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準備室
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しおりを挟む「先生……フェネクスから、メール来ました」
自分もパンの袋を開け、口に運ぼうとしていた光彦の動きが止まる。
パンを机の上に置くと、葉人にそのメールを見せてくれと頼んできた。
やや戸惑ったものの、差し出した光彦の手に携帯を置く。
「……」
メタリックホワイトの携帯を見つめていた光彦が、カチカチとボタンを打ち始め、葉人は驚いて手を伸ばした。
「先生!?」
「どうせ呼び出すって言ってたんだから、ここに来て貰おう」
「や…だって…」
『送信しました』の表示の出ている携帯を葉人に返すと、ぎゅっと唇を引き結んで重々しく口を開く。
「どうにか、したいんじゃないのか?」
「…でも……撮られてるんです……ネットに流すって…逆らって…そんなことされたら…」
ぽと…と流れ出した涙を慌てて拭い、しゃくりを抑えるために珈琲を一気に飲み下す。
「…警察に言うって、脅し返そう」
「え?」
「金品を求めてるわけじゃないから…脅迫罪は無理だろうけど、あいつがやっていることが法に触れないわけじゃない」
ぎゅっと握り締めた珈琲の空き缶が、カコン…と乾いた音を立てる。
「あいつからのメールや、手紙とか…証拠はある」
「…それで……止めてくれますか?」
「……」
はっきりとした返事が出来ず、光彦は口をつぐむ。
「それであいつは止めてくれるんですか……っ!?」
「…今まで金品の要求がないってことは、純粋に小田切に執着してる可能性がある……だから…」
こらえ切れなかった涙が、膝の上に落ちた。
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