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第12章 珊瑚海海戦
12.8章 米艦隊への攻撃2
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「ワスプ」を護衛していた輪形陣は、西方の先頭は新型戦艦の「サウスダコタ」、北側に戦艦「インディアナ」と防空巡洋艦「サンファン」、南側に同じく防空巡洋艦の「サンディエゴ」、後方に重巡「ニューオーリンズ」から構成されていた。
14機の彗星が「ワスプ」の輪形陣に接近して行くと5インチ(12.7cm)砲の猛烈な対空射撃が始まった。相変わらず天山は電波妨害を続けていたが、艦艇が搭載していたレーダーの方が圧倒的に電波の出力が大きい。そのため、編隊が接近すれば妨害された雑音の中から、目標からの正しい反射波を抽出することができた。
彗星隊が接近してゆくと、対空砲火の狙いが急速に正確になってきた。彗星隊は「ワスプ」の上空に達するまでに、4機が撃墜された。急降下に入ってからも2機が炎を噴きながら墜ちてゆく。最終的に8機の彗星が「ワスプ」に向けて50番爆弾を投下した。
船体の前部から後部までの間に4発の爆弾が命中した。ワシントン条約による排水量の制限の中で搭載機数を70機以上とした結果、「ワスプ」は防御に十分な重量を配分することが不可能だった。その結果、船体の水平防御は機関室の上部に1.25インチ(32mm)の装甲板を取り付けるのがやっとだった。
船体の中央近くに命中した2発の爆弾は、1.25インチ(32mm)装甲を簡単に貫通して、缶室と後部機関室で爆発した。それでも、機関室と缶室を前後に離したおかげで、全ての機関が停止することは免れた。船体前方から艦首にかけてに命中した2発は水平隔壁を次々に貫通して船底近くで爆発した。船体に亀裂が発生して浸水が始まった。前部船体の下方に配置されていたガソリンタンクも爆圧を受けて裂け目が発生した。
18機の天山と21機の九七式艦攻から編制された雷撃隊は、護衛の戦闘機隊の活躍のおかげで1機も欠けることなく、米英連合艦隊に接近できていた。
天山攻撃隊は、輪形陣に護衛された「ビクトリアス」を攻撃目標と定めた。艦隊後方の東側からやや南下して、「ビクトリアス」の南南東方向から接近していった。雷撃のために低空へと降下してゆく途中で、輪形陣南方の防空巡洋艦の「ダナイー」と後方の戦艦「マサチューセッツ」が猛烈な対空砲火を浴びせてきた。米軍の40mmのボフォース機関砲と英巡洋艦からのポンポン砲も射撃に加わって更に対空砲火は激しくなった。
天山隊がかろうじて「ヨーク」と「ダナイー」の間を抜けて、空母への雷撃位置に達したときには、5機が撃墜されていた。雷撃態勢に入ることのできた13機が「ビクトリアス」の左舷側からいっせに魚雷を投下した。投下直後に、煙を引いていた1機が海面に突っ込んだ。
「ビクトリアス」の左舷に投下された13本の魚雷は、3本が船体の前部から後部にかけて直撃した。更に3本が空母の航跡を横切って右舷側の艦尾に命中した。空母に命中しなかった魚雷はそのまま、北側に抜けてゆくと、右側の輪形陣を構成していた「クレオパトラ」の航跡を感知して防空巡洋艦の右舷に命中した。「ビクトリアス」の前方を抜けた1本は空母の斜め前方を航行していた軽巡「ニューカッスル」の左舷に命中した。続いて1本が、「ニューカッスル」の航跡に入ってから、ジグザグに走行して左舷に命中した。
「ビクトリアス」は舷側に3層の防御区画を有していたが、隔壁の間隔が狭く日本の魚雷弾頭を完全に防御することはできなかった。爆発の破孔により機関室と艦尾の機器室への大規模な浸水が始まると、船体後部が急速に沈んでいった。既に爆弾で損傷していた空母にとって、一度に6本の被雷は限界を超えていた。格納庫からの火災と左舷の浸水が合わさって、傾斜しながら沈んでいった。
船体後部の右舷側に被雷した「クレオパトラ」も、浸水を止めることができず右舷に傾斜しながら沈下していった。6,000トンクラスの軽巡は、魚雷の破孔からの浸水を防ぐことはできなかった。2本の魚雷を受けた「ニューカッスル」も海上に停止して、左舷側に傾きながら、喫水が深くなっていった。
同じころ、21機の九七式艦攻は「ワスプ」を擁する輪形陣に向かっていた。艦隊の南へと迂回して「ワスプ」の左舷側の真横から接近していった。輪形陣前方を護衛していた「サウスダコタ」と南側の防空巡洋艦「サンディエゴ」、後方の「ニューオーリンズ」が猛烈に撃ってきた。「サウスダコタ」は増備されたばかりの40mmボフォース砲も撃ってきた。2隻の新型戦艦と防空巡洋艦の対空砲はレーダー照準が妨害されても強烈な威力を発揮した。
高度を下げようとしていた艦攻が次々と炎を噴きながら海上に墜ちていった。対空砲火により8機の艦攻が撃墜されたが、艦攻隊は13本の魚雷を「ワスプ」の右舷に向けて投下することに成功した。爆撃による被害で速度が低下していた空母に対して4本が右舷に直撃した。しばらくして、航跡を追尾して戻ってきた2本が船体後部に命中した。
空母を外れた7本は、反対側の北方向を航行していた艦艇の航跡を捉えた。1本が防空巡洋艦の「サンファン」の右舷に命中した。北側を航行していた戦艦「インディアナ」の航跡に入ったのは2本の魚雷だった。Uターンして戻った魚雷が相次いで戦艦の右舷中央部と後部に命中した。「ワスプ」の艦首より前方を通過した魚雷は、先頭の「サウスダコタ」の航跡を捉えた。ジグザグ走行により、「サウスダコタ」の右舷後部に1本が命中した。
「ワスプ」の右舷と艦尾で魚雷が次々爆発すると、次の瞬間、船体前部の飛行甲板全てが吹き飛ぶような大爆発が起こった。爆弾の命中で艦底に漏れていたガソリンの蒸気が魚雷の爆発により引火したのだ。右舷に傾斜した空母は、急速に沈んでいった。
魚雷の爆発は、軽巡「サンファン」にとって、大きな負担になった。舷側の防御が破壊されて、缶室に大量の浸水が発生した。右舷への浸水を阻止することは不可能になってしまった。次第に右舷への傾斜が強くなると、海上に横転してしまった。
「インディアナ」は、4層の水雷防御区画に加えて3層目にテーパーした約100mmの傾斜装甲を有していた。右舷中央近くに命中した魚雷の爆発に対しては、水中防御が有効に機能して防いだ。防御区画への浸水は生じたが、缶室と機関への被害は発生していない。また、艦尾近くの区間に命中したもう1本の魚雷は、船体後部に浸水を発生させたが、処置可能な程度の浸水だった。右舷への僅かな傾斜も反対舷への注水でまもなく回復した。浸水と海中での抵抗から速度が7ノットほど低下したが、「インディアナ」の戦艦としての戦闘力には大きな影響を及ぼさなかった。
一方、「サウスダコタ」は、魚雷が命中した第三砲塔直後でも3層の水雷防御を有していた。傾斜装甲板の内側にも爆圧を緩和する防御空間を備えていた。防御区画内への浸水は発生したが、内側の機関や弾薬庫には被害が発生していない。
14機の彗星が「ワスプ」の輪形陣に接近して行くと5インチ(12.7cm)砲の猛烈な対空射撃が始まった。相変わらず天山は電波妨害を続けていたが、艦艇が搭載していたレーダーの方が圧倒的に電波の出力が大きい。そのため、編隊が接近すれば妨害された雑音の中から、目標からの正しい反射波を抽出することができた。
彗星隊が接近してゆくと、対空砲火の狙いが急速に正確になってきた。彗星隊は「ワスプ」の上空に達するまでに、4機が撃墜された。急降下に入ってからも2機が炎を噴きながら墜ちてゆく。最終的に8機の彗星が「ワスプ」に向けて50番爆弾を投下した。
船体の前部から後部までの間に4発の爆弾が命中した。ワシントン条約による排水量の制限の中で搭載機数を70機以上とした結果、「ワスプ」は防御に十分な重量を配分することが不可能だった。その結果、船体の水平防御は機関室の上部に1.25インチ(32mm)の装甲板を取り付けるのがやっとだった。
船体の中央近くに命中した2発の爆弾は、1.25インチ(32mm)装甲を簡単に貫通して、缶室と後部機関室で爆発した。それでも、機関室と缶室を前後に離したおかげで、全ての機関が停止することは免れた。船体前方から艦首にかけてに命中した2発は水平隔壁を次々に貫通して船底近くで爆発した。船体に亀裂が発生して浸水が始まった。前部船体の下方に配置されていたガソリンタンクも爆圧を受けて裂け目が発生した。
18機の天山と21機の九七式艦攻から編制された雷撃隊は、護衛の戦闘機隊の活躍のおかげで1機も欠けることなく、米英連合艦隊に接近できていた。
天山攻撃隊は、輪形陣に護衛された「ビクトリアス」を攻撃目標と定めた。艦隊後方の東側からやや南下して、「ビクトリアス」の南南東方向から接近していった。雷撃のために低空へと降下してゆく途中で、輪形陣南方の防空巡洋艦の「ダナイー」と後方の戦艦「マサチューセッツ」が猛烈な対空砲火を浴びせてきた。米軍の40mmのボフォース機関砲と英巡洋艦からのポンポン砲も射撃に加わって更に対空砲火は激しくなった。
天山隊がかろうじて「ヨーク」と「ダナイー」の間を抜けて、空母への雷撃位置に達したときには、5機が撃墜されていた。雷撃態勢に入ることのできた13機が「ビクトリアス」の左舷側からいっせに魚雷を投下した。投下直後に、煙を引いていた1機が海面に突っ込んだ。
「ビクトリアス」の左舷に投下された13本の魚雷は、3本が船体の前部から後部にかけて直撃した。更に3本が空母の航跡を横切って右舷側の艦尾に命中した。空母に命中しなかった魚雷はそのまま、北側に抜けてゆくと、右側の輪形陣を構成していた「クレオパトラ」の航跡を感知して防空巡洋艦の右舷に命中した。「ビクトリアス」の前方を抜けた1本は空母の斜め前方を航行していた軽巡「ニューカッスル」の左舷に命中した。続いて1本が、「ニューカッスル」の航跡に入ってから、ジグザグに走行して左舷に命中した。
「ビクトリアス」は舷側に3層の防御区画を有していたが、隔壁の間隔が狭く日本の魚雷弾頭を完全に防御することはできなかった。爆発の破孔により機関室と艦尾の機器室への大規模な浸水が始まると、船体後部が急速に沈んでいった。既に爆弾で損傷していた空母にとって、一度に6本の被雷は限界を超えていた。格納庫からの火災と左舷の浸水が合わさって、傾斜しながら沈んでいった。
船体後部の右舷側に被雷した「クレオパトラ」も、浸水を止めることができず右舷に傾斜しながら沈下していった。6,000トンクラスの軽巡は、魚雷の破孔からの浸水を防ぐことはできなかった。2本の魚雷を受けた「ニューカッスル」も海上に停止して、左舷側に傾きながら、喫水が深くなっていった。
同じころ、21機の九七式艦攻は「ワスプ」を擁する輪形陣に向かっていた。艦隊の南へと迂回して「ワスプ」の左舷側の真横から接近していった。輪形陣前方を護衛していた「サウスダコタ」と南側の防空巡洋艦「サンディエゴ」、後方の「ニューオーリンズ」が猛烈に撃ってきた。「サウスダコタ」は増備されたばかりの40mmボフォース砲も撃ってきた。2隻の新型戦艦と防空巡洋艦の対空砲はレーダー照準が妨害されても強烈な威力を発揮した。
高度を下げようとしていた艦攻が次々と炎を噴きながら海上に墜ちていった。対空砲火により8機の艦攻が撃墜されたが、艦攻隊は13本の魚雷を「ワスプ」の右舷に向けて投下することに成功した。爆撃による被害で速度が低下していた空母に対して4本が右舷に直撃した。しばらくして、航跡を追尾して戻ってきた2本が船体後部に命中した。
空母を外れた7本は、反対側の北方向を航行していた艦艇の航跡を捉えた。1本が防空巡洋艦の「サンファン」の右舷に命中した。北側を航行していた戦艦「インディアナ」の航跡に入ったのは2本の魚雷だった。Uターンして戻った魚雷が相次いで戦艦の右舷中央部と後部に命中した。「ワスプ」の艦首より前方を通過した魚雷は、先頭の「サウスダコタ」の航跡を捉えた。ジグザグ走行により、「サウスダコタ」の右舷後部に1本が命中した。
「ワスプ」の右舷と艦尾で魚雷が次々爆発すると、次の瞬間、船体前部の飛行甲板全てが吹き飛ぶような大爆発が起こった。爆弾の命中で艦底に漏れていたガソリンの蒸気が魚雷の爆発により引火したのだ。右舷に傾斜した空母は、急速に沈んでいった。
魚雷の爆発は、軽巡「サンファン」にとって、大きな負担になった。舷側の防御が破壊されて、缶室に大量の浸水が発生した。右舷への浸水を阻止することは不可能になってしまった。次第に右舷への傾斜が強くなると、海上に横転してしまった。
「インディアナ」は、4層の水雷防御区画に加えて3層目にテーパーした約100mmの傾斜装甲を有していた。右舷中央近くに命中した魚雷の爆発に対しては、水中防御が有効に機能して防いだ。防御区画への浸水は生じたが、缶室と機関への被害は発生していない。また、艦尾近くの区間に命中したもう1本の魚雷は、船体後部に浸水を発生させたが、処置可能な程度の浸水だった。右舷への僅かな傾斜も反対舷への注水でまもなく回復した。浸水と海中での抵抗から速度が7ノットほど低下したが、「インディアナ」の戦艦としての戦闘力には大きな影響を及ぼさなかった。
一方、「サウスダコタ」は、魚雷が命中した第三砲塔直後でも3層の水雷防御を有していた。傾斜装甲板の内側にも爆圧を緩和する防御空間を備えていた。防御区画内への浸水は発生したが、内側の機関や弾薬庫には被害が発生していない。
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