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第12章 珊瑚海海戦
12.7章 米艦隊への攻撃1
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「ワスプ」を発艦したシャーマン大尉の戦闘機隊は、東に向かっていた。母艦の防空指揮官から、日本の攻撃隊は、艦隊の北側を迂回して後方から接近しているとの連絡があったからだ。しかし、空母から命令を出していた指揮官が突然うろたえ始めた。
「レーダーが不調になった。無数の輝点が現れている。しばらくの間は、自分の目を頼りにしてくれ」
シャーマン大尉は、一瞬驚いたが事態をすぐに理解した。
(日本軍の電波妨害だろう。それでもレーダーがなかった3年前に戻るだけだ。日本軍が飛来する大まかな方角さえわかれば戦闘可能だ)
やがて、方位70度に日本軍の編隊が見えてきた。編隊の前方を護衛していたのは、「赤城」と「加賀」に最近配備された烈風だった。
(新型戦闘機が前面を飛行している。厳しい戦いになりそうだ)
この時点でスプルーアンス艦隊から、日本軍を迎撃したのは9機のF4Uと英空母から発進した18機のシーファイアだけだった。戦闘機の数が少ないのは、角田艦隊を攻撃するために第一次で34機、第二次で9機のF4Uを送り出してしまったためだ。
スピットファイアMk.Ⅴから改造されたシーファイアは、わざわざ「ビクトリアス」がヨーロッパからはるばる、運んできた機体だ。航続距離の短さから、攻撃隊には参加できず、艦隊防空専門の戦闘機になっていた。
シーファイアは、ロールスロイス・マーリン45が発揮する1,450馬力のおかげで、375マイル/時(603km/h)の速度を発揮できた。一方、昭和17年(1942年)になって正式化された烈風11型は、高度6,000mで340ノット(630km/h)で飛べる。イギリス製の艦戦は、ちょうど零戦と烈風の中間程度の性能だった。
「赤城」戦闘機隊の板谷少佐は前方に見えてきた、戦闘機の編隊に突撃を指示した。一航艦からは27機の烈風を二航艦に送り出していたが、「赤城」と「加賀」には40機近くの烈風が残っていた。そのうちの30機が、第一次攻撃隊の護衛についていた。
(前方に新型の空冷戦闘機、更にその後ろに液冷の戦闘機だな。米国の最新の機体と英国製の艦戦が出てきたということか)
戦闘機隊長は、軽くバンクしてから列機に指示した。
「零戦は攻撃隊から離れず護衛せよ。烈風隊は前方の戦闘機隊に向かう」
烈風隊は二手に別れて、F4Uとシーファイアに突撃していった。F4Uと烈風はほぼ速度が同等で、旋回性能では烈風が優れていた。一方、急降下の突っ込みはF4Uが優れていた。このため、15機の烈風と9機のF4Uの戦いは機数の多い烈風が優勢になっていった。
しかし、18機のシーファイアと15機の烈風の戦闘は機数の多い英国戦闘機が優位のはずだった。日本戦闘機が正面から接近すると、なんとシーファイアの1隊は、左側に水平旋回を開始した。ドイツ軍との戦闘経験から旋回戦で対抗しようとしたのだ。しかし、旋回主体の巴戦となれば、むしろ日本軍戦闘機が得意とする戦い方だ。
菊池一飛曹は、烈風の編隊から真っ先に飛び出すと、左に急旋回して後方に回り込もうとしているイギリス戦闘機の後方に機首を向けた。菊池一飛曹は烈風の空戦フラップを作動させながら、わずかに上昇しつつ急旋回していった。そのまま上方から、液冷戦闘機の後方に向けて、操縦席が真下を向くほどのロールをしながら緩降下していった。
降下しながら液冷戦闘機の後方につけると、背面姿勢のまま20mmと13mmを連射した。機銃弾が命中すると液冷戦闘機は簡単に火を吹き出して墜落していった。
一飛曹は、目標の炎上を確認するとすぐに、後方を飛行していた別の機体に目標を変えようとした。しかし、その機体は列機の川田二飛曹が既に撃墜していた。
烈風との戦いに巻き込まれなかった6機のシーファイアが彗星艦爆隊に向かっていった。しかし、爆撃隊の上空には、「飛龍」と「蒼龍」を発進した24機の零戦が待ち構えていた。
たちまち、残ったイギリス戦闘機は、降下してきた零戦に撃退された。
いたるところで垂直に立ち上がっている煙が見える。時間が経過すると、墜ちてゆくのは次第に米軍や英軍の機体が増えていった。機体の性能に加えて、数の優勢が勝敗を分けた。
……
阿部大尉は、彗星爆撃隊を米艦隊の後方へと編隊を迂回させた。結果的に艦隊の東側から接近することになった。米艦隊上空の戦闘機は烈風と零戦に向かってきた機体が全てだったようだ。それ以上の戦闘機はやってこなかった。西南西に向けて進むと縦列になって航行する「コロラド」型が左翼側に見えたが、空母を優先するために無視した。
遠方から高射砲の射撃が始まったが、砲弾が離れたところで爆発するだけでしばらくは爆炎が近づく気配がない。
(やはり、電波妨害の効果があるということか。事前の説明では3機の電子装置搭載の天山が追従しているということだったな。捜索電探と射撃管制電探の双方を妨害しているはずだ)
阿部大尉は一瞬、後ろを振り返った。爆撃隊のはるか後方に、ぼってりと腹部が膨らんだ電子機器を搭載した偵察型天山がついてきていた。
彗星艦爆隊が西に向けてしばらく飛行して行くと、輪形陣により護衛された2隻の空母が見えてきた。高射砲の射撃が猛烈になるがやはり、照準精度は良くないようだ。爆撃隊の近傍で爆発する高射砲弾は、わずかだけだ。
空母の輪形陣は前方に「ワスプ」、後方に「ビクトリアス」が縦列になって航行していた。
「後方の空母がおそらく『ビクトリアス』だ。その前方の空母は『ワスプ』だ。出撃前の指示通りに2群に別れて攻撃するぞ。高角砲に注意して散開しろ」
38機の彗星隊は24機と14機の編隊に分離した。大尉は、重厚な装甲防御がされた「ビクトリアス」により多く攻撃力を割り振るべきだと考えたのだ。それぞれの編隊が輪形陣を目指していった。
阿部大尉が引いた24機編隊は、「ビクトリアス」を目標と定めた。ところが空母に接近すると今度は高角砲弾の狙いがたちまち正確になった。
(電波妨害も英軍の電探には効果が薄いようだな。さすがに初めての相手の電波までは、妨害できるほどの詳細はわからなかったということか)
この時、艦隊の英艦艇は捜索レーダーにType281、対空砲の射撃管制にType282またはType285を使用していた。このうち米海軍のMark4と同じ仕様のType285は妨害されたが、それ以外のレーダーは波長が違うために影響がなかった。
「ビクトリアス」の輪形陣は、最も西方の先頭に英軽巡の「バーミンガム」、北方の右翼側に同じく防空巡洋艦の「クレオパトラ」と軽巡「ニューカッスル」、南方の左翼側に米重巡の「ヨーク」と防空巡洋艦の「ダイドー」が航行していた。東側の最後尾には米新型戦艦の「マサチューセッツ」が航行していた。
防空巡洋艦の「ダイドー」と「クレオパトラ」は英海軍の最新の両用砲である5.25インチ(13.3cm)砲をそれぞれ8門と10門、搭載していた。「ビクトリアス」の4.5インチ(10.2cm)高射砲と合わせて猛烈な射撃が始まった。英軍はレーダーによる管制も行って、短時間で狙いが正確になってゆく。
戦艦「マサチューセッツ」は、光学照準により20門の5インチ(12.7cm)砲の射撃を開始したが、近づけば次第に狙いが正確になった。それに加えて新たに装備されていた4連装のボフォース40mmの機関砲の激しい弾幕が爆撃機の接近を阻んだ。
英空母の上空へと接近する途中で、激しい対空砲火により6機の彗星が高射砲弾を受けて脱落した。残った18機の彗星は、空母の後半部を囲むように散開して急降下を開始した。
日本海軍は本土の戦いの経験から、艦爆が縦列になって爆撃する戦術を変更していた。一直線になって続けて降下する艦爆は、空中の同じ位置に照準を合わせることにより、高角砲や機関砲に次々と狙われることになる。そのため、攻撃目標を中心とした円周上に散った艦爆がなるべく同時に降下することで、対空砲火の被害を減らす戦術へと変えていた。
彗星隊の18機が2波に分離して輪形陣の中に侵入する間に、高射砲と40mm機関砲により更に2機が撃墜された。第一陣の10機が「ビクトリアス」を狙って投下した50番(500kg)爆弾は、4発が命中した。終速を上げて貫通力を増すために、1,000mというやや高い高度から投下された徹甲榴弾は、飛行甲板の3インチ(76mm)装甲板を貫通した。しかし、2発は格納庫下の缶室と機関室上面に張られた1インチ(25mm)装甲を貫通できずに格納庫内で爆発した。続いて1発が船体中央部の右舷側に命中した。艦橋を破壊しながら格納庫床下の1インチ装甲の上で爆発した。爆圧が、直近の右舷側に設けられていた煙路を破壊した。同時に格納庫内に火災が広がった。次に、後部エレベータに命中した1弾は、3インチ(76mm)装甲を破ると、非装甲の水平隔壁を貫通して舵機室脇の左舷側で爆発した。
4発の命中により、格納庫内が完全に破壊されると共に艦尾の左舷外壁に亀裂が発生して船体後部への浸水が始まった。
続いて第二陣の8機の彗星が英空母の上空から急降下爆撃を行った。半数の4発が命中して飛行甲板の装甲を破った。中央部に命中した1弾は、被害を受けていた煙路の近くに着弾したため、破孔から缶室に爆圧が広がった。残り3発は格納庫内で次々に爆発したが、1インチ(25mm)装甲に発生していた亀裂から機関室に爆風が吹き込んだ。
「ビクトリアス」は、6基のボイラーのうちの4基が破壊され、3つの機関のうちの2つが損傷した。缶室の損傷と合わせて、動いている推進器は、3軸のうちの1軸のみになった。
「レーダーが不調になった。無数の輝点が現れている。しばらくの間は、自分の目を頼りにしてくれ」
シャーマン大尉は、一瞬驚いたが事態をすぐに理解した。
(日本軍の電波妨害だろう。それでもレーダーがなかった3年前に戻るだけだ。日本軍が飛来する大まかな方角さえわかれば戦闘可能だ)
やがて、方位70度に日本軍の編隊が見えてきた。編隊の前方を護衛していたのは、「赤城」と「加賀」に最近配備された烈風だった。
(新型戦闘機が前面を飛行している。厳しい戦いになりそうだ)
この時点でスプルーアンス艦隊から、日本軍を迎撃したのは9機のF4Uと英空母から発進した18機のシーファイアだけだった。戦闘機の数が少ないのは、角田艦隊を攻撃するために第一次で34機、第二次で9機のF4Uを送り出してしまったためだ。
スピットファイアMk.Ⅴから改造されたシーファイアは、わざわざ「ビクトリアス」がヨーロッパからはるばる、運んできた機体だ。航続距離の短さから、攻撃隊には参加できず、艦隊防空専門の戦闘機になっていた。
シーファイアは、ロールスロイス・マーリン45が発揮する1,450馬力のおかげで、375マイル/時(603km/h)の速度を発揮できた。一方、昭和17年(1942年)になって正式化された烈風11型は、高度6,000mで340ノット(630km/h)で飛べる。イギリス製の艦戦は、ちょうど零戦と烈風の中間程度の性能だった。
「赤城」戦闘機隊の板谷少佐は前方に見えてきた、戦闘機の編隊に突撃を指示した。一航艦からは27機の烈風を二航艦に送り出していたが、「赤城」と「加賀」には40機近くの烈風が残っていた。そのうちの30機が、第一次攻撃隊の護衛についていた。
(前方に新型の空冷戦闘機、更にその後ろに液冷の戦闘機だな。米国の最新の機体と英国製の艦戦が出てきたということか)
戦闘機隊長は、軽くバンクしてから列機に指示した。
「零戦は攻撃隊から離れず護衛せよ。烈風隊は前方の戦闘機隊に向かう」
烈風隊は二手に別れて、F4Uとシーファイアに突撃していった。F4Uと烈風はほぼ速度が同等で、旋回性能では烈風が優れていた。一方、急降下の突っ込みはF4Uが優れていた。このため、15機の烈風と9機のF4Uの戦いは機数の多い烈風が優勢になっていった。
しかし、18機のシーファイアと15機の烈風の戦闘は機数の多い英国戦闘機が優位のはずだった。日本戦闘機が正面から接近すると、なんとシーファイアの1隊は、左側に水平旋回を開始した。ドイツ軍との戦闘経験から旋回戦で対抗しようとしたのだ。しかし、旋回主体の巴戦となれば、むしろ日本軍戦闘機が得意とする戦い方だ。
菊池一飛曹は、烈風の編隊から真っ先に飛び出すと、左に急旋回して後方に回り込もうとしているイギリス戦闘機の後方に機首を向けた。菊池一飛曹は烈風の空戦フラップを作動させながら、わずかに上昇しつつ急旋回していった。そのまま上方から、液冷戦闘機の後方に向けて、操縦席が真下を向くほどのロールをしながら緩降下していった。
降下しながら液冷戦闘機の後方につけると、背面姿勢のまま20mmと13mmを連射した。機銃弾が命中すると液冷戦闘機は簡単に火を吹き出して墜落していった。
一飛曹は、目標の炎上を確認するとすぐに、後方を飛行していた別の機体に目標を変えようとした。しかし、その機体は列機の川田二飛曹が既に撃墜していた。
烈風との戦いに巻き込まれなかった6機のシーファイアが彗星艦爆隊に向かっていった。しかし、爆撃隊の上空には、「飛龍」と「蒼龍」を発進した24機の零戦が待ち構えていた。
たちまち、残ったイギリス戦闘機は、降下してきた零戦に撃退された。
いたるところで垂直に立ち上がっている煙が見える。時間が経過すると、墜ちてゆくのは次第に米軍や英軍の機体が増えていった。機体の性能に加えて、数の優勢が勝敗を分けた。
……
阿部大尉は、彗星爆撃隊を米艦隊の後方へと編隊を迂回させた。結果的に艦隊の東側から接近することになった。米艦隊上空の戦闘機は烈風と零戦に向かってきた機体が全てだったようだ。それ以上の戦闘機はやってこなかった。西南西に向けて進むと縦列になって航行する「コロラド」型が左翼側に見えたが、空母を優先するために無視した。
遠方から高射砲の射撃が始まったが、砲弾が離れたところで爆発するだけでしばらくは爆炎が近づく気配がない。
(やはり、電波妨害の効果があるということか。事前の説明では3機の電子装置搭載の天山が追従しているということだったな。捜索電探と射撃管制電探の双方を妨害しているはずだ)
阿部大尉は一瞬、後ろを振り返った。爆撃隊のはるか後方に、ぼってりと腹部が膨らんだ電子機器を搭載した偵察型天山がついてきていた。
彗星艦爆隊が西に向けてしばらく飛行して行くと、輪形陣により護衛された2隻の空母が見えてきた。高射砲の射撃が猛烈になるがやはり、照準精度は良くないようだ。爆撃隊の近傍で爆発する高射砲弾は、わずかだけだ。
空母の輪形陣は前方に「ワスプ」、後方に「ビクトリアス」が縦列になって航行していた。
「後方の空母がおそらく『ビクトリアス』だ。その前方の空母は『ワスプ』だ。出撃前の指示通りに2群に別れて攻撃するぞ。高角砲に注意して散開しろ」
38機の彗星隊は24機と14機の編隊に分離した。大尉は、重厚な装甲防御がされた「ビクトリアス」により多く攻撃力を割り振るべきだと考えたのだ。それぞれの編隊が輪形陣を目指していった。
阿部大尉が引いた24機編隊は、「ビクトリアス」を目標と定めた。ところが空母に接近すると今度は高角砲弾の狙いがたちまち正確になった。
(電波妨害も英軍の電探には効果が薄いようだな。さすがに初めての相手の電波までは、妨害できるほどの詳細はわからなかったということか)
この時、艦隊の英艦艇は捜索レーダーにType281、対空砲の射撃管制にType282またはType285を使用していた。このうち米海軍のMark4と同じ仕様のType285は妨害されたが、それ以外のレーダーは波長が違うために影響がなかった。
「ビクトリアス」の輪形陣は、最も西方の先頭に英軽巡の「バーミンガム」、北方の右翼側に同じく防空巡洋艦の「クレオパトラ」と軽巡「ニューカッスル」、南方の左翼側に米重巡の「ヨーク」と防空巡洋艦の「ダイドー」が航行していた。東側の最後尾には米新型戦艦の「マサチューセッツ」が航行していた。
防空巡洋艦の「ダイドー」と「クレオパトラ」は英海軍の最新の両用砲である5.25インチ(13.3cm)砲をそれぞれ8門と10門、搭載していた。「ビクトリアス」の4.5インチ(10.2cm)高射砲と合わせて猛烈な射撃が始まった。英軍はレーダーによる管制も行って、短時間で狙いが正確になってゆく。
戦艦「マサチューセッツ」は、光学照準により20門の5インチ(12.7cm)砲の射撃を開始したが、近づけば次第に狙いが正確になった。それに加えて新たに装備されていた4連装のボフォース40mmの機関砲の激しい弾幕が爆撃機の接近を阻んだ。
英空母の上空へと接近する途中で、激しい対空砲火により6機の彗星が高射砲弾を受けて脱落した。残った18機の彗星は、空母の後半部を囲むように散開して急降下を開始した。
日本海軍は本土の戦いの経験から、艦爆が縦列になって爆撃する戦術を変更していた。一直線になって続けて降下する艦爆は、空中の同じ位置に照準を合わせることにより、高角砲や機関砲に次々と狙われることになる。そのため、攻撃目標を中心とした円周上に散った艦爆がなるべく同時に降下することで、対空砲火の被害を減らす戦術へと変えていた。
彗星隊の18機が2波に分離して輪形陣の中に侵入する間に、高射砲と40mm機関砲により更に2機が撃墜された。第一陣の10機が「ビクトリアス」を狙って投下した50番(500kg)爆弾は、4発が命中した。終速を上げて貫通力を増すために、1,000mというやや高い高度から投下された徹甲榴弾は、飛行甲板の3インチ(76mm)装甲板を貫通した。しかし、2発は格納庫下の缶室と機関室上面に張られた1インチ(25mm)装甲を貫通できずに格納庫内で爆発した。続いて1発が船体中央部の右舷側に命中した。艦橋を破壊しながら格納庫床下の1インチ装甲の上で爆発した。爆圧が、直近の右舷側に設けられていた煙路を破壊した。同時に格納庫内に火災が広がった。次に、後部エレベータに命中した1弾は、3インチ(76mm)装甲を破ると、非装甲の水平隔壁を貫通して舵機室脇の左舷側で爆発した。
4発の命中により、格納庫内が完全に破壊されると共に艦尾の左舷外壁に亀裂が発生して船体後部への浸水が始まった。
続いて第二陣の8機の彗星が英空母の上空から急降下爆撃を行った。半数の4発が命中して飛行甲板の装甲を破った。中央部に命中した1弾は、被害を受けていた煙路の近くに着弾したため、破孔から缶室に爆圧が広がった。残り3発は格納庫内で次々に爆発したが、1インチ(25mm)装甲に発生していた亀裂から機関室に爆風が吹き込んだ。
「ビクトリアス」は、6基のボイラーのうちの4基が破壊され、3つの機関のうちの2つが損傷した。缶室の損傷と合わせて、動いている推進器は、3軸のうちの1軸のみになった。
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