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歴代の伴侶
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リサはベッドに寝そべったまま、寝る準備をしているご主人様
を無意識に目で追っていた。
どうして私は好きだと気づいたんだろう。思い返しても異性として
ご主人様にアプローチした事は無い。
(それとも猫の求愛行動を気付かぬうちにしていたんだろうか?)
でも、猫の求愛行動ってオスがするものじゃないの?
パジャマに着替えたご主人様が私の隣に横になると目を閉じた。
何も特別なことはしてこないし、何も聞いてこない。
(………)
ご主人様の胸に自分の顎を乗せた。この家に来てからずっとこうして一緒に眠って来た。
人間になってもこうして寝てくれるかな……。
ハッとして目を覚ますと体を見る。良かった猫だった。あれは夢だったんだ。ホッとして 布団に頭を乗せる。人間の姿は可愛くないと背を向けて行ってしまうご主人様を追い駆けようとしたのに、追いつけなかった。 人間の自分に自信がないから、こんな夢を見たのかも。
静かな寝息に 横を見るとご主人様がすやすや寝ている。人に爆弾を投げつけておいて 本人は気楽なものだ。
その顔をジッと見つめる。
(………)
私はこの男が好きだ。それは間違いない。顔も、体も、声も、その温かい目も好きだ。マーカスに見せる優しさも、そして何より、私を常に傍に置いて撫でてくれる。
ご主人様が仕事をしている間、机の上に乗ったり、膝の上で寝たり、客用の椅子に座ったり、何処に居ても怒らない。何処へ行くにも私を抱っこしてくれる。そう言うスキンシップが嬉しかった。
人間になれると分かった途端、悩んでいるのは人間になることに尻込みしているんだ。
勝手気ままな猫として生けるか? 人間になって家族の一員として生きるか?
その二つで揺れている。
家出するほど苦しんだのに……。解決すると分かったのに……。
(情けない……)
自分がこんなに優柔不断な人間だとは思わなかった。
人間になったからと言って別に何かを求められる訳じゃない。
そう考えるのは、自分で自分に枷を付けているようなものだ。
でも、そう思うのは私のこの家での立ち位置がハッキリしないからだ。でも決めなくちゃ……。人間になるか? ならないか?
その前にご主人様が何を秘密にしているのか聞き出さないと。
早まって後で後悔するのは嫌だ。
***
リチャードはマーカスの部屋に来ていた。おもちゃの一つも無い。
本が友達。そんな生活を強いてきた事に親としては 罪の意識を感じざるおえない。
勉強しているのかと近づくと、いつもの本を読んでいた。
毎日読んでいる。
(よく飽きないもんだ)
「マーカス」
「父上、どうしたんですか?」
本を読むのを止めたマーカスの頭を撫でる。私の可愛い息子。この子が、悲しむことは絶対したくない。
リサを人間の姿にすると決めたけど、 マーカスが そのことをどう思うか考えていなかった。リサを大人になってしまったと悲しむかもしれない。
マーカスにとって リサは特別な存在だ。友達 一号と言ってもいい。
その友達を奪いたくはない。
「マーカスは、リサが人間に変身
出来るとしたら嬉しいかい?」
「………」
何気なさを装っても心臓は バクバク いっている。無言のマーカスに、あまりにも飛躍した話だったかと 心配になる。ここで ノーと言われたら終わりだ。
マーカスがパッと 私を見上げる。その瞳は好奇心でキラキラしている。
「もしかして ザブマギウムは 人間になれるんですか?」
「ああ そうだ」
その方法と理由は言えないが、その通りだ。
「やったー!」
マーカスが部屋の中を 拳を突き上げて飛び回る。その姿に安堵した。マーカスもリサが人間に なったら良いのにと思っていたんだ。
「いつです。いつ 人間のリサに会えるんですか?」
「今は練習だ。もう少し待っててくれ」
「はい。待ちます」
嬉しそうに何度も頷く。
良かった。猫の姿の方が好きだと言われたらどうしようかと思っていた。これで安心してリサを口説ける。
「何して遊ぼうかな」
***
リサはベッドの上で尻尾を追いかけるようにクルクル回りながら、リチャードが来るのを今や遅しと待っていた。
話したい事も、聞きたい事も、いっぱいあるのに、あれきり何の進展も無い。猫と人間のまま。それが、こんなにもどかしいとは……。
私としては少しでも早く話がしたいのに、不満を口にすることさえて出来ない。
絶対人間の姿になってやる。そして 私をほったらかしにした事を怒るんだから。
そう思っていたのに……。
今夜も何も出来ずにご主人様が眠ってしまった。
(………)
駄目だ。
猫のままでは何も解決しない。
進展もない。人間になるために自分から動こう。どうやって人間になったっけ?
今まで人間になった時のことを思い出してみた。
……そうだ!
ご主人様がしたみたいに服をドンドン脱いでいけばいいんだ。
つまり誘惑!
それを私もすれば人間になれる。
とは言え、どうしたらいいんだろう? 猫なんだから服を脱ぐことは出来ない。
猫の体でできること……。
う~ん。
(キスしてみる?)
それで誘惑できる?
とりあえずやってみよう。
トットットとご主人様の胸の上でエジプト座りをして深呼吸する。
いざチュッと唇に唇を押し付けるとご主人様と まともに目が合う。
「んっ……リサ?」
誘惑出来た? 出来なかった? 伝わった? 伝わらなかった?
リチャードの表情を探る。
嫌そうな顔はしていない。
だけど……。
ご主人様の反応がイマイチだ。
偶然 ぶつかっただけだと思っているかも。ご主人様の唇は湿っていて温かくて柔らかい。そして、歯磨き粉の味がした。今の二人の姿が頭に浮かぶと 熱も冷める。
全然ロマンチックじゃない。
でも、猫のキスってこれからどうするの? 舐める? 擦る? 突く?
「………」
「………」
それ以上進むこともなく 唇を押し付けあったまま、互いに見つめ合っている。失敗だ。他の方法を考えよう そう思った時、口の中に
ご主人様の舌がぬるりと入って来た!!!
これが、ベロチュウ。全身に波のようにゾワリとしたものが流れて行く。舌を絡ませあっても物足りない。もっと欲しいとリチャードの頭に手を回して引き寄せる。胸、腹、足と二人の体が重なる。
しかし、1ヶ所だけそれを阻むモノが。退かそうと手を差し入れて掴むと、それは 太く、熱く、硬い。そして、リチャードの腹にへばりついている。
退かそうとしても退かない。
「リサ……急かさないで……」
(?)
苦しそうなリチャードの声に我に返る。火傷でもしたように 慌てて手を引っ込めると、リチャードから距離をとる。
「なっ、なっ、なっ」
何してるのよ……。手にまだ感触が残ってる。
「リサ!?」
リチャードが起き上がった。 嫌でもそこに目が行く。そそり起っている。見るのは初めてじゃないけど、もはや別物だ。
(もう やだー!)
シーツを頭から被って現実逃避した。自分から触りに行くなんて。
「リサ」
ツンツンとリチャードが肩をつつく。知らないと首を振るとリチャードがため息をついた。
(だって、だってー!)
「何か聞きたい事があったから、人間になりたかったんだろう」
「………」
見抜かれていたか。
ご主人様と膝を突き合わせるみたいにベッドで向かい合うと、気になっていた事を切り出した。
「では遠慮なく。その……好きな人と同じ種族に変身すると言う事ですが、それって……こっ、恋しているって意味ですか?」
普通に考えれば人間になるのは相手が好きだから話がしたいとか、デートしたいとか、両想いになるためのアプローチをしたいからだ。しかし、ご主人様が顎に手をあてて考え込んだ。
返事に困る事?
何か別の理由があるんだろうか?
「大体はそうだと思う」
「大体?」
それ以外の理由なんてある?
まさか……淫乱。否、恋多き動物なの?
「正しく言うなら、その相手との間に子供が欲しいと思った時に変身する」
「へっ?」
(こっ、子供!?)
余りにも衝撃的な内容に、言っている事は耳から入るのに脳へ届かない。確かに 番になりたいからと言っていたけど、目的は子供なの?
話終わったリチャードに、合っているかどうか自分の言葉で言ってみる。
「ええと……つまり……リチャードと……子作りしたいから……その……人間になると……」
「そう言う事になるね」
(嘘でしょー!)
心の中で絶叫して頭を抱えた。
単に好き嫌いじゃ無くて、リチャードと間の子供が産みたいって、言ってるって事でしょ。
それじゃあまるで、発情しているみたいじゃない。
を無意識に目で追っていた。
どうして私は好きだと気づいたんだろう。思い返しても異性として
ご主人様にアプローチした事は無い。
(それとも猫の求愛行動を気付かぬうちにしていたんだろうか?)
でも、猫の求愛行動ってオスがするものじゃないの?
パジャマに着替えたご主人様が私の隣に横になると目を閉じた。
何も特別なことはしてこないし、何も聞いてこない。
(………)
ご主人様の胸に自分の顎を乗せた。この家に来てからずっとこうして一緒に眠って来た。
人間になってもこうして寝てくれるかな……。
ハッとして目を覚ますと体を見る。良かった猫だった。あれは夢だったんだ。ホッとして 布団に頭を乗せる。人間の姿は可愛くないと背を向けて行ってしまうご主人様を追い駆けようとしたのに、追いつけなかった。 人間の自分に自信がないから、こんな夢を見たのかも。
静かな寝息に 横を見るとご主人様がすやすや寝ている。人に爆弾を投げつけておいて 本人は気楽なものだ。
その顔をジッと見つめる。
(………)
私はこの男が好きだ。それは間違いない。顔も、体も、声も、その温かい目も好きだ。マーカスに見せる優しさも、そして何より、私を常に傍に置いて撫でてくれる。
ご主人様が仕事をしている間、机の上に乗ったり、膝の上で寝たり、客用の椅子に座ったり、何処に居ても怒らない。何処へ行くにも私を抱っこしてくれる。そう言うスキンシップが嬉しかった。
人間になれると分かった途端、悩んでいるのは人間になることに尻込みしているんだ。
勝手気ままな猫として生けるか? 人間になって家族の一員として生きるか?
その二つで揺れている。
家出するほど苦しんだのに……。解決すると分かったのに……。
(情けない……)
自分がこんなに優柔不断な人間だとは思わなかった。
人間になったからと言って別に何かを求められる訳じゃない。
そう考えるのは、自分で自分に枷を付けているようなものだ。
でも、そう思うのは私のこの家での立ち位置がハッキリしないからだ。でも決めなくちゃ……。人間になるか? ならないか?
その前にご主人様が何を秘密にしているのか聞き出さないと。
早まって後で後悔するのは嫌だ。
***
リチャードはマーカスの部屋に来ていた。おもちゃの一つも無い。
本が友達。そんな生活を強いてきた事に親としては 罪の意識を感じざるおえない。
勉強しているのかと近づくと、いつもの本を読んでいた。
毎日読んでいる。
(よく飽きないもんだ)
「マーカス」
「父上、どうしたんですか?」
本を読むのを止めたマーカスの頭を撫でる。私の可愛い息子。この子が、悲しむことは絶対したくない。
リサを人間の姿にすると決めたけど、 マーカスが そのことをどう思うか考えていなかった。リサを大人になってしまったと悲しむかもしれない。
マーカスにとって リサは特別な存在だ。友達 一号と言ってもいい。
その友達を奪いたくはない。
「マーカスは、リサが人間に変身
出来るとしたら嬉しいかい?」
「………」
何気なさを装っても心臓は バクバク いっている。無言のマーカスに、あまりにも飛躍した話だったかと 心配になる。ここで ノーと言われたら終わりだ。
マーカスがパッと 私を見上げる。その瞳は好奇心でキラキラしている。
「もしかして ザブマギウムは 人間になれるんですか?」
「ああ そうだ」
その方法と理由は言えないが、その通りだ。
「やったー!」
マーカスが部屋の中を 拳を突き上げて飛び回る。その姿に安堵した。マーカスもリサが人間に なったら良いのにと思っていたんだ。
「いつです。いつ 人間のリサに会えるんですか?」
「今は練習だ。もう少し待っててくれ」
「はい。待ちます」
嬉しそうに何度も頷く。
良かった。猫の姿の方が好きだと言われたらどうしようかと思っていた。これで安心してリサを口説ける。
「何して遊ぼうかな」
***
リサはベッドの上で尻尾を追いかけるようにクルクル回りながら、リチャードが来るのを今や遅しと待っていた。
話したい事も、聞きたい事も、いっぱいあるのに、あれきり何の進展も無い。猫と人間のまま。それが、こんなにもどかしいとは……。
私としては少しでも早く話がしたいのに、不満を口にすることさえて出来ない。
絶対人間の姿になってやる。そして 私をほったらかしにした事を怒るんだから。
そう思っていたのに……。
今夜も何も出来ずにご主人様が眠ってしまった。
(………)
駄目だ。
猫のままでは何も解決しない。
進展もない。人間になるために自分から動こう。どうやって人間になったっけ?
今まで人間になった時のことを思い出してみた。
……そうだ!
ご主人様がしたみたいに服をドンドン脱いでいけばいいんだ。
つまり誘惑!
それを私もすれば人間になれる。
とは言え、どうしたらいいんだろう? 猫なんだから服を脱ぐことは出来ない。
猫の体でできること……。
う~ん。
(キスしてみる?)
それで誘惑できる?
とりあえずやってみよう。
トットットとご主人様の胸の上でエジプト座りをして深呼吸する。
いざチュッと唇に唇を押し付けるとご主人様と まともに目が合う。
「んっ……リサ?」
誘惑出来た? 出来なかった? 伝わった? 伝わらなかった?
リチャードの表情を探る。
嫌そうな顔はしていない。
だけど……。
ご主人様の反応がイマイチだ。
偶然 ぶつかっただけだと思っているかも。ご主人様の唇は湿っていて温かくて柔らかい。そして、歯磨き粉の味がした。今の二人の姿が頭に浮かぶと 熱も冷める。
全然ロマンチックじゃない。
でも、猫のキスってこれからどうするの? 舐める? 擦る? 突く?
「………」
「………」
それ以上進むこともなく 唇を押し付けあったまま、互いに見つめ合っている。失敗だ。他の方法を考えよう そう思った時、口の中に
ご主人様の舌がぬるりと入って来た!!!
これが、ベロチュウ。全身に波のようにゾワリとしたものが流れて行く。舌を絡ませあっても物足りない。もっと欲しいとリチャードの頭に手を回して引き寄せる。胸、腹、足と二人の体が重なる。
しかし、1ヶ所だけそれを阻むモノが。退かそうと手を差し入れて掴むと、それは 太く、熱く、硬い。そして、リチャードの腹にへばりついている。
退かそうとしても退かない。
「リサ……急かさないで……」
(?)
苦しそうなリチャードの声に我に返る。火傷でもしたように 慌てて手を引っ込めると、リチャードから距離をとる。
「なっ、なっ、なっ」
何してるのよ……。手にまだ感触が残ってる。
「リサ!?」
リチャードが起き上がった。 嫌でもそこに目が行く。そそり起っている。見るのは初めてじゃないけど、もはや別物だ。
(もう やだー!)
シーツを頭から被って現実逃避した。自分から触りに行くなんて。
「リサ」
ツンツンとリチャードが肩をつつく。知らないと首を振るとリチャードがため息をついた。
(だって、だってー!)
「何か聞きたい事があったから、人間になりたかったんだろう」
「………」
見抜かれていたか。
ご主人様と膝を突き合わせるみたいにベッドで向かい合うと、気になっていた事を切り出した。
「では遠慮なく。その……好きな人と同じ種族に変身すると言う事ですが、それって……こっ、恋しているって意味ですか?」
普通に考えれば人間になるのは相手が好きだから話がしたいとか、デートしたいとか、両想いになるためのアプローチをしたいからだ。しかし、ご主人様が顎に手をあてて考え込んだ。
返事に困る事?
何か別の理由があるんだろうか?
「大体はそうだと思う」
「大体?」
それ以外の理由なんてある?
まさか……淫乱。否、恋多き動物なの?
「正しく言うなら、その相手との間に子供が欲しいと思った時に変身する」
「へっ?」
(こっ、子供!?)
余りにも衝撃的な内容に、言っている事は耳から入るのに脳へ届かない。確かに 番になりたいからと言っていたけど、目的は子供なの?
話終わったリチャードに、合っているかどうか自分の言葉で言ってみる。
「ええと……つまり……リチャードと……子作りしたいから……その……人間になると……」
「そう言う事になるね」
(嘘でしょー!)
心の中で絶叫して頭を抱えた。
単に好き嫌いじゃ無くて、リチャードと間の子供が産みたいって、言ってるって事でしょ。
それじゃあまるで、発情しているみたいじゃない。
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