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威
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しおりを挟む「…………だ」
呻く声は這うように威の元へ届き、風呂場へと向かいかけた足を縫いとめた。
じとりと這いずるような雰囲気を縫うように、葉人の声が絞り出される。
「い…や、だ」
枯れた声は微かで…
けれど、威の肩を震わせるには十分だった。
「……っ…」
「いやだ、いやだ!!」
「―――お前はっ!」
踵を返した威の両手が葉人の肩を掴んでぐいと力任せに揺さぶる。
華奢な葉人の体はそれだけで軋みを上げたが、噛み締められた唇から悲鳴が漏れる事はなかった。
「お前はっ!!あんなことをした人間に傍をうろつかれても平気だって言うのかっ!?」
握り締めた指先が硬い骨に当たって初めて、はっとした顔をして威はその手を離して膝の上へと移動させた。
ぽとり…
柔らかな曲線を伝って落ちる雫が床に跳ねて小さな音を立て、二人の沈黙に小さな波紋を生み出す。
「周りをうろつかれるのは嫌だ」
はっきりと告げられた死刑宣告のようなそれに、威は自嘲の笑みを小さく唇の端に浮かべた。
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