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第3章 真珠湾からの帰投
3.2章 空母改修
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空母が帰投すると、まずは被害を受けた赤城と蒼龍の修理を優先した。
一足早く日本に帰ってきた一航戦の赤城は、呉の海軍工廠で直ちに船体の修理を開始した。蒼龍も修理のために横須賀に直行した。既に帰港前に被害内容については連絡済みであったため、修理のための部材は横須賀海軍工廠で準備が進んでいた。取り付けるべき後部格納庫は、蒼龍が帰港する前にあらかじめ数個のブロックに分けてそれぞれをくみ上げていたのだ。ドックに入ると不規則な形状の破損部をどんどん切り離してゆく。湾曲した部材やへこんだ外板や壁もまとめて切り取る。切り離しが済むと、あらかじめ準備していた格納庫の一部を構成するブロックを組みつけてどんどん溶接してゆく。損傷していた船体後部の修理は、短時間で大まかな部分の修復を済ませた。
一方、陸に上がった一航艦司令部では、草鹿少将が空母の修理と改修について報告を求めていた。大石主席参謀や、源田航空参謀など主な司令部要員が報告のために集まってきた。
大石中佐が最初に状況説明を始めた。
「艦政本部と航空本部から一航艦の艦艇や航空機の修理や補充について報告がありました」
「まず損傷した空母だが、どのような見通しなのか?」
「赤城は艦前部の修理を行い、以前の船体に復旧させています。恐らく2カ月以内に終わると思われます。蒼龍については後部格納庫の修理と共に、斜め飛行甲板への改造を実施します。既に、祥鳳で良好な運用結果を得ているため、同様の飛行甲板を採用するとのことです。更に、艦首部に蒸気カタパルトの追加装備も実施します。これにより、3カ月以内に蒼龍は装備に関しては最新型の航空母艦へと変身することになります」
草鹿少将の質問が続く。
「他の空母はカタパルトや斜め飛行甲板の改修するのか?」
「はい、この機会にできる限り早期に装備を追加して戦力の強化を行いたいと考えております。まず新鋭空母の翔鶴と瑞鶴については、斜め飛行甲板と蒸気カタパルトの資材を、我々の帰投前からあらかじめ準備していたと聞いています。この資材を利用して横横須賀海軍工廠で集中的な改修工事を開始しています。赤城と飛龍については、斜め甲板の装備については見送りです。艦橋の位置が左舷にあるため、艦橋の位置をまず右側に移すという大工事が必要となるためです。なお、飛龍は呉で蒸気カタパルトの追加装備のみを実施します。赤城は蒸気カタパルトを既に搭載済みですから変わりはありません。加賀については、蒸気カタパルトを既に搭載していますので、呉で斜め飛行甲板の追加工事を実施します」
「電探装備についてはどのようになっているのか? あれは実戦でかなり役に立ったぞ」
通信参謀の小野少佐が説明する。
「真珠湾攻撃の直前に一部の艦艇に搭載した電探は、航空機との戦いに不可欠との認識です。原則として、戦闘が想定されるすべての艦艇に装備することになりました。電探自身の生産にも時間がかかりますが、たくさんの艦艇への搭載工事もかなり大変なようです。当然ながら、前線で戦闘の可能性のある大型艦から優先して搭載する見込みです」
源田中佐がメモを見ながら続ける。
「技術研究所で既に改良型の電探の開発が終わって生産に入っていると聞いています。二号二型電探の改良型は、波長を短くしたことにより対空射撃時の距離測定と方位の精密測定が同時に可能となったそうです。電探で得られた航空機の方位と距離の入力に対応した改良型の九四式射撃照準器を使用すると、高角砲と高射機関砲を連動させた統制射撃が可能となるとのことです。
なんでも、新型の駆逐艦秋月にさっそくこの電探と射撃照準器を搭載したところ、10センチ高射砲の命中率は著しく改善したとのことです。射撃照準器と連動して射撃管制が可能な電探となったことから名称を変更して、二号四型電探となっています」
通信参謀の小野少佐が引き継いで説明した。
「もう一つ。水上の艦船を探知できる電探が、完成して追加装備されます。従来の電探から、出力を増加させて50センチ波の電波を使用したことにより、海上の艦船が明瞭に探知できることが検証されました。この水上の艦艇を探知する電探は二号三型電探として、対空電探とは別に装備することとなったとのことです。私は実際に、工事中の新型電探を見てきました。二号四型電探はおわん型のアンテナを持っていて、操作員が高射砲のように測定する対象物にアンテナを向けることで測距が可能です。二号三型電探のアンテナはおわん型ではなく、長方形の板を左右に湾曲させた形状となっていました。これをぐるぐる回転させて周囲の船を探知するとのことです」
「すると、我々の艦艇が装備する電探は、長距離で近づく航空機を発見するためのものと、近づいた航空機を精密に測定して射撃管制するものと、艦艇を探知するものの3種類ということか。なかなか豪華になったな。説明を聞いただけでも複雑そうだな。これは指揮をする士官も含めて操作要員の訓練が重要になるぞ」
「もっともだと思います。既に説明の要求をした結果、技研から我々に対して講習会をしてくれるそうです」
1週間後に、技研の伊藤中佐たちの技研の一行が、新たに搭載した電探の説明会を実施した。今までの対空探知の電探に加えて、海上の艦船の探知が可能となった二号三型と対空射撃の管制が可能となった二号四型についての説明をした。今回は艦隊の防空指揮官も出席していたので、改修版の九四式高射装置と連動するようになった二号四型について、質問が集中する。
「それで、電探と高射装置が連動するようになってどの程度まで命中精度が向上しているのかね?」
「秋月が新型の電探と高射装置を用いて模擬的な実験をしています。実際に、標的機を落としたわけではありませんが、恐らく94式高射装置だけを使用した従来の高射砲の射撃法に比べて数倍くらいは改善していると思われます。特に40mm機関砲と連動させることも可能ですので、その時には大いに撃墜率が向上するだろうとの意見も秋月の砲術長からもらっています。実は、もう一つ電波を使った装備があります。私が昭和16年にドイツに行ったときに情報を仕入れてきた逆探知機です。受信する波長は、メートル波が中心になりますが、80センチ波くらいまでなら検出可能です。つまり相手が、電探を使うとその電波の発信された方向を検知できます」
「こちらは電波封止状態で相手が電探を使えば、わが身を隠したうえで敵を検出できるということか。距離はわからないのか?」
「基本原理から距離は測定できません。但し、闇夜にいきなりドカンと攻撃されることは防げます。最近は航空機に搭載できる電探がありますので、それを使って夜間攻撃することも考えられます。まあ、電探でも相手は見つけられますが、作戦上無線封止ならば、この装備で見つけることになります。まだ数が少ないので、航空戦隊の旗艦などの一部の艦に搭載することになります。採用されれば二式電波逆探知機とでもなるでしょうが、制式名はまだありません」
続いて、新規に搭載が始まっている潜水艦探知のための一式一号音波探信儀についても技研開発の装置として説明を実施した。この探信儀は固体型の圧電素子を利用した高感度の水中マイクロフォンを使用することにより感度を大幅に向上している。また純度の高い圧電素子の製造が可能となったおかげで、電圧を印加することにより容易に物理的な振動の発生が可能となった。このため探知音波の発信もこの素子が行うことにより出力が向上している。水上艦ではこの探信儀とセットになって使用する和製ヘッジホッグともいえる前方投射型の一式十糎対潜弾についても解説を行った。
通信参謀の石黒少佐が意見を述べる。
「潜水艦は、空母にとっては注意が必要な相手なので、音波探信儀が高性能化することはありがたいです。今の報告だと、まだ装備している駆逐艦が少ないようだが、装備を早めてほしいと艦政本部への依頼が必要ですね」
草鹿少将が質問する。
「新規の電探と音波探信儀の巡洋艦や駆逐艦への装備については、配備が遅れているとのことだ。私から山本長官の名前も入れて、搭載を加速するように艦政本部に依頼しておこう。ところで、新規の電探を複数搭載したので、技研の方から電探操作に手慣れた若手の技師を派遣してもらえないだろうか? 実際に現場で操作してそれを見せてもらえば、兵員が操作をしっかりできるまでの時間は随分短くなると思う」
伊藤中佐が答える。
「うちの技師は、転官している人員が多いので少尉や中尉になりますがいいですか? 数名くらい候補を考えます」
「うむ士官であるのは問題ない。電探担当士官の扱いとして指導をしてもらおう。ついでと言っては悪いが、最近性能が向上した音波探信儀についても指導官が誰かいないだろうか。」
「わかりました。さっそく準備します。但し、派遣期間は1カ月程度としてください。こちらの研究開発に影響が出ますから」
電探の説明会が終わってから、源田中佐が草鹿少将のところにきてつぶやいた。
「空技廠で開発中の機体もいくつかは使用できる状況になってきているようですよ。特に新型の艦戦と艦爆は、間もなく我々のところにも配備されるんじゃないでしょうか?」
「新型機の状況については空技廠に問い合わせるぞ。是非とも配備を急いでほしいからな」
一足早く日本に帰ってきた一航戦の赤城は、呉の海軍工廠で直ちに船体の修理を開始した。蒼龍も修理のために横須賀に直行した。既に帰港前に被害内容については連絡済みであったため、修理のための部材は横須賀海軍工廠で準備が進んでいた。取り付けるべき後部格納庫は、蒼龍が帰港する前にあらかじめ数個のブロックに分けてそれぞれをくみ上げていたのだ。ドックに入ると不規則な形状の破損部をどんどん切り離してゆく。湾曲した部材やへこんだ外板や壁もまとめて切り取る。切り離しが済むと、あらかじめ準備していた格納庫の一部を構成するブロックを組みつけてどんどん溶接してゆく。損傷していた船体後部の修理は、短時間で大まかな部分の修復を済ませた。
一方、陸に上がった一航艦司令部では、草鹿少将が空母の修理と改修について報告を求めていた。大石主席参謀や、源田航空参謀など主な司令部要員が報告のために集まってきた。
大石中佐が最初に状況説明を始めた。
「艦政本部と航空本部から一航艦の艦艇や航空機の修理や補充について報告がありました」
「まず損傷した空母だが、どのような見通しなのか?」
「赤城は艦前部の修理を行い、以前の船体に復旧させています。恐らく2カ月以内に終わると思われます。蒼龍については後部格納庫の修理と共に、斜め飛行甲板への改造を実施します。既に、祥鳳で良好な運用結果を得ているため、同様の飛行甲板を採用するとのことです。更に、艦首部に蒸気カタパルトの追加装備も実施します。これにより、3カ月以内に蒼龍は装備に関しては最新型の航空母艦へと変身することになります」
草鹿少将の質問が続く。
「他の空母はカタパルトや斜め飛行甲板の改修するのか?」
「はい、この機会にできる限り早期に装備を追加して戦力の強化を行いたいと考えております。まず新鋭空母の翔鶴と瑞鶴については、斜め飛行甲板と蒸気カタパルトの資材を、我々の帰投前からあらかじめ準備していたと聞いています。この資材を利用して横横須賀海軍工廠で集中的な改修工事を開始しています。赤城と飛龍については、斜め甲板の装備については見送りです。艦橋の位置が左舷にあるため、艦橋の位置をまず右側に移すという大工事が必要となるためです。なお、飛龍は呉で蒸気カタパルトの追加装備のみを実施します。赤城は蒸気カタパルトを既に搭載済みですから変わりはありません。加賀については、蒸気カタパルトを既に搭載していますので、呉で斜め飛行甲板の追加工事を実施します」
「電探装備についてはどのようになっているのか? あれは実戦でかなり役に立ったぞ」
通信参謀の小野少佐が説明する。
「真珠湾攻撃の直前に一部の艦艇に搭載した電探は、航空機との戦いに不可欠との認識です。原則として、戦闘が想定されるすべての艦艇に装備することになりました。電探自身の生産にも時間がかかりますが、たくさんの艦艇への搭載工事もかなり大変なようです。当然ながら、前線で戦闘の可能性のある大型艦から優先して搭載する見込みです」
源田中佐がメモを見ながら続ける。
「技術研究所で既に改良型の電探の開発が終わって生産に入っていると聞いています。二号二型電探の改良型は、波長を短くしたことにより対空射撃時の距離測定と方位の精密測定が同時に可能となったそうです。電探で得られた航空機の方位と距離の入力に対応した改良型の九四式射撃照準器を使用すると、高角砲と高射機関砲を連動させた統制射撃が可能となるとのことです。
なんでも、新型の駆逐艦秋月にさっそくこの電探と射撃照準器を搭載したところ、10センチ高射砲の命中率は著しく改善したとのことです。射撃照準器と連動して射撃管制が可能な電探となったことから名称を変更して、二号四型電探となっています」
通信参謀の小野少佐が引き継いで説明した。
「もう一つ。水上の艦船を探知できる電探が、完成して追加装備されます。従来の電探から、出力を増加させて50センチ波の電波を使用したことにより、海上の艦船が明瞭に探知できることが検証されました。この水上の艦艇を探知する電探は二号三型電探として、対空電探とは別に装備することとなったとのことです。私は実際に、工事中の新型電探を見てきました。二号四型電探はおわん型のアンテナを持っていて、操作員が高射砲のように測定する対象物にアンテナを向けることで測距が可能です。二号三型電探のアンテナはおわん型ではなく、長方形の板を左右に湾曲させた形状となっていました。これをぐるぐる回転させて周囲の船を探知するとのことです」
「すると、我々の艦艇が装備する電探は、長距離で近づく航空機を発見するためのものと、近づいた航空機を精密に測定して射撃管制するものと、艦艇を探知するものの3種類ということか。なかなか豪華になったな。説明を聞いただけでも複雑そうだな。これは指揮をする士官も含めて操作要員の訓練が重要になるぞ」
「もっともだと思います。既に説明の要求をした結果、技研から我々に対して講習会をしてくれるそうです」
1週間後に、技研の伊藤中佐たちの技研の一行が、新たに搭載した電探の説明会を実施した。今までの対空探知の電探に加えて、海上の艦船の探知が可能となった二号三型と対空射撃の管制が可能となった二号四型についての説明をした。今回は艦隊の防空指揮官も出席していたので、改修版の九四式高射装置と連動するようになった二号四型について、質問が集中する。
「それで、電探と高射装置が連動するようになってどの程度まで命中精度が向上しているのかね?」
「秋月が新型の電探と高射装置を用いて模擬的な実験をしています。実際に、標的機を落としたわけではありませんが、恐らく94式高射装置だけを使用した従来の高射砲の射撃法に比べて数倍くらいは改善していると思われます。特に40mm機関砲と連動させることも可能ですので、その時には大いに撃墜率が向上するだろうとの意見も秋月の砲術長からもらっています。実は、もう一つ電波を使った装備があります。私が昭和16年にドイツに行ったときに情報を仕入れてきた逆探知機です。受信する波長は、メートル波が中心になりますが、80センチ波くらいまでなら検出可能です。つまり相手が、電探を使うとその電波の発信された方向を検知できます」
「こちらは電波封止状態で相手が電探を使えば、わが身を隠したうえで敵を検出できるということか。距離はわからないのか?」
「基本原理から距離は測定できません。但し、闇夜にいきなりドカンと攻撃されることは防げます。最近は航空機に搭載できる電探がありますので、それを使って夜間攻撃することも考えられます。まあ、電探でも相手は見つけられますが、作戦上無線封止ならば、この装備で見つけることになります。まだ数が少ないので、航空戦隊の旗艦などの一部の艦に搭載することになります。採用されれば二式電波逆探知機とでもなるでしょうが、制式名はまだありません」
続いて、新規に搭載が始まっている潜水艦探知のための一式一号音波探信儀についても技研開発の装置として説明を実施した。この探信儀は固体型の圧電素子を利用した高感度の水中マイクロフォンを使用することにより感度を大幅に向上している。また純度の高い圧電素子の製造が可能となったおかげで、電圧を印加することにより容易に物理的な振動の発生が可能となった。このため探知音波の発信もこの素子が行うことにより出力が向上している。水上艦ではこの探信儀とセットになって使用する和製ヘッジホッグともいえる前方投射型の一式十糎対潜弾についても解説を行った。
通信参謀の石黒少佐が意見を述べる。
「潜水艦は、空母にとっては注意が必要な相手なので、音波探信儀が高性能化することはありがたいです。今の報告だと、まだ装備している駆逐艦が少ないようだが、装備を早めてほしいと艦政本部への依頼が必要ですね」
草鹿少将が質問する。
「新規の電探と音波探信儀の巡洋艦や駆逐艦への装備については、配備が遅れているとのことだ。私から山本長官の名前も入れて、搭載を加速するように艦政本部に依頼しておこう。ところで、新規の電探を複数搭載したので、技研の方から電探操作に手慣れた若手の技師を派遣してもらえないだろうか? 実際に現場で操作してそれを見せてもらえば、兵員が操作をしっかりできるまでの時間は随分短くなると思う」
伊藤中佐が答える。
「うちの技師は、転官している人員が多いので少尉や中尉になりますがいいですか? 数名くらい候補を考えます」
「うむ士官であるのは問題ない。電探担当士官の扱いとして指導をしてもらおう。ついでと言っては悪いが、最近性能が向上した音波探信儀についても指導官が誰かいないだろうか。」
「わかりました。さっそく準備します。但し、派遣期間は1カ月程度としてください。こちらの研究開発に影響が出ますから」
電探の説明会が終わってから、源田中佐が草鹿少将のところにきてつぶやいた。
「空技廠で開発中の機体もいくつかは使用できる状況になってきているようですよ。特に新型の艦戦と艦爆は、間もなく我々のところにも配備されるんじゃないでしょうか?」
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