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携帯電話
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しおりを挟む「ここじゃなんだから、とりあえず準備室に行こう」
そう言う光彦に促されて歩き出すと、ふと剣道場の威に近づいていく小さな背中が見えた。
不機嫌そうだった威が、照れ臭そうに笑っている。
「……っ」
何を話しているのかは分からなかったけれど、むかむかした何かが胸を押さえつける。
「小田切?」
息苦しさを振り払うように、葉人は光彦の傍へと駆け寄った。
椅子に腰を下ろし、光彦に真っ二つになった携帯を見せる。
「すごいな」
「階段から落としちゃって…」
「そうか…連絡がつかないから焦ったよ。また何かあったのかなって」
ほっと表情を和らげる光彦に罪悪感を覚え、すみません…と謝罪する。
光彦に心配してもらう資格がないのを痛感しながら、握り締めた手に視線を落とす。
「その………実は…誰も来なかったんだ」
言いにくそうな光彦の言葉を聞き、こくりとうなずく。
メールを不審に思ったフェネクスは、化学室には行かない。
司郎から聞いていたそのことを、どう光彦に伝えればいいのか分からずに眉を寄せる。
「………フェネクスから…あの後メールが来て……今日は中止にするからって………」
「そうか…俺がしようとしたことが裏目に出たな…」
「いえ……っ」
胃が痛くなり、思わず鳩尾の辺りを押さえてうずくまる。
「小田切!?」
「っ…ぅ……」
「どうした!?」
「いえ…胃が……少し」
光彦に心配をかけまいと体を起こそうとしたが、きりきりとした痛みに再び顔を伏せる。
「大丈夫だから」
そっと体に回された腕が、優しく背中を撫でる。
「何か、他に方法を考えよう、な?」
そう言う光彦に、なんと返事をしていいのか分からずに曖昧な笑みを返して顔を伏せた。
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