放課後教室

Kokonuca.

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キスマーク

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「…」 

 カチ…と検索のために文字を打ち始めて気づく。 

「…フェネクス……」 

 呟くと、やはり背中にぞくりと悪寒が走る。 
 検索バーに打ち込んだ文字を消し、代わりに『フェネクス』と入れた。 
 震える指で検索のボタンを押そうとした時、司郎の手がそれを遮る。 

「止めとけ」 
「……どうして先輩は、そこまでフェネクスを庇うんですか?」 

 閉じた携帯電話を葉人に返しながら、小さく肩を竦めてみせる。 

「なんでだろうな。まぁ…イヌだな」 

 訳がわからずに首を傾げる。 

「先輩が…犬なんですか?」 
「…パブロフのな」 

 そう言うと、司郎はまた煙草をくわえた。 

「今度から、気まずいかもしれないがちゃんとあのバカの傍にいろよ」 
「……あの…気まずいのは、もう…」 

 なんと言い出していいか分からずにそう言うと、火をつけようとしていた手が止まった。 
 指が、襟元に伸ばされる。 

「………濃くなってるな」 

 自らがつけたものよりも色を濃くしたキスマークを辿っていく。 

「あのバカと義兄弟だなんてアクムだな」 

 まだそうじゃないと言いそうになり、口をつぐむ。 
 そんなこと、言い回ることではない。 

「あっ」 

 司郎の指が、葉人の顎を捉える。 

「さっきの続きしようぜ」 
「あ、あの…っ……駄目ですっ」 

 司郎の胸板を押し返し、威が来る前に離れようと身をよじる。 

「んー…ダメか?」 
「はい」 

 司郎の唇が意地悪そうに歪む。 

「イヤとは言わないんだな」 
「!」 

 驚いた葉人が司郎を押し退けた瞬間、屋上の扉が開いて威が駆け込んできた。


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