電子の帝国

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第25章 ドイツ本国攻撃作戦

25.4章 日本陸軍の戦闘1

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 我々は、ドイツ軍の赤外線誘導弾に関して情報分析を終えた後に、すぐに別の作業に取り掛かっていた。自分たちが可能性を指摘したドイツ軍から悪意あるプログラムを仕掛けてきた場合の対策が、急を要する問題だと考えていたからだ。

 我々は、既に外部から攻撃を受けた場合、「オモイカネ」上で動作する検出プログラムの原型は開発済みだった。しかし、実際に作業をしてみてわかったのは、検出対象となるプログラムの構造や機能が変化すれば、それに応じて検出手段にも手を加える必要があるということだ。結局のところ、追いかけっこで抜きつ抜かれつような関係になると気づいた。我々は、想定できる範囲で設計済みの検出プログラムに改良を加えたところで、一旦完成とした。もちろん、3カ国が保有するの計算機では圧倒的に早い対処だった。

 我々は並行して、今回の作戦実施の前日まで、更に別の作業を続けていた。「古鷹」の「オモイカネ五型改」を用いて、青軍と赤軍を用いた計算機上での攻撃作戦の再現だった。連合国側の攻撃隊の飛行ルートはほぼ決定していた。一方、偽情報により欺瞞する内容もおおむね決まっている。

 これらの情報を基にして、存在しない攻撃隊やおとり部隊にドイツ軍の迎撃部隊を効果的に誘引するための位置や時間の条件を検証していたのだ。

 2日間の作業で、模擬作戦の結果が出た。まず、実際に航空機を飛行させるおとり部隊が最も早くドイツ本土に接近する。実際に戦闘が始まれば、これらの部隊を要撃したドイツ軍機は他の部隊を迎撃することは不可能だ。次に偽の編隊の出現をドイツ軍の計算機から出力させる。但し、出現位置はおとり部隊よりもやや遠くして、出現時刻もやや遅らせる。実際に迎撃機が飛んでいけば、なにも飛行していないとばれるのは時間の問題だ。その結果、ドイツの戦闘機隊は新たに発見された真の攻撃隊に向かってゆくかも知れない。実際に目標を攻撃する編隊が発見されるであろう時刻よりも偽の部隊は先に出現させなればならない。更に出現位置もやや離さなければ、迎撃目標の変更が可能になってしまうだろう。すなわち、現実のおとり部隊よりも後に出現して、本当の攻撃隊よりも先に発見されるように、計算機からおとりを出現させ、出現位置も適度に離す必要があるわけだ。

 レイトン大佐は計算機が導き出した結果をドーリットルやイギリスと日本の司令部に通知した。厳密に時間調整しても、実戦では、計算機上の模擬戦闘と同じになるとは限らない。それでも、友軍を少しでも有利にするための情報であると考えたからだ。

 ……

 連合国軍合同の攻撃作戦は1943年12月19日の早朝に始まった。攻撃目標はベルリンとその北側の都市、更に北部ドイツの隣りあった2つの都市、最後はスカンジナビア半島南東の工場の5カ所だった。

 作戦開始に先だって、夜明け前から待機していたフランス北部に潜入していたフレミング少佐のところに命令が送られてきた。
「イギリス本土からの信号を受信。作戦開始命令です」

 無線機を操作していたウィーラー中尉が抑えた声で報告した。農園の納屋に隠されたコンピュータには、イギリス本土から送信されてきたドイツ防空司令部をだますための情報が既に格納されていた。特殊作戦執行部の隊員たちはその内容が何であるか、知らされていなかったが、連合軍の大規模な攻勢の一部だということは容易に想像できた。

「指定された時刻になった。ターゲットに向けて欺瞞用の情報を送信する。まあ、大騒ぎになるだろうな」

「情報送信を開始します」

 ウィーラー中尉が端末を操作すると、過去にドイツ軍のコンピュータに潜りこませていたプログラムに向けて新たに出力すべきメッセージの内容となる情報が送られた。
(うまく役割を果たしてくれよ。これ以上、俺達にできることはないのだからな)

 ドイツ軍のコンピュータに繰り返しデータを送信していれば、送信元が逆探知されて、隠れ家が見つかる可能性はどんどん高くなるだろう。
「これからは、周囲の警戒を今まで以上に厳重にする。これで我々が発見される可能性が高まったからな。ドイツ軍コンピュータの通信内容も監視対象だ。ドイツ軍がコンピュータの異常動作に気づいて、原因を探し始めたら要注意だ」

 作戦が開始された時点で、発見された場合の緊急退避の手順は決められていた。装置もろとも納屋を爆破して、フランス国外に脱出するのだ。

 サン・ブリュー近郊の農園の納屋から送信された情報は、レンヌのドイツ空軍基地のコンピュータに潜伏していたプログラムが受け取った。連合国の共同研究者が作成したそのプログラムは、受信した情報を通知文の形式にして、ドイツ空軍の通信ネットワークを経由して、パリの空軍コンピュータに向けて送信した。パリのコンピュータはロッテルダムとアムステルダムのヒンメルベットシステムの一部を構成している基地にデータを送信した。

 ロッテルダムとアムステルダム北側のレーダー基地に備えられたコンピュータにも、ノーフォークの共同研究部隊が作成したプログラムが既に潜入していた。基地のコンピュータは、そのメッセージをドイツ本土の防空を担っている帝国航空艦隊(Luftflotte Reich)の司令部に向けて送信した。

 ……

 潜入した諜報部隊から欺瞞情報が送信されているころ、ロンドン東側のエセックス州の基地から航空機の離陸が始まっていた。

 最初に飛び立ったのは、大型電探を搭載した3機の百式重爆だった。ドイツへと侵攻してゆく陸軍機に対して、要撃に上がってくるドイツ軍戦闘機を早期に発見するのが目的だ。電探搭載の百式重爆は、北東方向に向けて進むと、北海上で大きな楕円を描くように飛行を開始した。
 
 やや遅れて、おとり部隊となる日本陸軍の爆撃機と戦闘機隊がイングランド南部の基地を発進した。陸軍機の編隊は、イングランド東岸を横切るとアムステルダム北方の海上を真東に向けて飛行を開始した。目指していたのはユトランド半島の付け根あたりだ。

 海上を飛行した後は、ユトランド半島を横断して、バルト海沿岸の田舎町に建設された実験場を目指す予定だった。

 ……

 日本陸軍の北海に向けた発進からやや遅れて、イングランドから見慣れない戦闘機の一軍が離陸を開始した。P-80シューティングスターと命名されたジェット戦闘機の編隊は、日本陸軍の部隊よりもやや南側の海上を東南東に向けて飛行を開始した。

 P-80の部隊は、第2のおとり部隊としてオランダ沿岸から侵入して、ドイツ中部を西から東へと横断する予定だった。飛行ルートから考えて、かなり危険な任務だと想定された。そのため、連合軍で最も戦闘力のあるジェット戦闘機だけの部隊が飛行することになった。

 おとり部隊の発進からしばらく時間を空けて、日本海軍六航艦の攻撃隊も離陸を開始していた。海軍の部隊はドイツ南部のフランス国境に近い隣接する2カ所の都市が目標だった。

 日本海軍の編隊は、離陸するとドーバー海峡を横断して、南に向けて飛行を開始した。ほぼパリに向かう方向だ。なるべく多くフランス上空を飛行してから、西から東へとドイツ国境を越える予定だった。

 アメリカ軍のB-29を中心とした爆撃隊も北海上空を西に向けて飛行を開始していた。日本陸軍よりも北側のルートでユトランド半島のデンマーク上空あたりを目指していた。半島を横断した後は、一気に南下して北からドイツ本土を縦断してベルリン方面を目指す予定だった。

 日本とアメリカの攻撃隊とほぼ同時にイギリス空軍の爆撃隊も発進していた。北方の目標を攻撃するイギリス空軍機は、スコットランド東岸のアバディーン郊外のルーカーズ基地に前もって移動していた。

 作戦開始の時刻になると、スコットランドの基地を離陸してから、北海をほぼ真東に進んでスカンジナビア半島のノルウェーを目指していた。

 ……

 オランダ海岸沿いのドイツ軍の捜索レーダーが沿岸近くをしている編隊を探知した。もともと、おとりを任務として飛行していた日本陸軍の編隊が発見されたのだ。レーダーが探知した情報は、すぐにベルリンの司令部に通報された。

 帝国航空艦隊司令部にアムステルダム北方のレーダー基地で探知した情報が上がってきた。
「攻撃隊を探知しました。オランダ北側の北海上空を東北東へと飛行中。目標はまだ不明ですが、ハンブルクを中心としたドイツ北部の可能性があります」

 シュトゥンプフ上級大将も、この時期に連合国がドイツ本土を攻撃してくるのは十分あり得ると考えていた。
「やはり連合軍は、攻撃を仕掛けてきたな。第11戦闘航空団(JG11)を迎撃に発進させよ」

 航空艦隊司令部からの命令で、北部ドイツの基地からJG11のTa152Cが離陸した。向かう先は北海上をユトランド半島方向に飛行している編隊だ。

 ……

 エセックス州の基地を離陸した日本陸軍の部隊は、北海上空を東北東に向けて飛行していた。63機の三式双発爆撃機を中心として、32機の疾風と28機の飛燕が護衛していた。しかも三式双爆には、28機の対空誘導弾を搭載した機体が含まれていた。


 しばらく飛行すると陸軍の戦闘機隊に電探搭載の百式重爆から通報が入ってきた。
「電探でドイツ軍の編隊を捉えた。方位150度から接近中。距離32km、高度は7,000mあたり」

 疾風隊を率いていた黒江大尉は、電探警戒機からの報告を聞いて戦闘機隊に命令を発した。ドイツ軍に発見されるために飛行しているのだ。大尉にとっては、百式重爆からの通知は想定通りだった。
「まもなくドイツ軍機がやってくる。東南東に向きを変えよ」

 三式双爆(キ66)に搭乗していた樫出大尉は、他の編隊よりもやや高い位置を飛行していた。百式電探警戒機から報告を受けると、すぐに南東に変針した。徐々に高度を下げながらどんどん加速してゆく。速度を上げながら、黒江大尉に話しかけた。

「樫出だ。我々の部隊は対空誘導弾を装備している。先行して攻撃させてくれ」

 もちろん、黒江大尉に異論はない。今回の編隊ならば、先に長距離から攻撃する方が有利なはずだ。黒江大尉にとって、ドイツ軍機が迎撃してくるのはむしろ歓迎だった。
(電探で大編隊に見えるように、疾風に搭載した金属箔を散布しながら飛んできたのだ。発見してもらわなければ、おとり役が無駄になる)

 日本軍の編隊に対して、ドイツ軍機はどんどん距離を詰めていった。このまま飛行すれば、アムステルダム北側の海上に達したあたりの海上で、双方の部隊が衝突することになるだろう。

 樫出大尉は、ドイツ軍機がそろそろ見えてくる頃だと考えていた。念のために、電探機に問い合わせしてみようかと思った瞬間に報告がもたらされた。北側の百式重爆が、電探情報を通知してきたのだ。
「ドイツ軍編隊は、南東から接近している。距離は20km。今日の天気ならば、そろそろ見えてくるはずだ」

 今回の作戦では陸軍の部隊は敵編隊をおびき寄せなければならない。それでも先に敵編隊を発見して先制攻撃するのは許されるだろう。
「岩井伍長、機上電探を動作させるぞ。想定通りならば、南東20km程度の位置で見つかるはずだ」

 三式双爆の翼下面から電探アンテナが引き出された。樫出大尉の予感はすぐにあたった。
「方位145度、18kmに敵編隊発見。友軍の識別信号なし」

 やや遅れて樫出大尉も目視で、点のような編隊を発見していた。大尉は、接近してくるドイツ軍機との距離を目測で測っていた。
「高度は我々と同じ。ドイツ軍の戦闘機だ。誘導弾攻撃を実施するぞ」

 樫出大尉の指示により、28機の三式双爆が南南東に進路を変えながらやや上昇していった。残った35機の爆弾搭載の三式双爆は逆に高度をどんどん下げてゆく。大尉は、十分攻撃可能な距離に達したと判断した。
「第一中隊に命令。敵機からの反射電波を受信次第、誘導弾を発射せよ」

 12機の三式双爆が爆弾倉の扉を開けて、ブランコのような構造の誘導桿が、噴進弾を機体下面より下方に引き下ろした。次の瞬間、誘導弾を吊り下げていたフックが引っ込んで結合が解放された。一瞬の間、誘導弾は滑空状態になるが、すぐに固体推進剤に点火して前方への加速が始まった。

 三式双爆は各機が2発の奮龍二型を発射した。24発の誘導弾は白い煙を吐き出しながら、ドイツ軍機に向かってどんどん加速していった。

 敵編隊に向けて飛んでいった奮龍二型は、15発がドイツ編隊のあたりで爆発した。しかし、大尉は爆炎の位置が敵機からずれていることに気づいた。
(爆発の様子がおかしいぞ。多数の誘導弾が目標を捉えずに手前で爆発したように見える)

「これ以上の誘導弾の発射は中止だ。一時、南方に旋回する」

 大尉の命令を受けて、三式双爆は、機首を南南東へと変針してドイツ軍編隊を迂回しようとした。

 ……

 Ⅰ/JG11のクラウゼン大尉は、航空艦隊司令部からの指示により31機のTa152Cを率いて発進していた。離陸してしばらく飛行すると、オランダ北側の海岸を越えて北海上空に達していた。最前線で連合軍と対峙しているⅠ/JG11は、優先されて配備されたTa152Cへの改編を早期に終えていた。

 しかし、いいことばかりではない。前線で戦っているおかげで、新米パイロットの比率がじりじりと上昇していた。実戦に初めて出撃するパイロットの緊張感が、一緒に飛んでいるだけでも伝わってくるようだ。
「まもなく連合軍と会敵するだろう。我々の機体と装備は優秀だ。みんな自信を持て」

 大尉の発言の根拠となったのは、配備が始まったばかりの最新兵器の搭載だ。彼の部隊の機体は、X-4空対空ミサイルの搭載を可能とする改修が完了していた。

 ドイツ空軍は、今まで戦闘機に搭載する空対空ロケット弾としてはR4Mを使用してきた。それなりに戦果もあったが、日本軍の誘導機能を有するミサイルには明らかに後塵を拝していた。日本軍のミサイルの威力は絶大だった。当然、ドイツ軍でもその配備を望む声はどんどん大きくなっていた。

 ルールシュタール社のクラマー博士が戦闘機から発射するミサイルの研究を開始したのは、連合軍のドイツ本土爆撃が開始された1942年2月だった。飛翔体は、平行四辺形のアスペクト比の小さな4枚の後退翼を胴体中央部に備えていた。更に、主翼とは45度ずれた配置の4枚の尾翼には、電磁式に動く操舵面が備えられていた。飛行性能に関しては、BMWが開発した推力140kgの液体燃料エンジンのおかげで約1,000km/hで飛ぶことができた。このミサイルは、ルールシュタール社が4番目に開発したという意味からX-4と呼ばれた。1番目のX-1はフリッツXとも呼ばれる対艦の無線誘導弾だ。

 X-4の初期型は、翼端の流線型ポッド内に細いボビンが取り付けられ、そこからワイヤが引き出される構造を有していた。ワイヤの一端は発射母機に接続され、パイロットが、ジョイスティックによりミサイルの飛行方向を制御する有線誘導方式が採用された。しかし、単座戦闘機では、機体の操縦とミサイルの誘導を一人で行うことは不可能と判定されて、自律的な誘導方式が研究された。

 クラマー博士が新たなミサイル誘導法として採用したのが赤外線による誘導方式だった。改良型のX-4は頭部先端から飛び出した突起の先端に赤外線の受光部が取り付けられた。ミサイルの実験は1年半以上、実施されて、1943年11月になって実戦配備が始まった。

 JG11のTa152Cは、左右の翼下に重量60kgのX-4ミサイルを2発搭載していた。更に胴体中央部には、増槽の代わりに金属箔を内蔵した流線型のポッドを1基吊り下げていた。ポッドの後部には固体ロケットの推進剤を詰め込んでいる。

 クラウゼン大尉は地上からの誘導に従って、アムステルダムの北西の海岸を目指していた。地上からは目標の位置について引き続き情報がもたらされた。
「侵入してきた目標は、高度6,500mをアムステルダムの北西から東に進んでいる」

 指示に従って飛行してゆくと、異様に平べったい航空機のシルエットが前方に見えてきた。
「11時方向に、日本軍の攻撃隊を発見した。やや低い位置に30機程度が見える。全翼の機体と上空には空冷の機体が飛行している」

 接近すると前方の全翼機が胴体下部が膨らむように見えた。おそらく爆弾倉の扉を開いたので、シルエットが変化したのだ。クラウゼン大尉はそれが何を意味するか想像がついた。大尉は、イギリス本土攻撃時に全翼機が対空ミサイルによる攻撃をしてきたとの報告を読んでいた。

「ミサイルが飛んでくるぞ! 金属箔を散布せよ」

 Ta152Cの編隊は、一斉に胴体下のポッドを投下した。流線型のポッドは、機体から離れると後部のロケットに点火して前方へと飛んでいった。しばらくすると、ポッドは編隊の前方で爆発して、内蔵していた金属箔を空中に飛散させた。

 その瞬間、全翼機の編隊で何かが光ったように見えた。続いて白煙が、敵機の周囲に広がった。

「ロケットに点火した光だ。敵機はミサイルを発射した。真っすぐ飛んでいたら墜とされるぞ。急旋回で回避せよ」
 
 ドイツ空軍内でも、日本軍のミサイルに対する回避法は大きな課題になっていた。まっすぐ飛翔してくるミサイルに対して、急旋回で射線上からできる限り離れることが有効だろうという意見が大半だった。高速で飛行しているミサイルは急旋回が苦手なはずだ。更に、ミサイルの前方に金属箔が散布されているならば、有効性は高まるだろうと推定された。

 クラウゼン大尉自身も初めての回避法だったが、それ以外に助かる方法がない。30秒もしないうちに、対空ミサイルが飛んできた。大尉は、急旋回と緩降下の組み合わせで、ミサイルの飛来方向からできる限り離れようとしていた。中隊の各機もそれに続いていた。新米パイロットは、空中戦で生き延びたいならば、とにかくベテランの後方から離れるなと教えられていたのだ。

 突然、先頭のミサイルが空中で爆発した。金属箔の雲に突っ込んで近接信管が作動したのだ。それが合図になったかのように、その周囲で次々とミサイルが爆発する。

 しかし、北側から金属箔の雲の端をかすめるように飛んできたミサイルだけは、後方の機体からの電波反射を捉えていた。Ta152Cの編隊右側で、3発のミサイルが爆発した。尾部が吹き飛んだり、主翼がちぎれた3機のTa152Cが真っ逆さまに墜落してゆく。
 
 クラウゼン大尉にとって、日本軍の全翼機が対空ミサイルで攻撃してくるのは想定内だった。
(金属箔と急旋回は有効だった。しかし、回避開始がやや遅れた。しかも金属箔の散布は、もっと南北に範囲を広げるように指示すればよかった)

 Ⅰ/JG11のTa152C編隊は、北側を旋回して日本軍の後方に回り込もうとしていた。赤外線誘導の大きな欠点が、目標の赤外線が視野に入る位置に占位しなければ、誘導ができない点だ。機銃射撃のように完全に射線上に捉える必要はないが、高温のエンジン排気が発する赤外線が捉えられる位置でなければ発射できない。クラウゼン大尉は、なんとか、日本軍機を頂点とする頂角60度程度の円錐形の中に入り込もうと左旋回していた。
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