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おまけ 61
しおりを挟むこの場に瘴気や魔物が多い可能性としては、あの浄化を逃げ延びたか、もしくはまた再びこのゴトゥスに淀みや澱が集まっているか、……それから、魔人が瘴気や魔物を集めているか だ。
はるひのことを思えば一番最後の可能性に賭けたいところだが、最悪なパターンを考えるならば、魔人はいたがはるひを連れ去った個体ではなかった場合。
その時は……
聖シルル王国の騎士としてはあるまじきことだろうが、その際はさっさと逃げ出すしかない。
「ああ、もう騎士ではないのだったな 」
何かしらことあるごとにコツンと音を立てて存在を主張していた青いカメオを思い出し、苦笑して長剣の柄を撫でる。
「俺の最優先事項は、はるひだ」
それは違いないし、問題に出す気もない。
けれど一抹の名残惜しさにどうしても囚われてしまう瞬間があるのは事実だった。
みっともないことを……と思ってもついついそれに思いを馳せてしまうのは、何かしら考えることを止めたくなかったからだ。
「……ヒロ、は 」
ヒロは、元気だろうか?
夜は泣いているのではないかと心配だし、はるひを求めているのではと思うと胸の辺りがシクシクと痛む気がする。
まだ小さいのに……
獣人にしては酷く成長が遅くて何かしら気を揉んでしまったが、それでも毎日少しずつ成長が見て取れて、猫じゃらしのような尾も徐々に毛量が増えて俺の尾によく似てきた。
悪戯をして慌てる俺達を見て楽しそうに上げた笑い声がまだ耳の奥に残っているようだ。
どんな子供に育つのか……
俺に似るのか、はるひに似るのか……
まさか黒い毛の俺から兄と同じ白い毛の子が生まれるとは思ってもみなかったが、人生何が起こるかわからない。
「 ────っ」
木の枝に絡みつく瘴気に触れそうになって、はっと手を引く。
すると細いイトミミズのような触手が獲物を捕らえ損ねたのを残念がるようにうねり、小さく震えてくたりと項垂れてしまう。
黒い艶のある……光に当たる部分は暗褐色にも見えるそれは頼りなくて、とても人に襲いかかり辱めるとは思えなかった。
巫女の聖別を受けた物があればなんら恐れることはない生き物……いや、生き物なのだろうか?
この世界の澱と言われて素直にそうかと飲み込んでしまってはいたが、それが意志を持って人に襲いかかるものなのだろうか?
澱……と言われても、俺の想像力ではワインの底に沈むモロモロとした物体しか思い浮かばない。
もちろん、それに意志など宿りはしないし、それが幼い頃に聞いたお化けのように動き出すことはないのだから、かすがの言う『澱』とは……?
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