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しおりを挟むオフホワイトのソファーはふわりとしていて座り心地がいいはずなのに、葉人は落ち着かずに何度も座り直した。
台所でカチャカチャと音を立てる威の背中をちらちらと盗み見る。
「…」
唇は乾いてはいたが、何かを出されても口をつけることは出来なさそうだった。
出されたコップとオレンジジュースを申し訳なく見やる葉人の向かいに威が腰を下ろす。
「…」
「…」
会話もない状態の気まずい雰囲気にいたたまれなくなり、葉人は意を決して顔を上げた。
「あの…」
びくん…と声を出した葉人の方が驚く程の反応を見せ、威は弾かれたように葉人に向き直る。
どこか怯えを含むようなその瞳を向けられ、葉人は咄嗟にその視線から逃れるように下を向いた。
「…ごめん…なんでもない」
「いや……あ、そうか…横になるか?体辛いだろ?」
「ん…ぅん」
無茶苦茶な性交をしたせいか、葉人の体は全体がギシギシと痛んでいた。
自室ならばすぐにでも倒れ臥したい状態だった。
「そう…だね…」
葉人は促されるようにして立ち上がりながら、何か話をしたくて口を何度も開きかけたが、言葉が出ずにただ開いたそれを閉じるしかできなかった。
焦燥感が募る。
ここで、この場で、少しでも早く威と何かを話してしまわなければと思うのに、そうしてしまうのが怖くも感じていた。
何かが崩れてしまいそうな、揺れるバランスに不安が募る。
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