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露見
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しおりを挟む剣道場の入り口を振り返り、威が追いかけてこないことを複雑な気持ちで見やって肩を落とす。
「…嫌われ…ちゃったか」
あれほど恐ろしかったことが、空っぽの心に引っかかりもせずに流れていく。
本来なら、紐で縛られているなんて異常な姿を見られたときに、嫌われていてもおかしくないんだ…と冷静に思いながら歩き出す。
威に嫌われたくなかった。
それ以上に、威まで汚したくなかった。
「どっちが優先かなんて、はっきりしてたのに」
こちらを見上げる瞳を思い出して、その奥に軽蔑の感情が入っていたか思い出そうとする。
複雑な思いを抱いて揺れる中から特定の感情を探し出せず、そっと目を閉じた。
「…」
やけに冷静でいられるのは、昨日トイレで犯されたのを見られたと言う諦めからなのか…
威に抱いていたイメージを、本人に否定されたからか…
階段を昇ろうとしたところで、初めて膝が震えていることに気づく。
踏ん張ろうとした気持ちを無視するかのように、体がその場に崩れ落ちた。
「…あれ……?」
震えは体を駆け上がり、歯がカチカチと鳴り出す。
ぶるぶると全身に広がった震えを押さえようと、必死に体を抱き締めるが、一向に収まる気配がない。
「ぅ……っ…」
うずくまり、膝に額を擦り付ける。
「……っ…」
しゃくり上げながら、葉人は小さく威の名前を呼んだ。
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