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キスマーク
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しおりを挟む威は触れては来なかった。
葉人が咽びながら床に突っ伏しても、ただ傍らに座り込み、ぐっと口を引き結んでいるだけだった。
時折迷うように瞳が揺れ、深く眉間に皺を寄せる。
「…ぅ……」
遠くに2限開始のチャイムを聞き、葉人はひく…と肩を揺らしながら顔を上げた。
固い表情の威を見て、自嘲の笑みが微かに浮かぶ。
「………ごめん」
口から零れた謝罪が何に対してなのか、呟いた葉人自身にもわからなかった。
「…オレ、帰るわ」
威の手の中にある携帯を取ろうとすると、びくんと威の手が引っ込む。
「……ごめんな」
何に対してだかよくわからない謝罪をもう一度呟くと、威の手の中の携帯電話を指差す。
「返して?」
そう言うと、威ははっとして自分の握りしめていた携帯に目をやり、慌ててそれを床へと置いた。
携帯を、床から取り上げて立ち上がる。
「ありがとう…」
やっぱり、どこに向かうかわからないままその言葉を口にすると、足を引きずりながら剣道場を後にした。
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