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第8章 四国沖海戦
8.5章 四航戦の米艦隊攻撃1
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四航戦に帰投した阿部大尉にとっては、豊後水道における米軍機の要撃に続いて二度目の出撃だったが、興奮しているためかあまり疲れを感じていなかった。「隼鷹」を発艦してからは、偵察装備の九七式艦攻の巡航速度に合わせて飛行していたが、米艦隊までの約170海里(315km)の飛行距離を1.5時間程度で飛ぶことができた。しかし、目的地の海域に到達しても、艦隊を発見できなかった。
しきりに海面を見ていた偵察員の石井飛曹長が、阿部大尉の観察結果を肯定した。
「海上に艦影なし。周囲にも艦隊は全く見えません。米艦隊は東の方向に移動している可能性ありとの連絡が母艦からありました。東に向かいましょう」
すぐに、阿部大尉も同意した。
「時間を浪費したくない。航続距離にも限りがある。東の方角に向かう。蛇行しながら東に飛行するぞ。海上をよく見ていてくれ」
四航戦の攻撃隊は、左側に旋回して機首を東に向けた。10分ほど飛行していると、編隊に先行していた試作電探を搭載した偵察型の九七式艦攻から機上無線で連絡が入った。
「電探が艦船を探知。複数の大型艦からの反射が出ている。編隊の14時方向、約25海里(46km)だ」
大尉は編隊を報告を受けた方向に向けた。25海里は、既に戦闘機の迎撃を心配する距離だ。
零戦隊を率いている宮野大尉は、四航戦の爆撃隊よりもやや高い高度で飛行していた。彼は海上よりも上空を注視していた。必ず護衛の戦闘機がいるはずだ。隊内無線で注意を促す。
「上空の敵戦闘機に注意しろ。必ず迎撃してくるはずだ」
大尉が予想した通り、右翼側を飛行していた尾関一飛曹が米戦闘機を発見した。
「15時方向。編隊が接近」
先頭の宮野大尉もずんぐりした塔体のシルエットを確認した。同時に、バンクにより後続の機体に注意を促した。
「敵戦闘機だ。約10機、東南東。繰り返す。右翼側に米軍戦闘機だ」
大尉の右翼側を飛行していた12機の零戦隊が、F4Fの編隊に向けて加速を開始した。しかし、宮野大尉と彼に続く15機は動く気配がない。
四国上空の戦いで要撃を行った経験から、援護戦闘機がいなくなった爆撃隊がいかに脆弱なのか、大尉は実感できていた。そのため、安全が確認されない限り、爆撃隊の上空から離れるつもりはなかった。
「第二波の敵戦闘機が飛来するはずだ。それに備えてこのまま編隊の護衛を継続する」
艦攻の示した方角に飛行してゆくと、艦船の煙が見えてきた。水平線近くに見える特徴的な巨大煙突は「レキシントン」級の空母に間違いない。
「艦隊に打電。『レキシントン』型を含む米艦隊。これより攻撃する。最後に現在位置と時刻をつけてくれ」
飛行して行くと、最初に発見した空母の更に前方に同型の空母が見えてきた。艦隊の全容は見えないが、戦艦と巡洋艦、駆逐艦などが2隻の空母を護衛しているようだ。
その時、上空からF4Fの編隊が急降下してきた。最初に発見したF4Fとは別の編隊が雲にかくれていたのだろう。宮野大尉は、雲から出てきた米戦闘機をぎりぎりのところで発見した。
「上空2時方向からグラマンの編隊。迎え撃て」
降下してきたのは、数機のF4Fだった。強引に機首を持ち上げた宮野機は、グラマンに向けて一連射した。ジャイロ照準の威力もあって、F4Fの機首に20mm弾が命中した。エンジンで機銃弾が爆発して、プロペラが飛散すると共に、突撃の勢いが削がれてそのまま墜ちてゆく。
僚機も後方で射撃を行っていた。しかし、降下してきたF4Fは既に回避行動をとっているので、さすがに機銃は命中しない。それでも大尉の思惑通りだ。F4Fの急降下による攻撃態勢を崩すのが目的だ。旋回すれば、戦闘機は爆撃機を自由に攻撃できないはずだ。
宮野大尉は、F4Fが旋回して編隊がバラバラになったのを確認すると、上昇姿勢から操縦桿を引き続けて宙返りの姿勢になった。大尉は、機体の引き起こしを途中でやめて100度を超える降下角のまま急降下して、どんどん加速する。旋回して逃げてゆくF4Fの背後に迫ると後上方から射撃した。13mmと20mmがF4Fの胴体中央部に命中すると、煙も出さずにひっくり返ったF4Fは墜落していった。
いち早く敵機を発見したおかげで、上空の零戦隊は、急降下してきたほとんどのF4Fを撃退できた。それでも1機のF4Fが逃走途中で目の前に飛び込んできた彗星に向けて射撃した。艦爆は主翼に一連射を受けて、翼付け根から炎を噴き出して墜落して行く。
宮野大尉は上空でこの様子を目撃していた。
(なんということだ。一撃で炎を噴き出すとは。これでは、少数の戦闘機が爆撃隊にとりついただけで、大きな被害が出るぞ)
大尉は、知らなかったが当時の海軍機の燃料タンクには防弾装備が皆無だった。一発の機銃弾が命中すれば、そこからガソリンが漏れ出す。次に、曳光弾が命中すれば間違いなくガソリンに引火するだろう。
それでも、全速で飛行すれば、爆装でも280ノット(519km/h)を超える彗星は、1機の損失のみで米艦隊に接近できた。しかし、雷撃のために高度を下げていた艦攻隊はそれほど幸運ではなかった。艦隊のレーダーに誘導されたF4Fが低空に降りてきた。爆撃隊の援護で手いっぱいだった上空の零戦隊は、低空から雷撃隊に接近する米軍機を見逃した。
……
「サラトガ」を飛び立った戦闘機隊のシンプラー少佐は、魚雷による攻撃をもっとも警戒していた。海中で爆発する魚雷は、命中すれば多かれ少なかれ浸水を引き起こす。水雷防御がされていても、防御区画への浸水を防ぐことはできない。しかも、浸水すれば傾斜が発生するので、反対舷に注水して補正が必要になる。それが更に浮力を減少させる。艦船にとっていいことは一つもない。
大佐は母艦から北北西に日本の編隊が接近しているとの知らせを受けると、低空で進入してくる雷撃機を迎え撃つためにどんどん高度を下げていった。
すぐに上方に高度を下げてくる編隊が見えてきた。F4Fはかなり低く飛行していたので、海面を背にして上空からは見つけにくいはずだ。一旦、日本軍機の西側を通過してやり過ごすと、後方で左に旋回して上昇を開始した。
「雷撃隊の左翼側をまず攻撃する。目標はケイト(九七式艦上攻撃機)だろう」
7機のF4Fは後ろ下方からゆるく上昇しながら接近した。少佐の狙い通り、ほぼ死角になる後方の低い位置からの攻撃態勢だ。
「ケイトは後部座席に機銃が1挺あるが、下方への射界はほとんどない。落ち着いて攻撃すれば大丈夫だ」
米戦闘機の全パイロットが、実戦未経験だったが、反撃されることがないので落ち着いていた。やや上向きへの射撃で、たちまち3機の九七式艦攻に火を噴かせる。ブローニング12.7mm弾を受けて、炎とどす黒い煙を曳きながら海面へと墜ちていく。
最初に攻撃してきた米戦闘機群と交戦した尾関一飛曹は、F4Fを追い払って、友軍の編隊を後方から追いかけていた。しばらく飛行していると、下方で複数の炎と黒煙が噴き出すのが見えた。すぐに低空の艦攻隊が攻撃されたことに気づいた。
機首を下げると共に後続の列機にも指示を出した。
「下を飛行している艦攻隊が攻撃を受けている。これより救援に向かう。低空の艦攻を救援するぞ」
低高度を飛行していた艦攻隊めがけて思い切り機首を下げた。零戦には空中分解を避けるために急降下制限速度が設定されていたが、今はそんなことをかまっていられない。びりびり翼が震えるほどの速度に加速して降下するが、更に目の前で1機の九七式艦攻が火を噴き出した。
シンプラー少佐は、2機目のケイト(九七式艦上攻撃機)に射撃をしたところで、上空から急降下してくるジーク(零戦)の編隊に気づいた。
(しまった! 獲物への攻撃に夢中で、上空の警戒がおろそかになっていた)
「上空からジークだ。回避しろ」
少佐の命令と、零戦が射撃を開始するのはほぼ同時だった。
尾関一飛曹は、F4Fに機首を向けながら機体を急降下させた。少し遠いと思ったが、降下中の機首の向きを微調整してジャイロで動く照準環に米戦闘機をとらえた。ジャイロと計算機による照準修正は正確で、F4Fの機首から胴体にかけて機銃弾が命中した。F4Fは機首を下げて、そのまま海面に突っ込んでいった。列機の零戦も別のF4Fに狙いをつけて命中させていた。追いかけるように2機のF4Fが煙を吐き出して墜ちてゆく。
5機の零戦は3機のF4Fを撃墜して高度を下げた後に、上昇に転じると前方のF4Fめがけて射撃した。後方を飛行していた2機のF4Fに曳光弾が吸い込まれてゆくのが分かった。胴体から破片を飛び散らせながらF4Fは墜ちていった。
シンプラー少佐は、零戦の攻撃を回避するので精一杯だった。思い切り左に旋回して回避しようとしたが、日本の戦闘機は楽々と後方から追尾してくる。
(旋回性能はジークが圧倒的に有利だ。格闘戦になったら負けるぞ)
少佐はスロットルを緊急出力まで押し込んで、機首をほとんど真下に下げた。低高度では海面に激突する可能性のある危険な機動だが、そんなことにはかまっていられない。少佐が水しぶきを浴びるような高度で機体を引き起こすと、さすがに零戦は追っかけてこなかった。
……
艦攻隊の上空を飛行していた彗星爆撃隊が艦隊に接近すると、周囲で高射砲弾の煙が浮かび始めていた。艦爆隊は、一旦、高度を6,000mまで上げた後に降下して加速しながら米艦隊に接近していた。砲弾が近くで爆発するたびに機体がびりびりと震えるが、それを無視するように阿部大尉は冷静に米艦隊の編制を観察していた。
輪形陣中央の2隻の空母は「レキシントン」と「サラトガ」だ。先頭艦がどちらか判別できないが、姉妹艦で機動部隊を編制しているのは間違いない。輪形陣の北東側に位置して、巨大な艦橋がひときわ目立っているのは、識別表に追加された新型戦艦の「ノースカロライナ」型だ。
更に、空母の周囲を護衛しているのは、3連装砲塔を3基搭載した重巡洋艦と駆逐艦群だ。おそらく巡洋艦は「ノーザンプトン」型、あるいは「ニュー・オーリンズ」型だろう。
「石井飛曹長、母艦に打電だ。2隻の『レキシントン』型と戦艦『ノースカロライナ』型からなる艦隊を攻撃せんとす」
阿部大尉は、北側の濃密な戦艦の対空砲火を避けて、米艦隊の後方から南側に回り込んだ。それでも、空母に接近する途中で輪形陣の対空射撃により、3機の彗星が撃墜された。
(300ノットを超える彗星でもこれだけ被害が出るのか。米艦隊の対空砲火、侮るべからずだな)
前部風防の上側の枠に取り付けられていた、横に倒れていた射爆照準器を90度回転させると、照準用の反射板が目の前にきた。側面のダイヤルを操作して投下高度を設定する。爆弾の種類は、出撃時に50番徹甲榴弾に合わせてある。すぐに目の前に照準のためのオレンジ色の円環が現れた。
米空母をめがけて急降下を開始したのは8機の彗星だった。阿部大尉を含む全ての彗星は、東側を航行していた「レキシントン」に狙いをつけた。「レキシントン」は、艦橋前後に背負い式に搭載されていた8インチ(20.3cm)砲をおろして、7基の4連装1.1インチ(28mm)機銃を搭載していた。必ずしも評判の良い対空機関銃ではなかったが、急降下爆撃機に対しては、高度3,000mあたりから威力を発揮した。
「3時方向に敵爆撃機、降下してくる。高度10,000フィート(3,048m)」
艦長のシャーマン大佐は、一瞬、フィッチ少将の方を見た。少将は艦長の視線を感じると軽くうなずいた。艦長は、急降下爆撃回避のために、すぐに左への回頭を命令した。
「とりかーじ、いっぱーい」
彗星が機首を下に向けて70度の降下角で急降下を開始すると、照準器の円環のやや離れた下方に十字線が表示された。これは、管制器が弾道計算して表示した爆弾の直弾予想位置だ。円環に空母をとらえて、左右にずれないように降下してゆくと円と十字線がどんどん接近してくる。円環の中央に十字線が重なったところで、耳元でブザーが鳴った。設定した投下高度の1,000mに達したのだ。阿部大尉は、即座にスロットルの投下ハンドルを内側に倒した。
ガコンと振動と音がして、誘導桿が胴体から離れて下方に振り出された。胴体から離れたところで、爆弾が誘導桿から分離した。
急降下の途中で機銃弾を受けた列機がきりもみになって墜落して行った。激しい対空砲火の中で7機の彗星が50番(500kg)徹甲榴弾を投下した。投下直前に1機から煙が噴き出たが、それにひるまず爆弾を投下して、そのまま機首を持ち上げず降下していった。
「レキシントン」艦長のシャーマン大佐には、レーダーでとらえた日本編隊が接近してくる様子が刻々と報告されていた。日本軍機が爆弾を投下すると右舷側の見張員から悲鳴のような報告が上がってきた。
しかし、高速で航行する「レキシントン」はなかなか左への回頭を開始しない。艦首の向きがわずかに変わり始めた瞬間に爆弾が落ちてきた。
この時彗星が投下した一式50番爆弾は、今までの50番から性能が改善していた。通常爆弾では大型艦の装甲版を貫徹できないことから、彗星の実用化と歩調を合わせて100mm装甲を貫通することを目標に、徹甲型爆弾の開発が行われた。貫徹力だけでなく爆発の威力を確保するために炸薬を100kgとした徹甲榴弾を完成させた。
舵が効き始めると同時に「レキシントン」に対して、7発投下された爆弾のうちの3発が命中した。
後部エレベータ後ろの船体後部に命中した50番爆弾は、装甲防御がされていない飛行甲板からギャラリーデッキを簡単に突き抜けると格納庫床下の3/8インチ(9.5mm)鋼板も貫通して、下甲板の2インチ(51mm)鋼板の装甲に達した。一式50番爆弾は、この厚さの水平装甲を貫徹できた。装甲板を突破した爆弾は、第4機関室に飛び込んで爆発した。
機関室で爆発した50番爆弾は、爆圧により機関室だけでなく、隣接していた4つの缶室のボイラーを使用不能とした。更に艦内の爆風は飛行甲板にまで噴き上がった。「レキシントン」級は舷側がしっかりと密閉された閉鎖式格納庫だったために、側面から逃れることのできない爆圧が飛行甲板を山型に盛り上げた。同時に飛行甲板に主翼から炎に包まれた彗星が突入した。船体中部の飛行甲板で火災が発生した。
ターボ電気推進を採用した「レキシントン」級は、機関室には蒸気タービンだけでなく、推進のために大型発電機を備える必要があった。そのため、4つの機関室を船体の中心部に配置して、更にその後方に更に4つの推進モーター室を設置するという構成となっていた。なお機関室の両側には左舷8基、右舷8基の合計16基のボイラーが機関室を守るように配置されていた。これも巨大な船腹を生かした配置だった。
船体後部に続いて、1弾が前部エレベータの右舷側に命中した。飛行甲板から格納庫を抜けて、装甲板を貫通した爆弾は第1缶室内で爆発した。第1缶室と最前方の機関室が破壊されるとともに、隣の第3缶室も被害を受けた。同時に爆発の衝撃により、前部エレベーターが陥没して使用不能になった。
最後の1発は、艦尾近くの右舷側に命中した。飛行甲板から水平装甲まで打ち破ると、右舷側の推進モーター室で爆発した。右舷推進器用のモーターが完全に破壊された。
爆撃により4軸のうちの2軸が停止すると、「レキシントン」は33ノットからどんどん速度が落ちていった。次々と上がってくる被害報告に対して、応急処置命令を出しながらシャーマン大佐は、次第に落ち込んでいった。
(すぐに10ノット以下になるぞ。この艦の大きさでそんな低速になれば、魚雷のいい目標になるはずだ)
既に、日本軍の雷撃機が接近してくるのが見えていた。
しきりに海面を見ていた偵察員の石井飛曹長が、阿部大尉の観察結果を肯定した。
「海上に艦影なし。周囲にも艦隊は全く見えません。米艦隊は東の方向に移動している可能性ありとの連絡が母艦からありました。東に向かいましょう」
すぐに、阿部大尉も同意した。
「時間を浪費したくない。航続距離にも限りがある。東の方角に向かう。蛇行しながら東に飛行するぞ。海上をよく見ていてくれ」
四航戦の攻撃隊は、左側に旋回して機首を東に向けた。10分ほど飛行していると、編隊に先行していた試作電探を搭載した偵察型の九七式艦攻から機上無線で連絡が入った。
「電探が艦船を探知。複数の大型艦からの反射が出ている。編隊の14時方向、約25海里(46km)だ」
大尉は編隊を報告を受けた方向に向けた。25海里は、既に戦闘機の迎撃を心配する距離だ。
零戦隊を率いている宮野大尉は、四航戦の爆撃隊よりもやや高い高度で飛行していた。彼は海上よりも上空を注視していた。必ず護衛の戦闘機がいるはずだ。隊内無線で注意を促す。
「上空の敵戦闘機に注意しろ。必ず迎撃してくるはずだ」
大尉が予想した通り、右翼側を飛行していた尾関一飛曹が米戦闘機を発見した。
「15時方向。編隊が接近」
先頭の宮野大尉もずんぐりした塔体のシルエットを確認した。同時に、バンクにより後続の機体に注意を促した。
「敵戦闘機だ。約10機、東南東。繰り返す。右翼側に米軍戦闘機だ」
大尉の右翼側を飛行していた12機の零戦隊が、F4Fの編隊に向けて加速を開始した。しかし、宮野大尉と彼に続く15機は動く気配がない。
四国上空の戦いで要撃を行った経験から、援護戦闘機がいなくなった爆撃隊がいかに脆弱なのか、大尉は実感できていた。そのため、安全が確認されない限り、爆撃隊の上空から離れるつもりはなかった。
「第二波の敵戦闘機が飛来するはずだ。それに備えてこのまま編隊の護衛を継続する」
艦攻の示した方角に飛行してゆくと、艦船の煙が見えてきた。水平線近くに見える特徴的な巨大煙突は「レキシントン」級の空母に間違いない。
「艦隊に打電。『レキシントン』型を含む米艦隊。これより攻撃する。最後に現在位置と時刻をつけてくれ」
飛行して行くと、最初に発見した空母の更に前方に同型の空母が見えてきた。艦隊の全容は見えないが、戦艦と巡洋艦、駆逐艦などが2隻の空母を護衛しているようだ。
その時、上空からF4Fの編隊が急降下してきた。最初に発見したF4Fとは別の編隊が雲にかくれていたのだろう。宮野大尉は、雲から出てきた米戦闘機をぎりぎりのところで発見した。
「上空2時方向からグラマンの編隊。迎え撃て」
降下してきたのは、数機のF4Fだった。強引に機首を持ち上げた宮野機は、グラマンに向けて一連射した。ジャイロ照準の威力もあって、F4Fの機首に20mm弾が命中した。エンジンで機銃弾が爆発して、プロペラが飛散すると共に、突撃の勢いが削がれてそのまま墜ちてゆく。
僚機も後方で射撃を行っていた。しかし、降下してきたF4Fは既に回避行動をとっているので、さすがに機銃は命中しない。それでも大尉の思惑通りだ。F4Fの急降下による攻撃態勢を崩すのが目的だ。旋回すれば、戦闘機は爆撃機を自由に攻撃できないはずだ。
宮野大尉は、F4Fが旋回して編隊がバラバラになったのを確認すると、上昇姿勢から操縦桿を引き続けて宙返りの姿勢になった。大尉は、機体の引き起こしを途中でやめて100度を超える降下角のまま急降下して、どんどん加速する。旋回して逃げてゆくF4Fの背後に迫ると後上方から射撃した。13mmと20mmがF4Fの胴体中央部に命中すると、煙も出さずにひっくり返ったF4Fは墜落していった。
いち早く敵機を発見したおかげで、上空の零戦隊は、急降下してきたほとんどのF4Fを撃退できた。それでも1機のF4Fが逃走途中で目の前に飛び込んできた彗星に向けて射撃した。艦爆は主翼に一連射を受けて、翼付け根から炎を噴き出して墜落して行く。
宮野大尉は上空でこの様子を目撃していた。
(なんということだ。一撃で炎を噴き出すとは。これでは、少数の戦闘機が爆撃隊にとりついただけで、大きな被害が出るぞ)
大尉は、知らなかったが当時の海軍機の燃料タンクには防弾装備が皆無だった。一発の機銃弾が命中すれば、そこからガソリンが漏れ出す。次に、曳光弾が命中すれば間違いなくガソリンに引火するだろう。
それでも、全速で飛行すれば、爆装でも280ノット(519km/h)を超える彗星は、1機の損失のみで米艦隊に接近できた。しかし、雷撃のために高度を下げていた艦攻隊はそれほど幸運ではなかった。艦隊のレーダーに誘導されたF4Fが低空に降りてきた。爆撃隊の援護で手いっぱいだった上空の零戦隊は、低空から雷撃隊に接近する米軍機を見逃した。
……
「サラトガ」を飛び立った戦闘機隊のシンプラー少佐は、魚雷による攻撃をもっとも警戒していた。海中で爆発する魚雷は、命中すれば多かれ少なかれ浸水を引き起こす。水雷防御がされていても、防御区画への浸水を防ぐことはできない。しかも、浸水すれば傾斜が発生するので、反対舷に注水して補正が必要になる。それが更に浮力を減少させる。艦船にとっていいことは一つもない。
大佐は母艦から北北西に日本の編隊が接近しているとの知らせを受けると、低空で進入してくる雷撃機を迎え撃つためにどんどん高度を下げていった。
すぐに上方に高度を下げてくる編隊が見えてきた。F4Fはかなり低く飛行していたので、海面を背にして上空からは見つけにくいはずだ。一旦、日本軍機の西側を通過してやり過ごすと、後方で左に旋回して上昇を開始した。
「雷撃隊の左翼側をまず攻撃する。目標はケイト(九七式艦上攻撃機)だろう」
7機のF4Fは後ろ下方からゆるく上昇しながら接近した。少佐の狙い通り、ほぼ死角になる後方の低い位置からの攻撃態勢だ。
「ケイトは後部座席に機銃が1挺あるが、下方への射界はほとんどない。落ち着いて攻撃すれば大丈夫だ」
米戦闘機の全パイロットが、実戦未経験だったが、反撃されることがないので落ち着いていた。やや上向きへの射撃で、たちまち3機の九七式艦攻に火を噴かせる。ブローニング12.7mm弾を受けて、炎とどす黒い煙を曳きながら海面へと墜ちていく。
最初に攻撃してきた米戦闘機群と交戦した尾関一飛曹は、F4Fを追い払って、友軍の編隊を後方から追いかけていた。しばらく飛行していると、下方で複数の炎と黒煙が噴き出すのが見えた。すぐに低空の艦攻隊が攻撃されたことに気づいた。
機首を下げると共に後続の列機にも指示を出した。
「下を飛行している艦攻隊が攻撃を受けている。これより救援に向かう。低空の艦攻を救援するぞ」
低高度を飛行していた艦攻隊めがけて思い切り機首を下げた。零戦には空中分解を避けるために急降下制限速度が設定されていたが、今はそんなことをかまっていられない。びりびり翼が震えるほどの速度に加速して降下するが、更に目の前で1機の九七式艦攻が火を噴き出した。
シンプラー少佐は、2機目のケイト(九七式艦上攻撃機)に射撃をしたところで、上空から急降下してくるジーク(零戦)の編隊に気づいた。
(しまった! 獲物への攻撃に夢中で、上空の警戒がおろそかになっていた)
「上空からジークだ。回避しろ」
少佐の命令と、零戦が射撃を開始するのはほぼ同時だった。
尾関一飛曹は、F4Fに機首を向けながら機体を急降下させた。少し遠いと思ったが、降下中の機首の向きを微調整してジャイロで動く照準環に米戦闘機をとらえた。ジャイロと計算機による照準修正は正確で、F4Fの機首から胴体にかけて機銃弾が命中した。F4Fは機首を下げて、そのまま海面に突っ込んでいった。列機の零戦も別のF4Fに狙いをつけて命中させていた。追いかけるように2機のF4Fが煙を吐き出して墜ちてゆく。
5機の零戦は3機のF4Fを撃墜して高度を下げた後に、上昇に転じると前方のF4Fめがけて射撃した。後方を飛行していた2機のF4Fに曳光弾が吸い込まれてゆくのが分かった。胴体から破片を飛び散らせながらF4Fは墜ちていった。
シンプラー少佐は、零戦の攻撃を回避するので精一杯だった。思い切り左に旋回して回避しようとしたが、日本の戦闘機は楽々と後方から追尾してくる。
(旋回性能はジークが圧倒的に有利だ。格闘戦になったら負けるぞ)
少佐はスロットルを緊急出力まで押し込んで、機首をほとんど真下に下げた。低高度では海面に激突する可能性のある危険な機動だが、そんなことにはかまっていられない。少佐が水しぶきを浴びるような高度で機体を引き起こすと、さすがに零戦は追っかけてこなかった。
……
艦攻隊の上空を飛行していた彗星爆撃隊が艦隊に接近すると、周囲で高射砲弾の煙が浮かび始めていた。艦爆隊は、一旦、高度を6,000mまで上げた後に降下して加速しながら米艦隊に接近していた。砲弾が近くで爆発するたびに機体がびりびりと震えるが、それを無視するように阿部大尉は冷静に米艦隊の編制を観察していた。
輪形陣中央の2隻の空母は「レキシントン」と「サラトガ」だ。先頭艦がどちらか判別できないが、姉妹艦で機動部隊を編制しているのは間違いない。輪形陣の北東側に位置して、巨大な艦橋がひときわ目立っているのは、識別表に追加された新型戦艦の「ノースカロライナ」型だ。
更に、空母の周囲を護衛しているのは、3連装砲塔を3基搭載した重巡洋艦と駆逐艦群だ。おそらく巡洋艦は「ノーザンプトン」型、あるいは「ニュー・オーリンズ」型だろう。
「石井飛曹長、母艦に打電だ。2隻の『レキシントン』型と戦艦『ノースカロライナ』型からなる艦隊を攻撃せんとす」
阿部大尉は、北側の濃密な戦艦の対空砲火を避けて、米艦隊の後方から南側に回り込んだ。それでも、空母に接近する途中で輪形陣の対空射撃により、3機の彗星が撃墜された。
(300ノットを超える彗星でもこれだけ被害が出るのか。米艦隊の対空砲火、侮るべからずだな)
前部風防の上側の枠に取り付けられていた、横に倒れていた射爆照準器を90度回転させると、照準用の反射板が目の前にきた。側面のダイヤルを操作して投下高度を設定する。爆弾の種類は、出撃時に50番徹甲榴弾に合わせてある。すぐに目の前に照準のためのオレンジ色の円環が現れた。
米空母をめがけて急降下を開始したのは8機の彗星だった。阿部大尉を含む全ての彗星は、東側を航行していた「レキシントン」に狙いをつけた。「レキシントン」は、艦橋前後に背負い式に搭載されていた8インチ(20.3cm)砲をおろして、7基の4連装1.1インチ(28mm)機銃を搭載していた。必ずしも評判の良い対空機関銃ではなかったが、急降下爆撃機に対しては、高度3,000mあたりから威力を発揮した。
「3時方向に敵爆撃機、降下してくる。高度10,000フィート(3,048m)」
艦長のシャーマン大佐は、一瞬、フィッチ少将の方を見た。少将は艦長の視線を感じると軽くうなずいた。艦長は、急降下爆撃回避のために、すぐに左への回頭を命令した。
「とりかーじ、いっぱーい」
彗星が機首を下に向けて70度の降下角で急降下を開始すると、照準器の円環のやや離れた下方に十字線が表示された。これは、管制器が弾道計算して表示した爆弾の直弾予想位置だ。円環に空母をとらえて、左右にずれないように降下してゆくと円と十字線がどんどん接近してくる。円環の中央に十字線が重なったところで、耳元でブザーが鳴った。設定した投下高度の1,000mに達したのだ。阿部大尉は、即座にスロットルの投下ハンドルを内側に倒した。
ガコンと振動と音がして、誘導桿が胴体から離れて下方に振り出された。胴体から離れたところで、爆弾が誘導桿から分離した。
急降下の途中で機銃弾を受けた列機がきりもみになって墜落して行った。激しい対空砲火の中で7機の彗星が50番(500kg)徹甲榴弾を投下した。投下直前に1機から煙が噴き出たが、それにひるまず爆弾を投下して、そのまま機首を持ち上げず降下していった。
「レキシントン」艦長のシャーマン大佐には、レーダーでとらえた日本編隊が接近してくる様子が刻々と報告されていた。日本軍機が爆弾を投下すると右舷側の見張員から悲鳴のような報告が上がってきた。
しかし、高速で航行する「レキシントン」はなかなか左への回頭を開始しない。艦首の向きがわずかに変わり始めた瞬間に爆弾が落ちてきた。
この時彗星が投下した一式50番爆弾は、今までの50番から性能が改善していた。通常爆弾では大型艦の装甲版を貫徹できないことから、彗星の実用化と歩調を合わせて100mm装甲を貫通することを目標に、徹甲型爆弾の開発が行われた。貫徹力だけでなく爆発の威力を確保するために炸薬を100kgとした徹甲榴弾を完成させた。
舵が効き始めると同時に「レキシントン」に対して、7発投下された爆弾のうちの3発が命中した。
後部エレベータ後ろの船体後部に命中した50番爆弾は、装甲防御がされていない飛行甲板からギャラリーデッキを簡単に突き抜けると格納庫床下の3/8インチ(9.5mm)鋼板も貫通して、下甲板の2インチ(51mm)鋼板の装甲に達した。一式50番爆弾は、この厚さの水平装甲を貫徹できた。装甲板を突破した爆弾は、第4機関室に飛び込んで爆発した。
機関室で爆発した50番爆弾は、爆圧により機関室だけでなく、隣接していた4つの缶室のボイラーを使用不能とした。更に艦内の爆風は飛行甲板にまで噴き上がった。「レキシントン」級は舷側がしっかりと密閉された閉鎖式格納庫だったために、側面から逃れることのできない爆圧が飛行甲板を山型に盛り上げた。同時に飛行甲板に主翼から炎に包まれた彗星が突入した。船体中部の飛行甲板で火災が発生した。
ターボ電気推進を採用した「レキシントン」級は、機関室には蒸気タービンだけでなく、推進のために大型発電機を備える必要があった。そのため、4つの機関室を船体の中心部に配置して、更にその後方に更に4つの推進モーター室を設置するという構成となっていた。なお機関室の両側には左舷8基、右舷8基の合計16基のボイラーが機関室を守るように配置されていた。これも巨大な船腹を生かした配置だった。
船体後部に続いて、1弾が前部エレベータの右舷側に命中した。飛行甲板から格納庫を抜けて、装甲板を貫通した爆弾は第1缶室内で爆発した。第1缶室と最前方の機関室が破壊されるとともに、隣の第3缶室も被害を受けた。同時に爆発の衝撃により、前部エレベーターが陥没して使用不能になった。
最後の1発は、艦尾近くの右舷側に命中した。飛行甲板から水平装甲まで打ち破ると、右舷側の推進モーター室で爆発した。右舷推進器用のモーターが完全に破壊された。
爆撃により4軸のうちの2軸が停止すると、「レキシントン」は33ノットからどんどん速度が落ちていった。次々と上がってくる被害報告に対して、応急処置命令を出しながらシャーマン大佐は、次第に落ち込んでいった。
(すぐに10ノット以下になるぞ。この艦の大きさでそんな低速になれば、魚雷のいい目標になるはずだ)
既に、日本軍の雷撃機が接近してくるのが見えていた。
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