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豹変
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しおりを挟む膝を抱えて踞る。
固く目を閉じ、時折ぎしりと背後で揺れる車の振動に身を震わせる。
「…ぁ……ふ……」
嬌声が耳に届き、その度に耳を塞いで首を振った。
「……葉っ…」
頭をコツリ…と叩かれ、強く耳に押し当てていた掌をそろと離す。
「……」
「蚊に刺されるぞ」
言われて初めて、威は腕にむず痒さを感じで蚊に刺された場所を見下ろした。
赤く腫れ上がった痒痛を訴える箇所から視線をずらして傍らに立つ司郎を見上げる。
「ハナトはやっと落ち着いて寝た」
「そう…ですか…」
乱れた司郎のシャツの胸元から覗く赤いみみず腫に気づき、目をそらす。
薄ぼんやりと指し始めた朝の光を邪魔するように、紫煙が視界を遮る。
「…………先輩は…どうして、羽鳥のこと…」
「ん?」と服を整える合間に生返事をし、眠そうに顔をしかめた。
「いつだったか…アイツがイカガワシイ店に入るのを見た」
「……」
「まぁ…一般的なセイヘキじゃないのは確かだろうなぁ…と」
威は返事もせず、ぐず…と鼻を啜る。
「あ?……あんなナリユキでハナトを抱かないって決めたのはお前だろ?泣くな」
「……」
ぎゅっと煙草を揉み消す。
「泣きたいのは俺の方だ。…この車、どう掃除しろってんだ」
忌々しそうに睨む視線の先には、白濁液の飛沫の張り付いた窓ガラスがある。
「…すみません……俺が掃除します」
「うるせぇ。自分のシマツくらい自分でする」
小さく「はい」と返して威は再び膝に顔を埋めた。
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