電子の帝国

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第23章 欧州航空戦

23.3章 Uボート基地爆撃3

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 アメリカ軍の爆撃隊が侵攻を探知してからドイツ北方の防空部隊は全て戦闘配備についていた。シュトルム大尉の対空ミサイル中隊はヤーデ湾をはさんでヴィルヘルムスハーフェンの東側に展開していた。北部ドイツには、港湾や工業都市など、重要な地域がいくつも存在する。彼は、連合軍はこれらの地区を、再び攻撃してくると信じていた。

 ユトランド半島の付け根を目指して、連合軍の編隊が飛行してきているとの報告が既に入ってきていた。前回の攻撃時とは異なり、ミサイルの有効性が証明されたおかげで、部隊の数は増えていた。ライン・トホターの生産も進んで、エーデ湾周辺を守備している対空ミサイル部隊は4個中隊になっていた。

 対空ミサイル用のレーダーが爆撃隊を探知したとの報告が、シュトルム大尉に上がってきた。
「友軍機ではないな? 射程には入っているか?」

「間違いなく敵編隊。レーダーに反射映像が出てきました。まもなくライン・トホターの射程に入ります」

 しばらく待って、アメリカ編隊が対空ミサイルの射程に入ったのを確認すると、大尉は発射を命じた。
「アントンとベルタ2基連続で発射!」

 轟音とともに、列車上の発射機から2基のライン・トホターが激しく白煙を引きながら上昇していった。ところが、ミサイル発射直後にレーダー手が異常を報告してきた。
「爆撃隊の前方に電波の反射領域が出現しています。どうも電波を反射しているようです」

 シュトルム大尉はレーダー表示管の後ろまで歩いていって、自分の目で反射波の表示を確認した。
「確かに正常な反射映像ではないな。おそらく、金属箔によってレーダーを妨害したのだと思う。これだけ広い範囲で電波が反射しているというのは、かなり大量に金属箔をばらまいたのだろう。電波の反射源に向かってゆく我々のミサイルも狙いが不正確になるかも知れないぞ。レーダーの設定変更をいろいろ試してくれ。悪影響を減らせる可能性がある。次のミサイル発射はしばらく延期だ」

 続いて、大尉は、通信士に向かって命令した。
「電波反射雲で連合軍がレーダーを欺瞞したことを防空司令部に報告してくれ。これだけ大規模な妨害ならば、他の対空ミサイル中隊も少なからず影響を受けているだろう。それを知らずにミサイルを発射したら、無駄遣いになりかねない。司令部から命令を発してもらう必要がある」

 ……

 メンフィスベルに搭乗していた爆撃手のエバンズ大尉は、最も視界の良い機首の先端部から、白煙を引いて上昇して来るミサイルを発見していた。
「13時方向、下方から2発のミサイル。但し、我々には向かってきていません」

 モーガン大尉もすぐにミサイルの白煙を発見していた。地上から伸びてきた白煙は前方のやや下の方で爆発した。それが引き金になったかのように、金属箔の雲の中で数発のオレンジ色の火炎が次々と輝いた。

「機長だ。とりあえず第1陣のミサイル攻撃は、ウィンドウの雲が防いでくれたようだ。我々の作戦は上手くいっている。しかし、油断するな。まだドイツ軍の攻撃は続くぞ」

 やがてミサイルの爆発よりも小さなオレンジ色の光と黒煙が空に浮かび始めた。高射砲で撃たれているのだ。わざわざ説明しなくても、メンフィスベルの全ての搭乗員がその光景が何を意味しているのか理解していた。対空射撃にもウィンドウは有効なようで、まだ、高射砲弾は遠いところで爆発している。それでも、時間の経過とともに、高射砲弾の爆炎はB-29編隊に次第に近づいてきた。

 モーガン大尉にもその理由はよくわかった。
(まずいな。ウィンドウの密度が薄くなってきているぞ)

 機長の心配を見透かしたかのように、次の命令が発出された。
「ルメイ大佐から、Bチーム宛てにウィンドウ弾を発射するように命令が出ました」

 今回はメンフィスベルの隣を飛行していたB-29が、爆弾倉の扉を開くと、ウィンドウ弾を発射した。ドーリットルの司令部は、ウィンドウの雲が薄くなることを想定して、多段階で欺瞞弾を発射する作戦を計画していたのだ。

 ……

 2基のミサイルが、爆撃機に達する前に空中で爆発したのをシュトルム大尉は双眼鏡を使って確認した。もちろん、命中していない。彼は、すぐにレーダーの反射波を映し出している3つの表示管に視線を落とした。電波反射の変化を観察するために、表示管をしばらくの間注視していた。そのおかげで、徐々に金属箔の反射が減少してきているのを見逃さなかった。
「金属箔が薄れてきたぞ。カエサルとドーラを発射せよ。大丈夫だ。この調子ならば飛行している間にも雲の密度は小さくなるだろう」

 メンフィスベルの隣の機体がウィンドウを格納したロケット弾を発射するのと、下方からミサイルが飛来してくるのはほぼ同時だった。メンフィスベルの操縦席からも白い煙の尾を引きながら上昇してくるミサイルがよく見えた。ミサイルの飛翔経路から、モーガン大尉は自分たちの機体を狙っていると判断した。

「下方からミサイルが上昇してくる。急速回避だ。みんな何かにつかまれ!」

 モーガン大尉は、大声をあげながらメンフィスベルを左側に滑らせた。とても大型の4発機には許されないような急激な機動だ。しかも、コンバットボックス内では隣接する機体に接触する可能性すらある。機体のどこかからミシミシという不気味な音が聞こえてきた。

 音速に近い速度で上昇してきたミサイルは、メンフィスベルの隣を飛行していたB-29に接近すると近接信管を作動させた。左翼の至近で爆圧を受けたB-29は、主翼の3割程度が折れ曲がるとゆっくりと螺旋を描いて墜ちていった。

 きりもみになると、爆撃機の中では強い遠心力のおかげで、搭乗員の脱出が困難になる。しかし、胴体の側面に開口した破孔からぽろぽろと人が飛び出してくると、空中に5つの落下傘が開いた。半数の搭乗員の命は助かったわけだ。

 それでも、2度目のウィンドウの散布により、再び金属箔の雲ができて、多数のミサイルが飛んでくることはなくなった。ミサイルが上昇してきても7割以上は早期爆発してしまう。ミサイルと対空砲火によりB-29は、更に3機が撃墜されたが、Uボートの基地が眼下に見えてきた。

 爆撃隊が、ヴィルヘルムスハーフェンのUボート基地に近づくと、ミサイルに変わり高射砲の弾幕が激しくなった。それもウィンドウのおかげで、照準が甘くなっているのだろう。命中率はかなり低くなっている。

 しかし、B-29が爆撃コースに入ってからは、徐々に金属箔の雲が薄れてきた。さすがにこれ以上発射するウィンドウ弾は残っていなかった。

 ……

 Uボート基地がアメリカ軍の爆撃目標になっている可能性があると聞いて、U-181は急遽、ヴィルヘルムスハーフェンから出港していた。次の作戦に備えた補給作業の途中だったが、強引にそれを中断してヤーデ湾へ脱出してきたのだ。

 対空ミサイル搭載作業が完了して、改修後の試験航海を終えて帰ってきたばかりのU-196は、接岸したところで爆撃機が接近していることを聞かされた。結局、U-181に続いてU-196もヤーデ湾に向けて進むことになった。2隻のUボートは前後に縦列になって、浮上したまま湾内をゆっくりと北東に進んでいた。

「レーダーで北西から接近する大編隊を探知しました。アメリカ軍が電波妨害をしているようであまり感度がよくありませんが、何とか位置は判別できます」

 セイルに上って操艦をしていた艦長のリュート少佐が待っていた報告がレーダー手から上がってきた。

「おも舵だ。戦尾を北西方向に向けよ」

 一瞬、総舵手は湾の奥へ逃げるのかと思ったが、そんなことは口に出さず命令に従った。しかし、次の命令で自分の解釈が間違っていたとわかった。

「Hs177の射撃準備。2基をアメリカ軍爆撃機に向けて発射する」

 方向転換したUボート艦尾の格納筒が、攻撃を仕掛ける蛇のように持ち上がった。しばらくして、レーダ手が再び報告してくる。
「反射電波の強度増大。これならば、当たらんことはないと思われます」

「それで、十分だ。対空ミサイル発射!」

 リュート少佐の大声の命令に従って、2発のHs177シュメッタリンクがⅨD2型Uボートの船体後部から発射された。やや、西南の海上では、U-196が同様に2発のHs177を発射している。湾に出てくるときにU-181のリュート艦長からU-196のケントラット少佐は、ミサイルによる迎撃の説明を受けていた。

 もともと、Hs177シュメッタリンクは、艦艇への航空攻撃の阻止を目的として開発された。そのため、高空での航空機攻撃は想定範囲外だった。B-29が飛行している高度10,000mあたりは、対空ミサイルが届くかどうかぎりぎりの高さだ。Uボートの艦長たちもその程度のことは知っていたが、攻撃を躊躇するつもりはなかった。

 U-181は、しばらくして残っていた2基のHs177も発射した。もちろんU-196もそれを見習うように2基のミサイルを発射した。2隻のUボートは、合計で8基の対空ミサイルを発射したことになる。

 ……

 メンフィスベルのモーガン大尉は、円形の湾の海上からミサイルが上昇してくるのを発見した。それも1発ではなく、複数の対空ミサイルが、白い尾を引きながら上昇してくる。
「対空ミサイルが、下方から上昇してくる。注意せよ」

 しかし、注意を促す以外にできることはなかった。既に、メンフィスベルは爆撃コースに入っていた。ノルデン爆撃照準器の指示で、飛行コースを微修正する以外、直線飛行しかできない。

 下方から上昇してきたミサイルは、メンフィスベルよりも前方を飛行していたB-29の至近で爆発した。ミサイルの飛翔経路を追いかけていた前部銃手のロッホ軍曹が、報告してきた。
「司令官機の近くでミサイルが爆発。炎が噴き出しました。ルメイ司令の搭乗した機体が、裏返しになって墜落してゆきます」

 その言葉が終わらないうちに、今度はメンフィスベルの後方でもう1発が爆発した。ほぼ同時に爆撃手のエバンズ大尉が叫んだ。
「爆弾投下。これ以降、回避運動可能」

 ……

 高射砲と対空ミサイルからの攻撃を受けながら、引き返したり撃墜された機体を除く73機のB-29は再びヴィルヘルムスハーフェン海軍基地を爆撃した。南側に残っていたUボートのブンカーと南西側の基地施設が目標となった。1発の直撃に耐えた数メートルのコンクリート防御も続けて命中した10,000ポンド(4.5トン)爆弾によって破壊された。湾岸の建築物や兵舎にも次々と爆弾が命中した。燃料タンクに命中した爆弾により火災が発生して真っ赤な炎と黒煙が立ち上ってきた。

 ブンカーからやや離れたところにあった分厚いべトンで厳重に防御された弾薬庫には、12発の10,000ポンド(4.5トン)誘導弾が投下された。5発が弾薬庫上部のべトンに直撃すると3発が貫通した。弾薬庫内部の弾薬が誘爆して、爆弾とは比べ物にならない爆雲が立ち上った。

 尾部銃座のクインラン軍曹は編隊の後方で地上から大きな爆煙が立ち上るのを目撃していた。
「地上で大爆発が起こっています。巨大なキノコ雲が立ち上りました。おそらく弾薬庫が爆発したのです」

 モーガン機長はその言葉を聞いて、少しばかりほっとしていた。
(弾薬庫とその周囲の建物が吹き飛んでしまえば、この基地の利用価値はほとんどなくなるに違いない。我々が犠牲を払っても攻撃しただけの価値はあったというわけだ)

 ……

 U-196のケントラット艦長が無線電話でリュート少佐に話しかけてきた。
「2発が命中したようです。我々にできることはこれ以上ありません」

「ああ、ささやかな反撃だったが、シュメッタリンクが2発命中しただけでも良しとしよう。しかし、基地の方はとても穏やかじゃない状況になっているな」

 潜水艦のセイルの上からも、爆撃を受けて炎と黒煙を激しく立ち上らせている基地の様子がわかった。艦長たちの顔面がオレンジ色の炎に照らされている。

 2隻のUボートは翌日まで、ヤーデ湾内に留まっていたが、結局キールに回航して補給を受けるように命令された。

 ……

 爆撃隊が帰還するとドーリットルの司令部は、早速作戦の評価を始めた。ハル大佐が、攻撃隊の爆撃後に撮影してきた写真に加えて、作戦直後に飛んだ偵察機の情報も含めて分析してきた。
「Uボート基地のおよそ8割以上を破壊したものと判定します。南西にあった弾薬庫が爆発して周囲数百メートルの範囲を跡形もなく吹き飛ばしています。ブンカーも全て破壊しました。基地の建物は一部が残っていますが、Uボートの整備や補給基地としては使い物にならないのは確実です」

 続いて、キャッスル少佐が爆撃隊の状況を報告する。
「機材の不調により早期に引き返した11機を除外すると、イングランドを出発した110機のうちの70機が帰ってきています。これには被害により途中で引き返した機体も含みます。3割を大きく超える被害ですが、多数の護衛戦闘機と多量のウィンドウを散布する作戦は、一定の効果があったものと判断します」

 キャッスル少佐は、一度言葉を切ってから、ドーリットル中将の顔を見ながら、聞き逃さないように話す速度を落とした。
「ルメイ大佐の機体が、Uボート基地上空で撃墜されました。周囲を飛行していた複数のB-29から墜落の様子が目撃されていますので、間違いありません。なおパラシュートが開くのは目撃されていません」

「そうか」

 しばらくの沈黙の後、再びドーリットル中将が重くなった口を開いた。
「アメリカ本土の彼の家族には私から手紙を出すよ。この打ち合わせが終わってからでよいから、目撃した搭乗員から、撃墜された時の様子を直接聞きたい」

 話題を変えるために中将が向き直ると、キャッスル少佐は不鮮明な写真を前に出しながら説明を続けた。
「ドイツ軍の戦闘機については、未知の新型機が登場しました。写真の機体により、我が軍は甚大な被害を受けています」

 中将は爆撃機から撮影された写真を手に取って、顔を近づけた。
「プロペラがないように見える。これは双発のジェット戦闘機だと考えて、間違いないのだな?」

「ええ、連合国側でも開発が続けられているジェット推進の戦闘機です。目撃証言から、多数の小型ロケット弾と30mm程度の大口径機銃で攻撃を仕掛けてきたのが判明しています。しかも、550マイル/時(885km/h)近い速度で飛行しています。しかも攻撃してきたのはわずかに12機ですが、我が方は22機のB-29が一瞬で撃墜されました」

「12機だったのか。ドイツ軍にとっては、今回はジェット戦闘機の試験的な運用だったのだろう。しかし、これからはどんどん数が増えてくるぞ。私も、ジェット戦闘機の開発が我が国やイギリスで進んでいることは聞いていた。ドイツ軍がそれを数十機単位で迎撃に使用した場合を想像してみてくれ。とんでもない被害が発生するだろう。至急対策を検討してくれ」

 ハル大佐とキャッスル少佐も多数のドイツのジェット戦闘機が戦闘に参加すればとんでもない被害が発生するのは容易に想像できた。それは航空軍の壊滅を意味する。

 ……

 ハル国務長官がイギリス政府からの書類を持ってホワイトハウスにやってきた。航空軍司令官と陸軍参謀長も同行している。
「先般のUボート基地攻撃について、イギリス側は大きな効果があったと評価しています。今後は、B-29による爆撃作戦をもっと強化してくれとの要求です。チャーチル首相が重視しているのはドイツ国内の秘密兵器開発施設です」

 新任のウォレス大統領にとって、古強者のチャーチルからの要求はかなり断りにくい。はっきり言ってあの老獪な紳士は苦手だ。しかも、連合国として重要な工場や新兵器の開発施設を攻撃してドイツ軍の力を低下させたいという要求には誰でも賛成するだろう。作戦が成功すれば間違いなく大きな効果が現れるはずだ。逆に放置すれば、ドイツ軍の攻勢が優勢になって、イギリス本土すらも危ないことになりかねない。

 ウォレス大統領が航空軍司令官の顔を見た。
「イギリスからの要求について、今後の作戦方針を考えてほしい。無理に攻撃すれば被害が拡大するということは私にも想像できる。それでも兵器開発と工場生産を放置すれば、ますます我々が不利になるのだ。それだけドイツは広い領域を支配して国力を増大している。ドイツ軍の兵力を一刻も早く低下させなければならない。これは、大統領としての要求だ」

 すぐに、マーシャル参謀長が答える。
「第8航空軍のB-29は実戦経験も増えて、被害も減少傾向にあります。但し、大きな懸念はドイツ空軍が最近になって登場させたジェット戦闘機です。時速550マイル(885km/h)を超える戦闘機に対して、我々の手持ちの戦闘機では全く太刀打ちできません。ヨーロッパの空では、ジェット戦闘機への対策が必要です」

 ジェット戦闘機の開発状況についてはアーノルド航空軍司令官が答えた。
「我が国もイギリスもジェット戦闘機を開発中です。既に試作機は飛んでいて、工場での量産も始まっているはずです。ロッキードの戦闘機は540マイル/時(869km/h)を記録しており、ドイツ軍のジェット戦闘機と互角以上に戦えます。なお日本については詳しい情報がありません。しかし、日本の対艦ミサイルには小型のジェットエンジンが既に使用されていました。間違いなくジェット戦闘機を開発しているはずです」

「イギリスと日本には、私の名前でジェット戦闘機の開発を加速して早急に実戦配備するように依頼しよう。ロッキードの戦闘機は一刻も早くイギリスに送るように進めてくれ。ジェット戦闘機の実戦配備に対して、政府からの支援が必要ならば、遠慮なく言ってくれ」

 この場で打ち合わせに参加していた全員が、ドイツ本土への爆撃作戦を中断するつもりはなかった。ヒトラーの帝国を屈服させるためには、被害は出ても攻撃を緩めることはできないと承知していた。

 マーシャル参謀総長が話し始めた。
「ドイツ本土攻撃のために発生する被害は、連合国に新たに加わった日本人にも負担してもらう必要があると考えます。日本の航空部隊はイギリスに順次到着しています。先行して配備された部隊では訓練も開始したようです」

 アーノルド大将もその意見に異論はない。
「ドーリットルから、ヨーロッパの航空作戦への日本軍の本格参加を求めてきています。了承ということでよろしいですね? 私としては、日本人の技量であれば、すぐにも攻撃作戦の開始は可能だろうと考えます」

「我々が太平洋の戦いで学んだ重要なことのひとつは、日本軍の実力が想定以上だったということだ。彼らはドイツに対する攻撃も上手くやってくれるだろう。ドイツ本国に対する作戦への参加については、私から近衛首相への我が国からの要求としてすぐに伝える」

 そこまで話して大統領は国務長官を呼び出した。

「ハル長官、日本への要求を書類にしてくれ。要求事項は、ドイツ本国への攻撃作戦に日本軍も参加を促す内容だ。開始時期はできる限り早くを希望する。私の名前で至急出してくれ。なおチャーチルからも同じような要求が発出されるだろうという情報も、口頭でリークするのだ」

 大統領はそこまで話すと、マーシャルやアーノルド将軍たちに向き直った。
「君たちは、日本の海軍と陸軍との間でヨーロッパの作戦が速やかに開始できるように調整してくれ。そういえば大西洋でUボートを鹵獲したという話もあったな。これも速やかに調査結果を報告してほしい」

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