放課後教室

Kokonuca.

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屋上

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 同じ型だと言うのに、まったく別物のように手に馴染まない携帯が小さく震える。 
 アドレスを登録していない相手からメールが届いたようだった。 

 カチ… 

 『屋上』と、その二文字だけのメールを見て、唇を噛む。 

 司郎からの呼び出しなのは明らかだった。 

「携帯替えたの?白だったろ?」 

 浩平に覗き込まれ、慌てて携帯を閉じる。 

「あ…その、修理に出してて…代替えのなんだ」 
「修理より新しいのにした方がよくない?」 
「気に入ってたから」 
「俺、この前新しいのに変えたんだ!綺麗な色だろ?」 

 傷一つないブルーの携帯を見せ、嬉しそうに言う浩平に苦笑いを返す。 
 最新の物にしたのを自慢したいようだった。 

「ごめん、ちょっとトイレ行ってくる」 
「え!?授業始まるよ?」 

 驚いて声を上げる浩平を置いて教室のドアへと向かうと、威がこちらを見ているのに気がつく。 

「…」 

 そちらに顔を向けることもできず、できるだけ意識しないようにして屋上へと歩き出した。 




 少し湿気を含んだような風は雨が近いことを示していた。 
 屋上へと踏み出すと、目の端に煙が一筋見え、追いかけるようにしてそちらへと足を運ぶ。 

「よぉ」 

 脱色した髪にピアス、そして着崩した制服の司郎が、煙草を持った手を軽く上げた。 

「…」 

 他に人がいないか辺りを見渡していると、不機嫌そうな司郎の声が届く。 

「俺だけだ。こっちに来い」 

 促され、フェンスに寄りかかっている司郎の傍へと寄ると、オレンジ色の携帯を取り出して見せた。 

「あいつの携帯だ」 

 そう言うと、携帯から小さなメモリーカードを抜き出して目の前でぱきんと折ってしまう。 

「あっ」 
「こっちもな」 

 そう言うと、司郎はさして力みもせずに携帯をへし折った。 

 昨日の自分の携帯を見ているような気になって、思わず目を逸らす。 

「あいつのパソコンからは、お前のデータは俺が責任もって消去してきた。パソコンまでは持ってこれねぇからな」 

 おずおずと顔を上げると、高い位置にあるきつい眼差しと視線がぶつかる。


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