232 / 349
裏切り
6
しおりを挟む横になり、目を閉じるとまだ言い争っている二人の声が聞こえてきた。
あの二人はいつもああなのだろうか?
千秋から特に鷹雄と親しいなどと言う事を聞いたことはなかったけれど、あの言い合いを見ていると昔からの仲なのは間違いなさそうだった。
「…いい……なぁ…」
ぽつりと言葉が零れる。
葉人と威も、かつてはあんなふうに軽口を言い合っていた筈だった。
互いに気持ちがあるのだと分かり…二人の関係は変わってしまった。
「戻りたい…な…」
今の、会話もろくに続かないような関係ならば、お互いの気持ちに蓋をして無邪気に触れ合っていた頃の方が良かった。
威に亜矢子と言う彼女が出来、うら寂しさを感じながらも祝福できていた頃の方が幸せだった。
「なんで…こんな風に……」
ぼろ…と大粒の涙が零れて枕に染みを作る。
きっかけは分かっている…あの日、あの放課後の教室で行われた…
「あれさえっ…あの事さえなければっ…」
嗚咽と共に言葉が漏れる。
思い出して震え始めた体を自分で抱き締めるが、恐怖に震え始めた体はどんどん体温を失い、小刻みな震えが大きくなっていく。
助けて…
そう、喘ぐように声が零れる。
遠くで響く笑い声。
小さなサイレンの音。
破裂しそうな心臓の音と…滴る汗の落ちる音。
それから…
ヴヴヴヴヴ ヴヴヴヴヴ
小さな振動がシーツの上を伝って葉人の元へと届いた。
0
あなたにおすすめの小説
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる