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第23章 欧州航空戦
23.2章 Uボート基地爆撃2
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ドーリットル中将は、戦闘機が多ければ多いほど爆撃隊の損害は減少するだろうという単純な原則を尊重していた。そのため、B-29の編隊には120機以上の戦闘機を護衛につけていた。中将の考えの効果が証明されようとしていた。26機のP-47Nがロケット弾を発射するために前方に進出しても、まだ爆撃隊の周囲には多数の直衛戦闘機が残っていた。
Me309Bの編隊が西南西から接近してくると、それを阻止するために、P-51Dの編隊が向かっていった。
第4戦闘機群(4th fighters group)司令のブレイクスリー中佐の指揮下に64機のP-51Dが飛行していた。中佐は、早期警戒機から、ドイツ軍戦闘機接近の通報を受けると、すぐに迎撃を命令した。
「南東の敵編隊を攻撃する。新型メッサーシュミットの編隊だ」
司令官の命令に従って、P-51D編隊は、Me309Bの飛行方向に向けてどんどん加速していった。相手の戦力を冷静に観察していたブレイクスリー中佐は、自分達が有利だと判断した。
(ざっと見たところ、新型メッサーシュミットの数は40機を超える程度のようだ。機数ではこちらが多い)
既に、P-51DはB-29の護衛として新型のドイツ軍戦闘機との戦闘経験がある。ブレイクスリー中佐は、互角の戦いだったと考えていた。それが正しいならば、数が多い方が優勢になるはずだ。
多数のMe309BとP-51Dの空戦は、すぐに乱戦模様になった。この高度では、個々の機体の性能はほぼ同じだったが、48機のMe309Bに対して、護衛のP-51Dは64機の大部隊だった。中佐が想定したように、数で勝るアメリカ側の戦闘機が次第に圧倒してゆく。
ビューリゲン大尉は、なんとかマスタングとの空戦から抜け出して、後方の爆撃機に接近したかった。しかし、多数のアメリカ軍戦闘機が立ちふさがっているので、とてもB-29を攻撃できない。しかも大型機を攻撃するために翼下に8発のR4Mロケットを搭載していたのが、この時は裏目に出た。爆撃機に対してロケット弾の発射態勢をとる前に、護衛戦闘機との戦いに巻き込まれてしまったのだ。小型のロケット弾と言えども、クリーンな状態に比べれば性能が低下しているはずだ。
(圧倒的にアメリカ軍戦闘機の数が多い。このままでは我々の任務の達成は不可能だ)
不利になった戦闘状況から、ビューリゲン大尉はロケット発射の命令を下した。
「各機、R4Mを発射せよ。敵機に命中しなくてもかまわん。ミサイルを発射して機体を軽くするんだ」
大尉の命令に従って、至るところでMe309Bが翼下のロケット弾を発射した。もちろん、運動性の良好な戦闘機に対して、遠距離から発射された非誘導のロケット弾は、アメリカ軍機に命中することはない。
一方、JG2のMe309Bよりも先に上昇してB-29編隊に取り付こうとしていたガイスハルト大尉のTa152H編隊は、ガブレスキー中佐が指揮している40機近くのP-47N編隊により、行く手を阻まれていた。ここでも数の差でアメリカ軍戦闘機が有利に戦闘を進めていた。
しかし、次の瞬間、南東から彗星のような速さで12機の高速機が上昇してきた。あっという間に、戦闘中のP-51Dの東側を通り過ぎてゆく。
P-51Dと戦闘していたビューリゲン大尉も特徴的な外形の戦闘機を目撃していた。彼は双発のジェット戦闘機が、ドイツ国内で開発されているといううわさを聞いたことがあった。
(左右の主翼下にプロペラのないエンジンをぶら下げている機体は、メッサーシュミットが開発していたジェット戦闘機だ。緩い後退角を有する主翼が、この機体の高性能を示しているようだ)
……
ノヴォトニー大尉は、262実験隊に配備されたばかりの機体に搭乗して、ジェットエンジンの機体の訓練を一通り終えた部下を率いて出撃してきていた。ノヴォトニーの部隊はまだ実験部隊なので、ドイツ北部のアハマー基地を離陸したのはわずか12機だった。機数は少ないが、大尉はジェット戦闘機の性能ならば、護衛の戦闘機をかわして爆撃機への攻撃が可能だと信じていた。
「アメリカ戦闘機を全速で引き離すぞ。我々が相手をするのは、その後方を飛行している大型の4発爆撃機だ」
後続のブレイ中尉からすぐに返事がある。
「11時方向、やや同高度に爆撃機の編隊。12時方向、マスタングの編隊に注意が必要です」
上昇しながらもMe262は750km/hを超えていた。Me262の編隊は爆撃機よりもやや高い高度に達してからは、水平飛行で850km/h以上に加速していた。
ブレイクスリー中佐には、既にレーダー搭載の警戒型B-29から緊急連絡が入っていた。
「北東方向から新たな編隊が接近してくる。かなりの高速で編隊に接近中だ。既に10マイル(16km)以内だ」
わざわざ警告されなくとも、中佐も自分の目で奇妙な外形の双発機が飛行しているのを確認していた。爆撃編隊の東側を北方に向けて、双発機が今まで見たこともないような速度で飛行してゆく。B-29編隊の東側を飛行してから、後方に回り込もうとしているのだ。
ブレイクスリー中佐も、機首をやや下げ気味にして、マーリンエンジンの水噴射を開始した。中佐に続いていたのは、Me309Bとの戦闘から抜けてきた18機のP-51Dだった。本来であれば、12機のドイツ軍戦闘機の攻撃を防ぐことのできる数だ。
しかし、加速したにもかかわらず、敵機との距離は全く縮まらない。それどころか、次第に引き離されてゆく。P-51Dはエンジンを緊急出力にしたが、それでもMe262の方が100km/h近く高速だった。操縦席の中でブレイクスリー中佐は舌打ちしていた。
(圧倒的にジェット戦闘機の方が速いぞ。これじゃあ爆撃隊を護衛できない)
ノヴォトニー大尉は、B-29編隊の北側に達すると、左に旋回して機首を爆撃編隊に向けた。
「まずロケット弾で攻撃せよ。接近戦に持ち込む前に、R4Mで攻撃だ」
大尉の命令により、Me262は両翼下に搭載していたR4Mを一斉に発射した。12機のMe262はそれぞれが同一の機体を狙わないように、広く散開していた。Me262が搭載していた24発のR4Mロケット弾は、非誘導のロケット弾だったが、わずかずつ角度を変えたランチャーのレールに取り付けられていた。このために、約1km飛翔すると、30mの楕円形に広がった。これは大型4発機を取り囲む大きさだ。しかも55mmの弾頭を内蔵しているので、1発でも直撃すればB-29であっても致命傷になる威力を有していた。
ドイツ国内ではロケット弾に近接信管を装備する研究が続けられていたが、高射砲弾よりも口径の小さな弾頭への装備は容易ではない。そのため、直撃弾でなければ弾頭は爆発しない。
B-29の編隊に向けて288発のロケット弾が飛翔していった。12機が狙った爆撃機のうちの10機にミサイルが直撃した。巨大な破孔が胴体と主翼に開口して、さすがのB-29もあっという間に墜落してゆく。中には複数のロケット弾が命中して、一瞬でバラバラになった機体もある。
飛翔してゆくロケット弾を追いかけるように、ノヴォトニー大尉は部隊を降下させた。降下により、最高速度に近づいた速度が更に加速してゆく。接近するとB-29の銃座から射撃が始まったが、900km/hを超える速度に達したMe262に対しては、ジャイロ付き照準器でも命中率が低下した。高速を生かして防御銃を回避しようと考えていた大尉の狙い通りだ。
大尉の機体は、B-29の後方でやや低い位置まで降下すると、一旦機首を上に向けた。上昇に転じたおかげで速度が徐々に落ちてくる。Me262自身が照準するためにも、降下で音速近くまで加速したままでは都合が悪い。B-29の後方で、一度沈み込んだMe262が浮かび上がるように同じ高度に昇ると、4門の30mm機銃を射撃した。Mk108機関砲の30mm弾は威力があるが、初速が低いので命中させるために接近する必要があるのが欠点だ。
一瞬、尾部から接近してくるMe262をB-29の尾部銃座も射線に捉えて激しく反撃する。B-29の尾部銃座にはイスパノスイザ20mmと2挺のブローニング12.7mmが装備されていた。ノヴォトニー大尉は、距離を詰めて一撃だけ射撃すると、すぐに機体を滑らせてB-29の防御銃火を回避した。
ベテランのノヴォトニー大尉は、短い連射でも数発を命中させた。爆裂弾頭(Mine shell)の30mm弾は、胴体と主翼付け根で爆発して1m以上の穴をあけた。B-29は炎を噴き出して機首を急速に下げていった。隣の機体も主翼内のガソリンに引火して、炎を引きながら徐々に高度を下げていった。
ブレイ中尉のMe262から射撃されたB-29は、30mm弾を浴びて、後部胴体にいくつもの破孔が開口すると共に尾翼が吹き飛んだ。機体がゆっくりと裏返しになると、胴体後部が折れ曲がって、墜落していった。
別のMe262編隊は、西側のB-29を攻撃していた。最初の攻撃で胴体中央部から右翼にかけて30mm弾を命中させた。しかし、続く2番機はしっかり照準しようとして速度を落として連射を続けたので旋回が遅れた。B-29の尾部銃手は、射撃のために速度を落として直線飛行したジェット戦闘機を見逃さなかった。近距離から射撃された20mmと12.7mmがMe262の機首から胴体にかけて命中した。さすがのMe262もがくりと機首を落としてそのまま墜落してゆく。
ほぼ同時に、攻撃されたB-29も主翼から激しく炎を噴き出して、地上に向けて墜落していった。
高速でB-29編隊の西側に抜けると、ノヴォトニー大尉は残燃料を確認した。油断しているとすぐに燃料がなくなるのがジェット機の大きな欠点の一つだ。
「燃料はまだ残っている。もう一度攻撃するぞ」
水平旋回でB-29編隊の後方に戻ってくると、11機が横一列になって先程と同じ要領で攻撃した。Me262からの連続攻撃にさらされて、B-29も6機が更に撃墜された。炎の尾を引きながらきりもみになって墜ちてゆく。
ノヴォトニー262実験隊は、ロケット弾攻撃による10機も合わせて、最終的に22機のB-29を撃墜した。まさにジェット戦闘機の恐るべき威力が実証された。
Me262の編隊はアメリカ爆撃機を次々に攻撃して、燃料を消費したところで引き上げていった。この間、P-47NとP-51Dが後方から追いかけていったが、爆撃隊の周囲を850km/h超の速度で飛行するジェット戦闘機を全く捕捉できなかった。11機のジェット戦闘機は南南東に去っていった。
……
メンフィスベルは、前回の攻撃作戦で使い物にならなくなった1番エンジンをそっくり交換して、主翼の被害カ所への修理も終えて、今回の作戦に参加していた。この爆撃部隊では、コンバットボックスの前方位置を指示されていた。
尾部銃手のクインラン軍曹は、ドイツ軍のプロペラのない戦闘機による攻撃を実況中継のように伝えていた。
「ドイツ軍の高速戦闘機は見えなくなりました。友軍のB-29はかなりの数がやられたようです。嵐のような攻撃は終わったと思います」
しかし、モーガン大尉は、彼らにとっての第2の試練が、まだ待ち構えていることを知っていた。爆撃隊の侵入を地上のドイツ軍が指をくわえてみているはずがない。
「油断するな。これから対空ミサイルと高射砲が我々を出迎えてくるはずだ」
そろそろだと思っていたところで、通信士が隊長機からの命令を伝えてきた。
「電波妨害手段の発射命令です。爆撃隊指揮官のルメイ大佐から発出されました。ウィンドウ弾を搭載しているAチームの機体は事前に決めた位置から発射せよとのことです」
それを聞いて、すぐに爆撃手のエバンズ大尉が報告してくる。
「本機は、指定されたコンバットボックスの前方編隊で飛行しています。予定通りの位置です」
モーガン大尉は、計器盤に張り付けたメモをちらりと見て、メンフィスベルがAチームに所属しているのを念のために確認した。
「いいだろう。ウィンドウ弾を発射せよ。気前よく全弾ぶっ放せ」
メンフィスベルは、爆弾倉扉を開くと、尾翼を備えたやや細長い爆弾型のカプセルを次々と投下した。B-29が投下した16基のカプセルは、機体からやや離れたところで、固体推進剤に点火すると前方に向けて飛んでいった。固体推進と言っても3基の5インチロケット弾の推進部をカプセルの後方に取り付けただけの間に合わせのロケットエンジンだ。爆撃編隊の前下方にウィンドウの雲を確実に作り出すために、きわめて短期間で開発した兵器だった。
ウィンドウの散布弾を発射したのは、編隊の前方に位置していた10機のB-29だった。これらの機体は、爆弾倉内の1,000ポンド(454kg)爆弾を10発に減らして、その代わりに16発のウィンドウ散布用のロケット弾を搭載していた。
一斉に発射された160発のロケット弾は、5マイル(8km)ほど前方に飛翔すると、タイマーが作動して火薬が頭部のカバーを吹きとばした。爆弾に匹敵する大直径の弾頭内には、P-47Nが発射したロケット弾とは比較にならないほど大量のウィンドウが内蔵されていた。多数のカプセルが飛散すると、金属箔の大きな雲がB-29編隊の前面に広がることになった。
機体の前方でチカチカと光が見えて、薄い灰色の雲が広がってゆくのをモーガン大尉は見つめていた。
(どうか、ドイツ軍の攻撃から我々を守ってくれよ)
Me309Bの編隊が西南西から接近してくると、それを阻止するために、P-51Dの編隊が向かっていった。
第4戦闘機群(4th fighters group)司令のブレイクスリー中佐の指揮下に64機のP-51Dが飛行していた。中佐は、早期警戒機から、ドイツ軍戦闘機接近の通報を受けると、すぐに迎撃を命令した。
「南東の敵編隊を攻撃する。新型メッサーシュミットの編隊だ」
司令官の命令に従って、P-51D編隊は、Me309Bの飛行方向に向けてどんどん加速していった。相手の戦力を冷静に観察していたブレイクスリー中佐は、自分達が有利だと判断した。
(ざっと見たところ、新型メッサーシュミットの数は40機を超える程度のようだ。機数ではこちらが多い)
既に、P-51DはB-29の護衛として新型のドイツ軍戦闘機との戦闘経験がある。ブレイクスリー中佐は、互角の戦いだったと考えていた。それが正しいならば、数が多い方が優勢になるはずだ。
多数のMe309BとP-51Dの空戦は、すぐに乱戦模様になった。この高度では、個々の機体の性能はほぼ同じだったが、48機のMe309Bに対して、護衛のP-51Dは64機の大部隊だった。中佐が想定したように、数で勝るアメリカ側の戦闘機が次第に圧倒してゆく。
ビューリゲン大尉は、なんとかマスタングとの空戦から抜け出して、後方の爆撃機に接近したかった。しかし、多数のアメリカ軍戦闘機が立ちふさがっているので、とてもB-29を攻撃できない。しかも大型機を攻撃するために翼下に8発のR4Mロケットを搭載していたのが、この時は裏目に出た。爆撃機に対してロケット弾の発射態勢をとる前に、護衛戦闘機との戦いに巻き込まれてしまったのだ。小型のロケット弾と言えども、クリーンな状態に比べれば性能が低下しているはずだ。
(圧倒的にアメリカ軍戦闘機の数が多い。このままでは我々の任務の達成は不可能だ)
不利になった戦闘状況から、ビューリゲン大尉はロケット発射の命令を下した。
「各機、R4Mを発射せよ。敵機に命中しなくてもかまわん。ミサイルを発射して機体を軽くするんだ」
大尉の命令に従って、至るところでMe309Bが翼下のロケット弾を発射した。もちろん、運動性の良好な戦闘機に対して、遠距離から発射された非誘導のロケット弾は、アメリカ軍機に命中することはない。
一方、JG2のMe309Bよりも先に上昇してB-29編隊に取り付こうとしていたガイスハルト大尉のTa152H編隊は、ガブレスキー中佐が指揮している40機近くのP-47N編隊により、行く手を阻まれていた。ここでも数の差でアメリカ軍戦闘機が有利に戦闘を進めていた。
しかし、次の瞬間、南東から彗星のような速さで12機の高速機が上昇してきた。あっという間に、戦闘中のP-51Dの東側を通り過ぎてゆく。
P-51Dと戦闘していたビューリゲン大尉も特徴的な外形の戦闘機を目撃していた。彼は双発のジェット戦闘機が、ドイツ国内で開発されているといううわさを聞いたことがあった。
(左右の主翼下にプロペラのないエンジンをぶら下げている機体は、メッサーシュミットが開発していたジェット戦闘機だ。緩い後退角を有する主翼が、この機体の高性能を示しているようだ)
……
ノヴォトニー大尉は、262実験隊に配備されたばかりの機体に搭乗して、ジェットエンジンの機体の訓練を一通り終えた部下を率いて出撃してきていた。ノヴォトニーの部隊はまだ実験部隊なので、ドイツ北部のアハマー基地を離陸したのはわずか12機だった。機数は少ないが、大尉はジェット戦闘機の性能ならば、護衛の戦闘機をかわして爆撃機への攻撃が可能だと信じていた。
「アメリカ戦闘機を全速で引き離すぞ。我々が相手をするのは、その後方を飛行している大型の4発爆撃機だ」
後続のブレイ中尉からすぐに返事がある。
「11時方向、やや同高度に爆撃機の編隊。12時方向、マスタングの編隊に注意が必要です」
上昇しながらもMe262は750km/hを超えていた。Me262の編隊は爆撃機よりもやや高い高度に達してからは、水平飛行で850km/h以上に加速していた。
ブレイクスリー中佐には、既にレーダー搭載の警戒型B-29から緊急連絡が入っていた。
「北東方向から新たな編隊が接近してくる。かなりの高速で編隊に接近中だ。既に10マイル(16km)以内だ」
わざわざ警告されなくとも、中佐も自分の目で奇妙な外形の双発機が飛行しているのを確認していた。爆撃編隊の東側を北方に向けて、双発機が今まで見たこともないような速度で飛行してゆく。B-29編隊の東側を飛行してから、後方に回り込もうとしているのだ。
ブレイクスリー中佐も、機首をやや下げ気味にして、マーリンエンジンの水噴射を開始した。中佐に続いていたのは、Me309Bとの戦闘から抜けてきた18機のP-51Dだった。本来であれば、12機のドイツ軍戦闘機の攻撃を防ぐことのできる数だ。
しかし、加速したにもかかわらず、敵機との距離は全く縮まらない。それどころか、次第に引き離されてゆく。P-51Dはエンジンを緊急出力にしたが、それでもMe262の方が100km/h近く高速だった。操縦席の中でブレイクスリー中佐は舌打ちしていた。
(圧倒的にジェット戦闘機の方が速いぞ。これじゃあ爆撃隊を護衛できない)
ノヴォトニー大尉は、B-29編隊の北側に達すると、左に旋回して機首を爆撃編隊に向けた。
「まずロケット弾で攻撃せよ。接近戦に持ち込む前に、R4Mで攻撃だ」
大尉の命令により、Me262は両翼下に搭載していたR4Mを一斉に発射した。12機のMe262はそれぞれが同一の機体を狙わないように、広く散開していた。Me262が搭載していた24発のR4Mロケット弾は、非誘導のロケット弾だったが、わずかずつ角度を変えたランチャーのレールに取り付けられていた。このために、約1km飛翔すると、30mの楕円形に広がった。これは大型4発機を取り囲む大きさだ。しかも55mmの弾頭を内蔵しているので、1発でも直撃すればB-29であっても致命傷になる威力を有していた。
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飛翔してゆくロケット弾を追いかけるように、ノヴォトニー大尉は部隊を降下させた。降下により、最高速度に近づいた速度が更に加速してゆく。接近するとB-29の銃座から射撃が始まったが、900km/hを超える速度に達したMe262に対しては、ジャイロ付き照準器でも命中率が低下した。高速を生かして防御銃を回避しようと考えていた大尉の狙い通りだ。
大尉の機体は、B-29の後方でやや低い位置まで降下すると、一旦機首を上に向けた。上昇に転じたおかげで速度が徐々に落ちてくる。Me262自身が照準するためにも、降下で音速近くまで加速したままでは都合が悪い。B-29の後方で、一度沈み込んだMe262が浮かび上がるように同じ高度に昇ると、4門の30mm機銃を射撃した。Mk108機関砲の30mm弾は威力があるが、初速が低いので命中させるために接近する必要があるのが欠点だ。
一瞬、尾部から接近してくるMe262をB-29の尾部銃座も射線に捉えて激しく反撃する。B-29の尾部銃座にはイスパノスイザ20mmと2挺のブローニング12.7mmが装備されていた。ノヴォトニー大尉は、距離を詰めて一撃だけ射撃すると、すぐに機体を滑らせてB-29の防御銃火を回避した。
ベテランのノヴォトニー大尉は、短い連射でも数発を命中させた。爆裂弾頭(Mine shell)の30mm弾は、胴体と主翼付け根で爆発して1m以上の穴をあけた。B-29は炎を噴き出して機首を急速に下げていった。隣の機体も主翼内のガソリンに引火して、炎を引きながら徐々に高度を下げていった。
ブレイ中尉のMe262から射撃されたB-29は、30mm弾を浴びて、後部胴体にいくつもの破孔が開口すると共に尾翼が吹き飛んだ。機体がゆっくりと裏返しになると、胴体後部が折れ曲がって、墜落していった。
別のMe262編隊は、西側のB-29を攻撃していた。最初の攻撃で胴体中央部から右翼にかけて30mm弾を命中させた。しかし、続く2番機はしっかり照準しようとして速度を落として連射を続けたので旋回が遅れた。B-29の尾部銃手は、射撃のために速度を落として直線飛行したジェット戦闘機を見逃さなかった。近距離から射撃された20mmと12.7mmがMe262の機首から胴体にかけて命中した。さすがのMe262もがくりと機首を落としてそのまま墜落してゆく。
ほぼ同時に、攻撃されたB-29も主翼から激しく炎を噴き出して、地上に向けて墜落していった。
高速でB-29編隊の西側に抜けると、ノヴォトニー大尉は残燃料を確認した。油断しているとすぐに燃料がなくなるのがジェット機の大きな欠点の一つだ。
「燃料はまだ残っている。もう一度攻撃するぞ」
水平旋回でB-29編隊の後方に戻ってくると、11機が横一列になって先程と同じ要領で攻撃した。Me262からの連続攻撃にさらされて、B-29も6機が更に撃墜された。炎の尾を引きながらきりもみになって墜ちてゆく。
ノヴォトニー262実験隊は、ロケット弾攻撃による10機も合わせて、最終的に22機のB-29を撃墜した。まさにジェット戦闘機の恐るべき威力が実証された。
Me262の編隊はアメリカ爆撃機を次々に攻撃して、燃料を消費したところで引き上げていった。この間、P-47NとP-51Dが後方から追いかけていったが、爆撃隊の周囲を850km/h超の速度で飛行するジェット戦闘機を全く捕捉できなかった。11機のジェット戦闘機は南南東に去っていった。
……
メンフィスベルは、前回の攻撃作戦で使い物にならなくなった1番エンジンをそっくり交換して、主翼の被害カ所への修理も終えて、今回の作戦に参加していた。この爆撃部隊では、コンバットボックスの前方位置を指示されていた。
尾部銃手のクインラン軍曹は、ドイツ軍のプロペラのない戦闘機による攻撃を実況中継のように伝えていた。
「ドイツ軍の高速戦闘機は見えなくなりました。友軍のB-29はかなりの数がやられたようです。嵐のような攻撃は終わったと思います」
しかし、モーガン大尉は、彼らにとっての第2の試練が、まだ待ち構えていることを知っていた。爆撃隊の侵入を地上のドイツ軍が指をくわえてみているはずがない。
「油断するな。これから対空ミサイルと高射砲が我々を出迎えてくるはずだ」
そろそろだと思っていたところで、通信士が隊長機からの命令を伝えてきた。
「電波妨害手段の発射命令です。爆撃隊指揮官のルメイ大佐から発出されました。ウィンドウ弾を搭載しているAチームの機体は事前に決めた位置から発射せよとのことです」
それを聞いて、すぐに爆撃手のエバンズ大尉が報告してくる。
「本機は、指定されたコンバットボックスの前方編隊で飛行しています。予定通りの位置です」
モーガン大尉は、計器盤に張り付けたメモをちらりと見て、メンフィスベルがAチームに所属しているのを念のために確認した。
「いいだろう。ウィンドウ弾を発射せよ。気前よく全弾ぶっ放せ」
メンフィスベルは、爆弾倉扉を開くと、尾翼を備えたやや細長い爆弾型のカプセルを次々と投下した。B-29が投下した16基のカプセルは、機体からやや離れたところで、固体推進剤に点火すると前方に向けて飛んでいった。固体推進と言っても3基の5インチロケット弾の推進部をカプセルの後方に取り付けただけの間に合わせのロケットエンジンだ。爆撃編隊の前下方にウィンドウの雲を確実に作り出すために、きわめて短期間で開発した兵器だった。
ウィンドウの散布弾を発射したのは、編隊の前方に位置していた10機のB-29だった。これらの機体は、爆弾倉内の1,000ポンド(454kg)爆弾を10発に減らして、その代わりに16発のウィンドウ散布用のロケット弾を搭載していた。
一斉に発射された160発のロケット弾は、5マイル(8km)ほど前方に飛翔すると、タイマーが作動して火薬が頭部のカバーを吹きとばした。爆弾に匹敵する大直径の弾頭内には、P-47Nが発射したロケット弾とは比較にならないほど大量のウィンドウが内蔵されていた。多数のカプセルが飛散すると、金属箔の大きな雲がB-29編隊の前面に広がることになった。
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颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。
ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。
また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。
その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。
この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。
またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。
この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず…
大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。
【重要】
不定期更新。超絶不定期更新です。
超量産艦隊
ypaaaaaaa
歴史・時代
海軍内では八八艦隊の議論が熱を帯びていた頃、ある一人の天才によって地味ではあるが大きく日本の未来を変えるシステムが考案された。そのシステムとは、軍艦を一種の”箱”と捉えそこに何を詰めるかによって艦種を変えるという物である。海軍首脳部は直ちにこのシステムの有用性を認め次から建造される軍艦からこのシステムを導入することとした。
そうして、日本海軍は他国を圧倒する量産性を確保し戦雲渦巻く世界に漕ぎ出していく…
こういうの書く予定がある…程度に考えてもらうと幸いです!
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