演劇化されたものを観に行くなんて、わたくしは恥ずかしすぎて死んでしまうかもしれません。
「絶対に、嫌です!」
「エレアは僕と演劇を観に行くのは嫌かい?」
しゅん、と落ち込んだ様子を見せるエルンスト様を見ると、すぐに言ったことを訂正したくなります。が、これは罠です。彼はいつもわたくしを騙すのです。
「エル様と演劇を観るのが嫌なわけではありません。『婚約破棄』を観るのが嫌なのです」
「そうなのか……。あれは僕とエレアがモチーフになっているらしいから、興味があったんだよね」
エルンスト様は、案外すんなりと引いてくださいました。というか、わたくしたちをモチーフにするのなら、ちゃんと許可は得てほしいです。いや、よくよく思い出すと、わたくしは自分が小説のモチーフになることを彼女に許可を出したことがあるかもしれません。何をしているのですか過去の自分。
わたくしたちはいくつか勘違いをしていたので、あれからは誤解を生まないよう丁寧な説明を心がけています。お互い早とちりしやすい性格らしく、勝手に勘違いして勝手に傷つくことが多いのです。
「流行も悪いものじゃないよね」
「……? どういうことですか?」
「エレアは可愛いってことだよ」
エルンスト様の言葉の意味を知りたかったのに、返ってきたのはいつもの殺し文句。
くすくすと耳元で笑われ、恥ずかしさとからかわれることへの悔しさでいっぱいになります。
「次は何をしてもらおうかな……」
髪に編み込まれた赤いリボンに触れながら、エルンスト様は何やら呟きました。
わたくしはどちらかというと、流行に踊らされているというよりかは、エルンスト様に踊らされているのでしょう。
……悔しいですが、彼が嬉しそうなら、わたくしは彼の手のひらで踊ることにしましょう。
「第十五回、エレアノールとエルンスト様の現状報告会を始めます」
厳かな雰囲気の中、『エレアとエルをくっつけ隊』の会長はそう口を開いた。それを皮切りに、会員たちが各々意見を述べ始める。
「会長。婚約破棄作戦は成功したのですか? 今朝、エレアノール様とエルンスト様が共に歩いている姿を見ました。エルンスト様はとてもお幸せそうに微笑んでいらっしゃって、眩しさで目が潰れるかと思いましたよ」
「エレア様エル様マジ神。一生推す」
「婚約破棄ブームを流行らせたかいがありましたね。あとは、お二人がお互い想いを伝える環境を整えることができたら、次の段階に進めるのではないのでしょうか」
「エレア様俺と結婚し」
「こいつはあとで絞めておきます。今朝のお二人の姿は自分も目にしました。あれは完全に恋人。もっとお二人が触れ合う場面を見たいです」
会長は頷きながら話を聞き、かっと目を見開いた。
「婚約破棄作戦は大成功しました」
会員たちが湧く。それを当然のように受け止めた会長は、片手を上げて会員を鎮まらせる。
「皆が二人の次段階を見たいのはよく分かります。わたくしだって、真っ先に見たい。ですが今までのことから分かるように、二人はとても奥手です。なんなら、エレアノールは自分の恋心を自覚してすらいないのです。先ずやるべきこととしては、彼女に想いを自覚させること。つまり、嫉妬作戦が有効なのです!」
「おお! 流石会長!」
薄い赤色の髪を揺らしながらうむうむと鷹揚に頷いた会長は、隣で絶えずペンを動かしている者に声をかけた。
「絵の進行具合は?」
「只今筆が乗って、止まりません! わたくし、エレアとエルンスト様が最推しだから、この二人を書きたくて書きたくてたまらなかったですよ! この前エルンスト様とお会いした時、彼の目を間近で見ることに成功したのです。あの目は良い。エレアのことしか頭になくて、暗く陰っていました。ヤンデレは至高、ヤンデレは正義!」
ヤンデレ主義の桃色の髪の絵師はその後も愛を語り続け、みるみると絵が完成していく。二人が触れ合うその絵を見た会員たちは、我こそがその絵を手に入れると意気込んでいる。
「わたくしの新作小説も筆が止まらない状態だわ。もう少しで、皆に読んでもらえると思います」
今までになく会員たちが盛り上がる。彼らが近くの会員たちと意見を交流させていると、会長はおもむろに立ち上がった。
「エレアの様子を見てきますわ。嫉妬作戦がどういう感じで進んでいるか、気になりますもの」
「我ら一同、結果を楽しみに待っております!」
それから約三十分後。この部屋は、歓喜に包まれることになる。
数日後には、世間で新作の恋愛小説が広まることとなる。主人公は鈍感な少女、ヒーローはヤンデレで愛が重い青年であるらしい。その小説には挿絵があり、ヤンデレさが際立っているそのイラストは、高値で取引されている。
【甘すぎるわたくしの婚約者】
「可愛い。このまま食べてしまいたい」
最近流行だという食べさせあいっこを試していたわたくしは、エルンスト様に真っ赤なイチゴを差し出すと、指ごとパクリと食べられてしまい心臓が飛び出るかと思いました。
彼が言った、食べてしまいたいという言葉は、物理的に叶えられてしまうという危険性を考えておいたほうがいいかもしれません。
「今度、『婚約破棄』という演劇を観に行きましょう」
わたくしの指を食べた犯人は、悪気がなさそうににこにこと笑みを浮かべたまま話を逸らします。『婚約破棄』というのは、巷で有名な『婚約破棄すると言ったら、婚約者がヤンデレでした』というタイトルの恋愛小説の略語です。
作者は未明ですが、確実にセルナでしょう。だって、一度この小説をちらりと呼んだことがありますが、見覚え聞き覚え身に覚えがありすぎて、羞恥心から最後まで読むことができませんでした。
それが演劇化されたものを観に行くなんて、わたくしは恥ずかしすぎて死んでしまうかもしれません。
「絶対に、嫌です!」
「エレアは僕と演劇を観に行くのは嫌かい?」
しゅん、と落ち込んだ様子を見せるエルンスト様を見ると、すぐに言ったことを訂正したくなります。が、これは罠です。彼はいつもわたくしを騙すのです。
「エル様と演劇を観るのが嫌なわけではありません。『婚約破棄』を観るのが嫌なのです」
「そうなのか……。あれは僕とエレアがモチーフになっているらしいから、興味があったんだよね」
エルンスト様は、案外すんなりと引いてくださいました。というか、わたくしたちをモチーフにするのなら、ちゃんと許可は得てほしいです。いや、よくよく思い出すと、わたくしは自分が小説のモチーフになることを彼女に許可を出したことがあるかもしれません。何をしているのですか過去の自分。
わたくしたちはいくつか勘違いをしていたので、あれからは誤解を生まないよう丁寧な説明を心がけています。お互い早とちりしやすい性格らしく、勝手に勘違いして勝手に傷つくことが多いのです。
「流行も悪いものじゃないよね」
「……? どういうことですか?」
「エレアは可愛いってことだよ」
エルンスト様の言葉の意味を知りたかったのに、返ってきたのはいつもの殺し文句。
くすくすと耳元で笑われ、恥ずかしさとからかわれることへの悔しさでいっぱいになります。
「次は何をしてもらおうかな……」
髪に編み込まれた赤いリボンに触れながら、エルンスト様は何やら呟きました。
わたくしはどちらかというと、流行に踊らされているというよりかは、エルンスト様に踊らされているのでしょう。
……悔しいですが、彼が嬉しそうなら、わたくしは彼の手のひらで踊ることにしましょう。
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