253 / 303
おまけ 129
しおりを挟む「ぐ っ……こ、のっ……」
ぐぐっと魔人の口の中へ差し込んだ長剣でこじ開けるように力を込めた。
「剣が抜けたら退避する者達の援護をお願いします! その剣でなら薙ぎ払えるでしょう!」
「お前は⁉︎」
剣を引き抜きながらこちらを見るダンクルの首に下がっている笛を奪い取り、さっと口に咥える。
「何をするっ⁉︎」
「見つけました」
「なに……」
「ここです、口の中は柔らかい」
そう言った俺に、ダンクルは正気か? と言う表情を向けた。
剣が引き抜かれた後、ダンクルは退避するものだとばかり思っていたのに……
どぉん と派手な音を立てて触手がぶつかってきても、ルキゲ=ニアを盾にすれば難なく防ぐことができる。
「下がってください! 刺したらすぐに逃げないといけない!」
「じゃあ刺すまで援護がいるだろう?」
泥とかすり傷だらけではあるがダンクルは元気そうに言って走り出す、仕方なく後ろから追い越し、短剣を構えて魔人の正面へと踊り出た。
まるで怒り狂った牛のようにこちらへと突進してくる魔人の顔に……ダンクルがルキゲ=ニアを炸裂させ……
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ! ぇ゛ず でぇ゛ー……っ」
重量のある剣で殴られたためか魔人の声が甲高く上がり、小さな子供がぐずるようにエステスの名前らしきものを呼びながら叫び出す。
大きく開けられたそこに向けて……
渾身の力を込めて短剣を投げつけた。
「 ────!」
わずかに歯にはかすったものの、大きく開けられていた口の中へ飛び込んでいった短剣は喉の奥に消える。
刺さることはなかっただろうが体内に入っていってくれた……とダンクルとアイコンタクトをとる、この巨木のようなサイズになってくれないとできない事柄だっただけに、これならば抜けることはないだろうと達成感を胸に走り出す。
ミロクの力が落ちてきても大丈夫な距離を取って、後は笛を吹くだけだ……と思った時だった。
ぼとん
またあの音だ と、心の隅に引っ掛かった。
「ダンクル! 待て!」
退避の列に駆け寄ろうとしたダンクルを呼び止め、ざっと空を見上げた。
ぼとんと音がするのだから空から落ちてきているのだろうと……けれど実際は下げた視線、地面を見つめる目の前での出来事だった。
黒く細いイトミミズのようなものが絡みあいながら這い出し、それが勢いよく飛び出して地面に転がるとそれがぼとん と音を立てる。
産まれている。
ぼとんぼとん ぼとんぼとんぼとんぼとん ぼ…………
魔物と瘴気に覆われていると言うのに、更にまだ瘴気が増えている?
退却をしようとしていた者達の足が止まり、じりじりと押されるようにこちらへと押し戻される。なぜなら行く先には大量の瘴気でびっしりと覆いつくされていたからだった。
26
あなたにおすすめの小説
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね
ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」
オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。
しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。
その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。
「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」
卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。
見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……?
追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様
悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。
転生して王子になったボクは、王様になるまでノラリクラリと生きるはずだった
angel
BL
つまらないことで死んでしまったボクを不憫に思った神様が1つのゲームを持ちかけてきた。
『転生先で王様になれたら元の体に戻してあげる』と。
生まれ変わったボクは美貌の第一王子で兄弟もなく、将来王様になることが約束されていた。
「イージーゲームすぎね?」とは思ったが、この好条件をありがたく受け止め
現世に戻れるまでノラリクラリと王子様生活を楽しむはずだった…。
完結しました。
「隠れ有能主人公が勇者パーティから追放される話」(作者:オレ)の無能勇者に転生しました
湖町はの
BL
バスの事故で亡くなった高校生、赤谷蓮。
蓮は自らの理想を詰め込んだ“追放もの“の自作小説『勇者パーティーから追放された俺はチートスキル【皇帝】で全てを手に入れる〜後悔してももう遅い〜』の世界に転生していた。
だが、蓮が転生したのは自分の名前を付けた“隠れチート主人公“グレンではなく、グレンを追放する“無能勇者“ベルンハルト。
しかもなぜかグレンがベルンハルトに執着していて……。
「好きです。命に変えても貴方を守ります。だから、これから先の未来も、ずっと貴方の傍にいさせて」
――オレが書いてたのはBLじゃないんですけど⁈
__________
追放ものチート主人公×当て馬勇者のラブコメ
一部暗いシーンがありますが基本的には頭ゆるゆる
(主人公たちの倫理観もけっこうゆるゆるです)
※R成分薄めです
__________
小説家になろう(ムーンライトノベルズ)にも掲載中です
o,+:。☆.*・+。
お気に入り、ハート、エール、コメントとても嬉しいです\( ´ω` )/
ありがとうございます!!
BL大賞ありがとうございましたm(_ _)m
転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています
柚吉猫
BL
生前の記憶は彼にとって悪夢のようだった。
酷い別れ方を引きずったまま転生した先は悪役令嬢がヒロインの乙女ゲームの世界だった。
性悪聖ヒロインの弟に生まれ変わって、過去の呪縛から逃れようと必死に生きてきた。
そんな彼の前に現れた竜王の化身である騎士団長。
離れたいのに、皆に愛されている騎士様は離してくれない。
姿形が違っても、魂でお互いは繋がっている。
冷然竜王騎士団長×過去の呪縛を背負う悪役弟
今度こそ、本当の恋をしよう。
名もなき花は愛されて
朝顔
BL
シリルは伯爵家の次男。
太陽みたいに眩しくて美しい姉を持ち、その影に隠れるようにひっそりと生きてきた。
姉は結婚相手として自分と同じく完璧な男、公爵のアイロスを選んだがあっさりとフラれてしまう。
火がついた姉はアイロスに近づいて女の好みや弱味を探るようにシリルに命令してきた。
断りきれずに引き受けることになり、シリルは公爵のお友達になるべく近づくのだが、バラのような美貌と棘を持つアイロスの魅力にいつしか捕らわれてしまう。
そして、アイロスにはどうやら想う人がいるらしく……
全三話完結済+番外編
18禁シーンは予告なしで入ります。
ムーンライトノベルズでも同時投稿
1/30 番外編追加
【本編完結】最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!
天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。
なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____
過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定
要所要所シリアスが入ります。
【完結】「奥さまは旦那さまに恋をしました」〜紫瞠柳(♂)。学生と奥さまやってます
天白
BL
誰もが想像できるような典型的な日本庭園。
広大なそれを見渡せるどこか古めかしいお座敷内で、僕は誰もが想像できないような命令を、ある日突然下された。
「は?」
「嫁に行って来い」
そうして嫁いだ先は高級マンションの最上階だった。
現役高校生の僕と旦那さまとの、ちょっぴり不思議で、ちょっぴり甘く、時々はちゃめちゃな新婚生活が今始まる!
……って、言ったら大袈裟かな?
※他サイト(フジョッシーさん、ムーンライトノベルズさん他)にて公開中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる