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第12章 珊瑚海海戦
12.6章 一航艦攻撃隊発進
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戦闘の推移を聞いていた山本長官がアメリカ艦隊への攻撃隊の発進を決断した。
「やや遠いが、一航艦からも攻撃を仕掛けるぞ。米艦隊に向けて攻撃隊を発進させる」
連合艦隊司令部は、「青葉」の艦上で友軍と英軍及び米軍の艦隊の位置を把握していた。米艦隊が二航艦に向けて攻撃隊を発進させたことも、「瑞鶴」からの連絡でわかっていた。二航艦では英軍の迎撃戦が終盤となって、米攻撃隊は攻撃の途上にあるはずだ。米艦隊を攻撃できる絶好の機会だと山本大将は考えた。
山本長官の命令が伝達されて、一航艦司令部は一斉に行動を開始した。攻撃隊の準備は既に完了していて、攻撃開始の命令を待っていた。
角田長官の二航艦とは別行動をとっていた一航艦は、ソロモン諸島の最南端にあるサン・クリストバル島の東側海域に達していた。日本艦隊が南南西へと進んだのに対して、米艦隊が角田艦隊を捕捉するために北西へと進んだために、急速に相互の距離が減少していた。
この時の一航艦の空母は、「赤城」と「加賀」「蒼龍」「飛龍」から編制されていた。護衛の艦艇としては、「金剛」と「妙高」「那智」に加えて、10隻余りの駆逐艦が周囲を護衛していた。「大和」と「武蔵」及び「長門」級を主力とした第一戦隊は、一航艦からやや離れて全速で南方へと進出しつつあった。
南雲中将の命令により、4隻の空母から第一次攻撃隊が発進した。
第一次攻撃隊:烈風30機、零戦24機、彗星38機、天山18機、九七式艦攻21機、偵察型天山3機
偵察型天山は、対空及び対艦の電探を搭載している。攻撃隊に零戦と九七式艦攻が混在しているのは、「蒼龍」と「飛龍」の搭載機が更新できないからだ。全備で6トン級の天山の運用を可能とするためには、飛行甲板の強化と着艦制動装置の変更が必要だった。しかし、二航戦の空母は飛行甲板の面積から、天山搭載の判断が先送りされていた。そのおかげで飛行甲板の強度増加も未改修だった。
……
一方、スプルーアンス少将は艦隊の西側の海域への偵察を重点としたために、北方から下がってくる艦隊の発見が遅れた。それでも、接近してくる日二航戦を偵察型のTBFアベンジャーが発見した。
「北北東の方向、300マイル(483km)の地点に日本艦隊を発見しました。戦艦1、巡洋艦2、空母2を発見ています」
想定外の艦隊の登場にすぐにスプルーアンス少将が反応した。
「別行動の第2の機動部隊が現れたということか。この距離ならば、間違いなく我々は攻撃されることになるぞ」
ムーア大佐が答えた。
「おっしゃる通り、日本の機動部隊は攻撃隊を発進させられる距離まで接近しています。これは明らかに計画的な行動です。イギリス艦隊に接近した第1の機動部隊が我々を引き付けていました。その後に接近してきた第2の機動部隊は、我々だけを攻撃することを当初から目的としています」
「日本側の狙い通りに我々は行動していたということなのか? ヤマモトの策にはめられたというわけか?」
声には出さないが、ムーア大佐の表情が肯定している。相手の顔を見てから、スプルーアンス少将は顔をやや上げると声を大きくして命令した。
「部隊の全艦艇に命令だ。北北東からやってくる日本の攻撃隊に備えよ。おそらく、1時間もしないうちにやってくるぞ」
スプルーアンスの部隊が日本軍機の迎撃の準備を始めると、もう一つの報告が入ってきた。ブローニング大尉が偵察機からの通信を報告した。
「第2の機動部隊から南南東方向に戦艦の部隊を確認しました。新型の『ヤマト』級戦艦が2隻、『ナガト』級が2、巡洋艦と駆逐艦多数」
「主力の戦艦が空母を主体とする機動部隊から分かれて、前面に出てきているというわけだな」
「おそらく我々の艦載機による攻撃を受けた場合に、前衛として攻撃を引き付ける役割です。しかもそれに加えて、追撃戦になれば全速で接近して、我が艦隊を砲撃するつもりです」
もはや日本海軍の作戦については、司令部の全ての士官が理解していた。それでもムーア大佐はこれから予想される戦闘について周知せざるを得ない。
「我々が攻撃隊を出撃させた間に、北方からの空母機動部隊が艦載機により、我々の部隊を攻撃してきます。空母の飛行甲板に被害を与えれば、航空機の脅威はなくなります。そうなれば、我が艦隊の戦艦部隊も攻撃されるでしょう。戦艦の数では日本側が不利ですが、モンスターの攻撃力と空からの攻撃を合わせて、有利に戦いを進めるつもりだと思われます」
「ムーア大佐、英艦隊との距離はどれほどか? このままでは、各個撃破されるぞ」
「フィリップス長官の部隊からの距離は、おそらく400マイル(644km)はあるでしょう。航空機の飛行を前提としても、連携するには少しばかり遠すぎます。我々の手元の戦力だけでこの場をしのぐしかありません。『コロラド』級の速度を考えると、日本の戦艦から逃げることもできそうにありません。それとも、低速戦艦を切り離して、25ノット以上の艦だけで艦隊を編制しますか?」
「艦隊を2分すれば低速艦隊をおとりにして、高速艦隊だけが逃げるということになりかねない。それに、たとえ全力で退避したとしても、日本航空機の攻撃圏内からは逃れられないぞ。『コロラド』級を切り捨てるような行動はもちろん採用しない。我々の全兵力で最善を尽くすまでだ」
すぐにスプルーアンス少将の予想は現実になった。「サウスダコタ」のレーダーが北方から接近する編隊を数分間捉えた。
「赤城」飛行長の友永少佐は、攻撃隊の最後尾を飛行していた。彼が搭乗していたのは、電子装備搭載機に改修された偵察型天山だった。
電信員の村井一飛曹が、逆探の探知を報告した。
「米艦からの電波を1時方向から受信。電波の強度が増加中です」
友永少佐がすぐに命令する。
「電波妨害を開始しろ。電探は引き続き敵戦闘機の接近に注意してくれ」
電子機器搭載型の偵察型天山の電波妨害装置は、本土の戦いのときに一式陸攻が収集した米艦隊の周波数に合わせていた。もちろん、電探が送信する電波のパルスなどの変調方法も分析した結果に一致させている。
「やや遠いが、一航艦からも攻撃を仕掛けるぞ。米艦隊に向けて攻撃隊を発進させる」
連合艦隊司令部は、「青葉」の艦上で友軍と英軍及び米軍の艦隊の位置を把握していた。米艦隊が二航艦に向けて攻撃隊を発進させたことも、「瑞鶴」からの連絡でわかっていた。二航艦では英軍の迎撃戦が終盤となって、米攻撃隊は攻撃の途上にあるはずだ。米艦隊を攻撃できる絶好の機会だと山本大将は考えた。
山本長官の命令が伝達されて、一航艦司令部は一斉に行動を開始した。攻撃隊の準備は既に完了していて、攻撃開始の命令を待っていた。
角田長官の二航艦とは別行動をとっていた一航艦は、ソロモン諸島の最南端にあるサン・クリストバル島の東側海域に達していた。日本艦隊が南南西へと進んだのに対して、米艦隊が角田艦隊を捕捉するために北西へと進んだために、急速に相互の距離が減少していた。
この時の一航艦の空母は、「赤城」と「加賀」「蒼龍」「飛龍」から編制されていた。護衛の艦艇としては、「金剛」と「妙高」「那智」に加えて、10隻余りの駆逐艦が周囲を護衛していた。「大和」と「武蔵」及び「長門」級を主力とした第一戦隊は、一航艦からやや離れて全速で南方へと進出しつつあった。
南雲中将の命令により、4隻の空母から第一次攻撃隊が発進した。
第一次攻撃隊:烈風30機、零戦24機、彗星38機、天山18機、九七式艦攻21機、偵察型天山3機
偵察型天山は、対空及び対艦の電探を搭載している。攻撃隊に零戦と九七式艦攻が混在しているのは、「蒼龍」と「飛龍」の搭載機が更新できないからだ。全備で6トン級の天山の運用を可能とするためには、飛行甲板の強化と着艦制動装置の変更が必要だった。しかし、二航戦の空母は飛行甲板の面積から、天山搭載の判断が先送りされていた。そのおかげで飛行甲板の強度増加も未改修だった。
……
一方、スプルーアンス少将は艦隊の西側の海域への偵察を重点としたために、北方から下がってくる艦隊の発見が遅れた。それでも、接近してくる日二航戦を偵察型のTBFアベンジャーが発見した。
「北北東の方向、300マイル(483km)の地点に日本艦隊を発見しました。戦艦1、巡洋艦2、空母2を発見ています」
想定外の艦隊の登場にすぐにスプルーアンス少将が反応した。
「別行動の第2の機動部隊が現れたということか。この距離ならば、間違いなく我々は攻撃されることになるぞ」
ムーア大佐が答えた。
「おっしゃる通り、日本の機動部隊は攻撃隊を発進させられる距離まで接近しています。これは明らかに計画的な行動です。イギリス艦隊に接近した第1の機動部隊が我々を引き付けていました。その後に接近してきた第2の機動部隊は、我々だけを攻撃することを当初から目的としています」
「日本側の狙い通りに我々は行動していたということなのか? ヤマモトの策にはめられたというわけか?」
声には出さないが、ムーア大佐の表情が肯定している。相手の顔を見てから、スプルーアンス少将は顔をやや上げると声を大きくして命令した。
「部隊の全艦艇に命令だ。北北東からやってくる日本の攻撃隊に備えよ。おそらく、1時間もしないうちにやってくるぞ」
スプルーアンスの部隊が日本軍機の迎撃の準備を始めると、もう一つの報告が入ってきた。ブローニング大尉が偵察機からの通信を報告した。
「第2の機動部隊から南南東方向に戦艦の部隊を確認しました。新型の『ヤマト』級戦艦が2隻、『ナガト』級が2、巡洋艦と駆逐艦多数」
「主力の戦艦が空母を主体とする機動部隊から分かれて、前面に出てきているというわけだな」
「おそらく我々の艦載機による攻撃を受けた場合に、前衛として攻撃を引き付ける役割です。しかもそれに加えて、追撃戦になれば全速で接近して、我が艦隊を砲撃するつもりです」
もはや日本海軍の作戦については、司令部の全ての士官が理解していた。それでもムーア大佐はこれから予想される戦闘について周知せざるを得ない。
「我々が攻撃隊を出撃させた間に、北方からの空母機動部隊が艦載機により、我々の部隊を攻撃してきます。空母の飛行甲板に被害を与えれば、航空機の脅威はなくなります。そうなれば、我が艦隊の戦艦部隊も攻撃されるでしょう。戦艦の数では日本側が不利ですが、モンスターの攻撃力と空からの攻撃を合わせて、有利に戦いを進めるつもりだと思われます」
「ムーア大佐、英艦隊との距離はどれほどか? このままでは、各個撃破されるぞ」
「フィリップス長官の部隊からの距離は、おそらく400マイル(644km)はあるでしょう。航空機の飛行を前提としても、連携するには少しばかり遠すぎます。我々の手元の戦力だけでこの場をしのぐしかありません。『コロラド』級の速度を考えると、日本の戦艦から逃げることもできそうにありません。それとも、低速戦艦を切り離して、25ノット以上の艦だけで艦隊を編制しますか?」
「艦隊を2分すれば低速艦隊をおとりにして、高速艦隊だけが逃げるということになりかねない。それに、たとえ全力で退避したとしても、日本航空機の攻撃圏内からは逃れられないぞ。『コロラド』級を切り捨てるような行動はもちろん採用しない。我々の全兵力で最善を尽くすまでだ」
すぐにスプルーアンス少将の予想は現実になった。「サウスダコタ」のレーダーが北方から接近する編隊を数分間捉えた。
「赤城」飛行長の友永少佐は、攻撃隊の最後尾を飛行していた。彼が搭乗していたのは、電子装備搭載機に改修された偵察型天山だった。
電信員の村井一飛曹が、逆探の探知を報告した。
「米艦からの電波を1時方向から受信。電波の強度が増加中です」
友永少佐がすぐに命令する。
「電波妨害を開始しろ。電探は引き続き敵戦闘機の接近に注意してくれ」
電子機器搭載型の偵察型天山の電波妨害装置は、本土の戦いのときに一式陸攻が収集した米艦隊の周波数に合わせていた。もちろん、電探が送信する電波のパルスなどの変調方法も分析した結果に一致させている。
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