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露見
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しおりを挟む息を詰め、耳を塞いでうずくまる。
そうする以外にやり過ごす方法を思い付かなかった。
「っう……ぁー……っ!!」
声は喉の奥に貼り付いて、出てくるのは切れ切れの悲鳴にもならないかすれた息だけだった。
苦しい
辛い
…
思い浮かんだ光彦の名前にすがり付きたくなり、しっかりと握り込んだ携帯電話を見る。
『都合よく、逃げ込める先だからか?』
司郎の声が耳の奥に甦り、はっとみじろぐ。
携帯電話を握り締めたまま、甲で雫の溜まった目を擦った。
「……」
水の玉の残る睫毛を瞬かせ、首を振って立ち上がる。
「……もぅ…帰ろう…」
迷子の子供が自分に言い聞かせるかのように呟き、帰る旨を光彦に連絡すべく携帯電話を開いた。
「―――え?」
こちらを見て笑う二人の笑顔に面食らい、葉人の思考は停止した。
桜をバックに、二人肩を組んで頬を寄せるようにして写っている。
今より微かに幼さの残る葉人と威が、満面の笑みでこちらにピースしていた。
「な…んで…?」
その写真に心当たりはあったけれど、それを待ち受けに据えたことなどなかった。
携帯を閉じてその表面を見回すと、買ったばかりとは思えない細かな傷がついている。
「これ…威の…」
呟き、葉人は弾かれるように剣道場へと走り出した。
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