165 / 349
露見
4
しおりを挟む取り乱しそうになるのを、威の手を握り返すことで耐える。
「……い…言いたくない…」
「俺は…葉を守りたい。だから、原因を知りたい」
威の指が俯く葉人の前髪を避け、その奥の瞳を覗き込む。
「あの先輩には言えて、俺には言えない?」
すがるように向けられる目の中に自分への愛情を感じ取り、苦しくなって葉人は胸元を押さえる。
「…っ……」
「俺は、ずっと一番お前の傍にいるんだと思ってた。独り善がりだったかな?」
そんなことはないと声に出しそうになって踏みとどまる。
「俺は、今でも葉が一番大切だ」
「…………違うよ」
「違わない」
「威が大切にしなきゃならない人は、他にいるだろ?」
そう言うと、覗き込んでいた威の瞳がゆらりと戸惑うように揺れる。
「…いないよ。葉だけだ」
「オレ、昨日ここで威が何してたか、知ってるよ?」
思わず視線がロッカーの方へと向かう。
その視線を追うように威が振り向き、はっと息を飲む。
「チケットを届けに来たんだ」
強く握りしめられた手の上に、ぽとりと涙が落ちる。
「里中くんと、威がしてるトコ見ちゃった」
「…」
「恋人を一番にしてあげなきゃダメだよ。威の一番は、里中くんだろ?」
威の手の中から両手を引き抜いて立ち上がる。
「じゃあ…オレ、行くから」
「……っ」
ドアノブにかけようとした手をきつく握られ、その痛みに呻く。
0
あなたにおすすめの小説
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる