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図書室
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しおりを挟む遠くに生徒たちのもらす喧騒が聞こえるが、そこは墓場のように静まり返っていた。
ひんやりと沈んだ空気から、誰もいないことがうかがい知れる。
ぺたん…ぺたん……
リノリウムの床にスリッパの音がやけに響く。
ぺたん…ぺたん……
悪寒と緊張で胃から込み上げるものがあるが、USBメモリが届いたあの日からまともに食事のできなかった為、胃液すら出てこない。
がちがちと震えながら冷たく汗ばむ手を握りしめて辺りを見回すと、机の上にメモが置かれているのが見える。
『ねくたいデ目隠シヲ』
吸い込んだ息がうまく吐けず、ずるずると床へと座り込む。
「なんで……どうして…っ…」
カチカチと歯を鳴らし、震えながら赤いネクタイを解こうとするがなかなかうまくいかず、やっとの事で目隠しをしたが力が入らなかったせいですぐにずり落ちてしまいそうだった。
ぎゅっとすっかり細くなってしまった体を抱き締める。
ネクタイの隙間から光は微かに見えていたが、視界がなくなってしまった不安感とこれからの事を思い体を震わす。
生徒の笑い声
足音
かけ声
ボールが弾む音
ブラスバンドの音
自分の破裂しそうな心臓の音
からり…
ドアの開く軽い音にはっと息を飲む。自分の心臓がうるさすぎて図書室のドアだったか判断がつかず、今すぐにネクタイをむしり取りたかった。
カチ…
極力音を立てないように閉められた鍵の音だけが、心臓の音を縫って耳に届く。
恐怖に心臓を鷲掴みにされ、ひゅっと喉の奥が鳴る。近づいてくる気配にじっとしていられなくなり、葉人は床を這うように逃げ出した。
レイプ画像を公開される恐怖よりも、今この目隠しをした状態で何かがこちらに向かってきていると言う事実が、葉人に恐慌をもたらす。
「ぅ…いやだ…!」
葉人が逃げ始めると、潜めていた足音が聞こえ始め、こちらに駆け寄る音に変わる。
「っぁ、っく…くるな…こないで………っ」
足を捕まれ、悲鳴を上げようとしたが息が漏れるばかりで音が伴わない。
闇の中、めちゃくちゃに足を蹴り出すがなんの手応えもなく空を切る。
「やめ…こ…こないで…」
暴れた拍子に体が本棚に当たり、順序よく並べられた本が上から降り注ぐが避ける術を知らず、体のあちこちにぶつかっては派手な音を立てて散らばった。
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