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放課後の教室で…
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しおりを挟む教師たちには、威と亜矢子の交際でトラブルがあったと言う事で説明がついた。
男に恋人を盗られたと言う事を亜矢子が言いたがらなかったのと、威が始終それで一貫したからだった。
鷹雄は翌日頬を腫らした顔で登校し、葉人たちを見て盛大に顔をしかめていた。
確認を取った訳ではなかったが、傍に立っていた司郎がにやりと笑ったのを思えば誰が殴ったのかはすぐに分かる。
―――放課後、生徒指導室から教室に帰ってきた威が席に座っていた葉人を見つけてほっと息を吐いた。
「あ、威!どうだった?」
「ん…亜矢子は停学、俺は……大会への出場取り止め」
「っ!!」
きゅっと詰まった胸に葉人は知らず知らず胸を押さえ、窺うように威を見上げる。
威の出場取り消しも、亜矢子の停学も、出来事からすれば当然だとは言え、重い処分だ。
「ごめ……オレだけ…」
葉人はたまたまそこにいただけで、偶然巻き込まれた…そう認識され、処罰が下る事はなかった。
その事が、当事者でありながら責任逃れをしたようで…
葉人はいたたまれなさに唇を噛んだ。
「大会、楽しみにしてたのに……辻さんだって…停学とか…」
「大会は、来年出られる。気にすんな」
そう言って頭を撫でる威は、亜矢子については何も言わなかった。
ただ険しい、思いつめたような顔をして眉間に皺を寄せるだけだ。
何を思っているのか、葉人には分からなかったけれど、自分達の行動が引き起こしてしまった結果に恐れているようには感じた。
「……」
学校と言う場所柄、触れる事を躊躇われて…
けれど苦しそうな威に寄り添いたくてほんのわずかな指先だけでその手に触れる。
「威…」
「…傷つけて……ごめん」
「オレは…」
「もう、傷つけたくないって思ってたのに…、ごめん…っ俺の傍に居たら、傷つけてばっかりだ」
威の目縁に溜まった雫がさっと盛り上がる。
微かに触れるだけでいいと思っていた筈の指が自然と絡まり合った。
傍らにいたら傷付ける。
威が何を言い出そうとしているのか察して、葉人は先に口を開いた。
「……ねぇ、酷い奴って思ってくれてもいいから、…聞いてくれる?」
絡ませた指先の熱が溶けあい、しっとりとした肌が互いの境界線を曖昧にしていく…
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