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準備室
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しおりを挟む『ハナちゃん、
サァ、マタ遊ンデ
上ゲルカラ、今日ノ
放課後、視聴覚室ニ
オイデ 』
きりっと痛んだ胃を押さえながら、葉人は何度も時計へと目をやった。
息を弾ませて化学室のドアを叩くと、光彦が顔を出して手招きした。
あまり馴染みのない化学室に入り、ほっと息をつく。
「…どうしてそんな息が切れてるんだ?」
「え…あ…」
4限終了と同時に教室を飛び出し、威が追いかけて来る前に一目散に走ってきたのだった。
「俺に会いたかった…って訳でもなさそうだな」
意地悪そうな顔で言われて、葉人は慌てて否定のために首を振る。
「違います!」
「ん。そうしとこう」
「ほ…ほんとですって!」
光彦はくすくすと笑いながら準備室の方へと葉人を招き入れる。
少し埃っぽいようなその空間は、棚にいろいろな物が詰められ、床には所狭しとダンボールが置かれていた。
「転ばないようにな」
そう言われ、うなずいた矢先にダンボールに引っかかってバランスを崩して倒れこむ。
「い…たた…」
「言った傍から…」
光彦に助け起されながら、部屋の奥の少し開けたスペースにたどり着く。
「片付けないんですか?」
「また手伝ってくれ」
そう言って光彦は机の上にあったメロンパンを葉人に手渡す。
「この時間に来たってことは食べてないだろ?」
うなずいてメロンパンの袋を破る。
「用意がいいだろ?」
そう笑いながら、光彦は珈琲の蓋を開けて葉人の傍に置いた
。
「熱くなくて悪いな」
「いえ、…ありがとうございます」
ブラックの文字のある缶に口をつけると、苦い珈琲の風味が漂う。
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