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後輩
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しおりを挟む「?」
きょとんとしていると、葉人にその本を手渡してくる。
「用事が必要だろ。本を借りに…とでも言えばいいだろ?」
「あ、そうですね。……なんの本ですか?」
「結晶の本だ。綺麗だから、見てみるといい」
こくりとうなずき、千明の待っている方へと向かう。
「あとでまたメールするな」
「はい」
ぽそぽそっと、千明に聞かれないように話す会話がくすぐったくて、照れたように笑うと、光彦がぎゅっと抱き締めてくる。
「残念ですね」
「まったくだ、あいつ山本だろ?成績落としてやる…」
くすくすっと笑い合い、名残惜し気に手を離す。
「終わった?」
「うん。前に言ってた本、貸してくれるって」
手元を覗き込んでくる千明に、光彦から渡された本を見せる。
「へぇ…ちょっと見ていい?」
「うん」
食堂へと向かいながら、千明が本を広げる。
「青い結晶か…綺麗だよなー…あっ」
ひらりと、本の間から落ちたメモを葉人が拾い上げる。
「しおり?」
「メモみたい」
メモ帳を破ったような紙には、幾つかの数字と英字が小さく書かれていた。
「無くさないように、また挟んでおくよ」
食堂の前で千明から本を受け取ると、メモを挟み直す。
昼休みも中頃だと言うのに、まだまだ人で賑わっている中を縫って歩く。
見回しても、簡単に二人が座れそうな場所を見つけることはできなかった。
「俺、席取るから食券頼める?カレーね」
「分かった」
千明の分のカレーと自分用のきつねうどんの券を買い、食堂のおばさんに渡す。
待っている間に食堂を見渡すと、窓際の方で千明が手を振るのが見えた。
「はい!うどんとカレーね」
「ありがとうございます」
礼を言って受け取り、千明のいる方へと歩き出す。
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