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第17章 外伝(ドイツ本土防空編)
17.6章 アメリカ陸軍航空隊の戦い1
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アメリカ第8航空軍のスパーツ少将は、イギリスに派遣されてから、小規模な爆撃作戦を何度か繰り返してきた。その結果、ヨーロッパでの本格的な攻勢を可能とする練度は十分向上できたと判断した。彼は、次の段階の作戦である本格的な爆撃作戦への移行を決断した。8月17日になって、48機のB-17とB-24の編隊は、フランスのルーアン操車場に向けて離陸を開始した。
ドイツ軍の防空態勢が強力なことをいやになるほど体験していたイギリス空軍は、大規模な爆撃作戦を実行するならば、各種の電波妨害策を使うべきだとアメリカ軍に助言していた。スパーツ少将は熟慮した結果、ウィンドウの活用を決めた。彼はレーダー波を反射する雲を使って、戦闘機を誘引するおとりのように使えるだろうと考えた。しかし、それ以外のレーダーの電波妨害機器の搭載はためらった。装置の追加で搭載可能な爆弾が減ることを嫌ったことが表向きの理由だ。しかし、実際にはイギリスが使用している電波妨害機器の効果を疑っていた。ドイツ軍の夜間迎撃が成果を挙げている状況では、イギリス空軍の対策の有効性を疑うのもやむを得ない。
1942年8月には、ヒンメルベット警戒網は、ドイツ本国の北側からベルギー北方を経てフランスのルーアン北方まで拡張されていた。警戒区域が拡張されたおかげで、ドイツ軍のレーダー警戒網はフランスを目標とした作戦でも有効に機能した。更に、沿海部のレーダーと上空を警戒していたFw200警戒機のおかげで、ドーバー海峡上空でもアメリカ軍爆撃機の位置と飛行方向を知ることができた。
探知したアメリカ軍の侵攻は、電子計算機の通信網を経由して、北フランスからベルギー、オランダのドイツ空軍部隊を統括している第3航空艦隊の司令部に報告された。3航艦の司令部もオペラハウスと類似した設備が設置されて、戦闘機隊の指揮官が待機していた。
第3航空艦司令部のシュペルレ元帥は、大規模な爆撃隊が侵攻してきたとの報告を受けて、配下の第2戦闘航空団(JG2)と第26戦闘航空団(JG26)に迎撃を命じた。
アメリカ爆撃隊が目標としたルーアンは、航続距離の短いスピットファイアでも護衛可能な距離だった。第8航空軍の作戦を成功させるために、イギリス空軍もスピットファイアⅨによる護衛を優先した。
キングカム少佐は、新たに配備された性能向上型のスピットファイアをかなり気に入っていた。この機体の性能ならばFw190Aと戦うことになっても、かなり有利に戦いを進められるだろう。しかも、今回の作戦は排気タービン付きのB-17の巡航高度に合わせて、高高度が戦闘空域だ。爆撃隊の飛行高度は、Fw190Aの性能が低下してくる2,4000フィート(7,315m)だった。この高度ならば、なおさら2段過給機を備えたスピットファイアⅨが有利に戦えるはずだ。
ドーバー海峡を超えた直後に、早くも前方からドイツ軍の戦闘機隊が南東方向から上昇してきた。ベルギー側から発進したドイツ軍の戦闘機は2群に分かれていて、それぞれが10機程度の編隊だった。そのうちの1隊が前方から爆撃隊に接近していった。
「前方からドイツ軍の戦闘機。おそらく液冷のメッサーだろう。敵戦闘機隊を排除する」
少佐は、先行してきた戦闘機隊は、機体のシルエットからBf109と判断した。おそらく中隊だろう。十数機の編隊に見える。
……
JG26のプリラー少佐は、操縦席の中でにやりとしていた。新型のFw190Dは、環境が整っているドイツ本土の部隊から配備が始まった。そのおかげで、JG26も新規配備の部隊に含まれることになった。この機体ならば、たとえ相手が改良型のスピットファイアであっても優位に戦えるだろう。
少佐は、レーダーによる誘導が使えるという地の利を生かそうと考えていた。
「敵の編隊はスピットだ。後方から敵編隊の後方に接近したい。雲に隠れて接近するので誘導を頼む。後方の第2中隊はそのまま前進せよ」
Bf109Fの編隊と分離して飛行したFw190Dの中隊に対しては、少佐の期待通り、後方を飛行していたKG200の早期警戒機が誘導してくれた。Fw190Dの編隊は、6,000mあたりの断雲に隠れながらイギリス戦闘機よりやや低いところを迂回して、後方に抜けるとぐんぐん上昇を始めた。エンジンをJumo213に換装した長鼻のドーラは、プリラー少佐の期待通りの性能を発揮していた。高度7,000mになってもFw190Dはどんどん上昇していった。
(やはり、フォッケウルフのエンジン交換は、成功だったな。アントンからドーラになって、高高度での性能は大きく改善された。後方のBf109Fはそのまま直進したおかげで、先にスピットに発見されるだろう。だが大丈夫だ。その間に我々は後方に回り込んでイギリス戦闘機を攻撃する)
プリラー少佐は新型のFw190Dでも4,000m以下の高度であれば、従来のFw190Aとそれほど差がないと感じていた。しかし、高度が上がれば話は別だ。明らかにJumo213の性能によりFw190Dが高速だ。
「スピットの編隊の後方に出た。これから攻撃を開始する」
しかも、今回はレーダーによる誘導で有利な態勢で背後から接近できた。プリラー少佐の編隊は、スピットファイアの編隊後方から上昇していった。既にスピットファイア編隊の後姿が見えていた。
「前方のスピットを攻撃する。突撃せよ。パワーブーストを入れろ」
上昇してきたFw190Dが水メタノール噴射でエンジン出力をぞうかさせて、後方から一気に加速しながら接近してくると、さすがにイギリス軍も気づいた。
いち早く後方のドイツ軍機に気づいたボーモント軍曹が、大声で叫んだ。
「後方に敵機だ! フォッケウルフが後方から接近してくるぞ」
この声で、スピットファイアのパイロット全員が後方を振り返った。一刻も早く回避しなければ、撃墜される位置関係だ。一斉に退避のための機動が始まった。しかし、Fw190Dは高度2,4000フィート(7,315m)でも、MW50パワーブースト(水メタノール噴射)を使えば、690km/hで飛行できた。一方、スピットファイアⅨは、660km/hが限界だった。
既にMW50を使って加速しているFw190Dから逃げられた機体はそれほど多くはなかった。旋回や急降下が遅れた編隊後方の2機がまず撃墜された。反射的に急降下に入った機体も、既に加速していたFw190Dが後方から追尾してきて撃墜した。
プリラー少佐が狙った機体は、緩い角度の上昇でFw190Dを引き離そうとした。速度差で距離をとった後に水平旋回で後方にまわって攻撃に転じるつもりだ。
(今までのFw190Aであれば、距離を開けて逃げられるだろう。しかし、今日はそうはいかない。私の乗機が新型機だからだ)
パワーブーストにより、どんどん加速した少佐のFw190Dは距離を縮めると、後方からの1連射で20mm弾と13mm弾を命中させた。少佐機の後方から、別のスピットファイアⅨが攻撃しようと接近してきていたが、僚機が上昇してきて、機銃弾を浴びせかけた。結果的に2機のスピットファイアが炎の尾を引いて墜落していった。
周囲でも激しい空中戦が始まっていた。スピットファイアⅨは機数で優っていたが、最初の攻撃で編隊がばらばらになってしまった。しかもフォッケウルフからの攻撃回避を優先していると、上空からBf109Fが降下攻撃を仕掛けてきた。戦闘機の空戦では、徐々にドイツ軍が優勢になっていた。
キングカム少佐は、接近戦になったことで攻撃してきた機体が新型のフォッケウルフだということを認識した。明らかに機首が長くなって、エンジンを乗せ替えている。フォッケウルフの速度と高空性能が向上していることも、エンジン交換と符合する。
少佐の機体は1発の20mm弾を左翼に受けて激しい振動が発生していたが、何とかイギリスに向けて飛び続けていた。既に無事に基地に戻ることが最優先事項になっている。
(空中戦を通して、新型のフォッケウルフがどの程度の性能なのかおおむね把握したつもりだ。なんとしても、帰投して新型機の登場を報告しなければならない)
その頃、爆撃機に迫っていたのは、北部フランスを基地としていたJG2の戦闘機隊だった。
大陸上空に侵入するとB-17の編隊は、ウィンドウの散布を開始した。しかし、イギリス空軍への迎撃戦でウィンドウによる妨害を経験していたドイツ軍は、大きく混乱することはなかった。電波妨害を受けてレーダーの設定を変更したり、通信回線から他の基地からの情報を受けたり、既に経験済みの対策で混乱を回避した。地上のヒンメルベット局は引き続き友軍の戦闘機をB-17の編隊に向けて誘導できた。
Ⅱ/JG2(第1戦闘航空団/第2飛行隊)のライエ大尉が率いていたFw190Aの中隊は、イギリスの戦闘機に妨害されることなく爆撃機の編隊に接敵できた。しかも、フォッケウルフの戦闘機は、R2改修により両翼下面に30mm機関砲を増設していた。
ドイツ軍機の装備を変更する方法には2種類が存在する。一つは、U改修と呼ばれる工場の生産ライン上で、装備を追加搭載する改修法だ。二つ目は、R改修であり、改修用のキットを現地部隊に届けた後は整備隊が装備を追加する方式だ。大尉の機体はR2仕様の現地改修により、30mm機関砲のMK108を両翼下面にそれぞれ1門ずつ装備していた。1,800馬力超のエンジンのFw190Aならば、装備追加の負担も小さいと考えられた。
フォッケウルフは、8,000m程度まで上昇してから、下方の爆撃隊に向けて急降下すると、750km/h以上の高速に達した。Fw190A型は高空性能が劣っていると言っても、8,000mで570km/h以上は出せる。B-17やB-24が相手ならば、十分攻撃可能だ。
爆撃機の直上からの急降下に対して、動力銃座は照準が可能だったが、高速の戦闘機に対しての追尾精度は低下した。12.7mm機銃の強力な防御武装を有するB-17やB-24に対して、頭上からの攻撃法は、ドイツ軍戦闘機隊が検討してきた攻撃法の一つだった。しかも急降下攻撃であれば、MK108の弾道が山なりになるという欠点も重力により顕著にならない。
ライエ大尉が、急降下攻撃で20mmと30mmの機銃を射撃すると、B-17の胴体中央部から右翼にかけて10発以上の機銃弾が命中した。爆発炎が晴れると、胴体と主翼に1メートルを超える破孔が生じた。右翼の破孔からは、激しく白い雲が後方に噴き出している。しばらくするとエンジンの排気を受けて右翼のガソリンの霧は激しい炎に変わると、そのまま機首を下げて墜落していった。
大尉はすぐに後方を飛行していた別のB-17に目標を移した。急降下から機首を上げて上昇すると、B-17の腹部を狙って射撃を開始した。胴体後部下面の球形銃座から猛烈に撃ってくる。しかも隣のB-17からも射撃してきた。イギリス軍とは異なり、アメリカの爆撃隊は相互の支援が可能なように密接な編隊を構成していた。
大尉は、後方からやや長めの射撃を行った。山なりになった曳光弾がB-17の前部に吸い込まれてゆく。B-17の前部胴体が爆発炎に包まれる。同時に大尉は、ガンガンと激しい振動を感じた。考えるよりも早く反射的に機首を下げる。降下しながら、すぐに自分の手足と体を確認したが怪我はないようだ。左翼側を胴体前半が激しく破壊されたB-17が墜落してゆく。2機目の撃墜を喜ぶ間もなく、風防の前面が噴き出してきたこげ茶色の液体におおわれた。
(これはエンジンオイルだ。すぐにプロペラが止まるぞ)
ライエ大尉のFw190Aは、フランスとベルギーの国境付近に不時着した。
(どこに降りても我が国の支配領域なので、問題ないだろう。パルチザンに気を付けていれば、明日には基地に戻れるはずだ)
……
B-24爆撃隊には、通常型のFw190Aの編隊が攻撃を加えていた。20mm機銃を4挺備えたFw190Aは、接近さえできれば、重武装により容易にアメリカの四発爆撃を撃墜可能だった。ドイツ軍機から繰り返し攻撃を受けて、数機のB-24が黒煙を引いて墜ちていった。アメリカ軍の搭乗員は圧倒的にB-17を好んでいた。B-17が被害を受けても粘り強く飛んでいられる機体の強度と、スピンに入りにくい安定度が優れていたからだ。
アメリカの爆撃隊が目標のルーアンに接近すると、お決まりのように高射砲が射撃してきた。但し、ドイツ本土とは違い、展開していた高射砲部隊は3個中隊から構成された1個大隊だった。そのため、射撃した高角砲は12門だった。
それでもレーダーによる測距と計算機を利用した照準により、高度7,500mの編隊に対して正確に射撃できた。爆撃編隊の中で近接信管の高射砲弾が次々と爆発すると、黒煙を吐き出す機体が現れた。煙の濃度がどんどん濃くなってゆくと機首を落として墜落していった。
激しい高射砲の弾幕を潜り抜けた40機近くの機体が、爆撃目標の操車場を捉えて投弾した。
爆撃が終了して帰投できたのは、出撃した48機の爆撃機のうち32機だった。しかも、撃墜されたのとほぼ同数の機体が二度と出撃できないほどの大きな被害を受けていた。今まで1つの作戦では決して発生しなかった2桁の被害だ。しかし、432発の500lb(227kg)爆弾を投下した結果、ノルデン爆撃照準器の効果により、2割が細長い目標の敷地内に着弾した。目標の完全な破壊は無理だったが、4割以上の施設に損害を与えられたのは昼間爆撃の効果だろう。
スパーツ少将は想定外に被害が大きかったことは認めたが、多数の爆撃機による昼間の精密爆撃という基本方針は間違っていなかったと考えた。爆撃の成果については、目的をやや下回ったが、有効だったと主張できる。元々、一度の攻撃では完全にルーアンの目標は破壊できないだろうと想定していた。従って、半分の破壊でも大きく想定成果を大きく下回ったわけではないとの判定だった。
それでも、アメリカ軍は数%の損失を想定していたので、被害は想定外に大きかったことを認めざるを得なかった。少将は爆撃隊の訓練不足と護衛戦闘機の連携の悪さを原因と考えた。
まず爆撃隊の隊形を防御力を高めるように進歩させる必要がある。6月から、ヨーロッパに来ていたルメイ大佐に隊形の改善を検討させた。大佐はいくつかの形態を実際に飛行させて実験した。最終的には、立体的に高度を変えた小隊を組み合わせて、18機を単位としたコンバットボックス型の編隊を完成させた。
護衛戦闘機については、そもそも機数が不足していた。第8空軍としてはイギリス空軍の戦闘機だけに頼るわけにはいかない。イングランドに到着し始めていたP-38ライトニングによる護衛を決定した。双発機のP-38は、スピットファイアよりもはるかに広い範囲の護衛ができるというメリットもあった。大型増槽を装備すればベルリンまでを行動範囲に収められた。
しかも、実戦の分析からは、スピットファイアが爆撃隊とはかなり離れた空域で戦っていたことが判明した。爆撃編隊から離れた間に攻撃を受けたケースも多かった。実際にはドイツ側が意図的に、戦闘機との空戦を先行させて、爆撃隊から護衛戦闘機を切り離したのだが、護衛戦闘機の行動が不適切だと判断されたのだ。
訓練のために、スパーツ少将は、北海沿岸のレーダー施設や近郊の鉄道などに対して、小規模な攻撃を実行させた。爆撃隊の練度を向上させる必要があったのだ。スピットファイアとP-38による護衛を全行程で随伴させた。もちろん、護衛戦闘機にも訓練が必要だったからだ。
……
ガーランドは、アメリカ爆撃隊がルーアンを攻撃して引き上げると、爆撃された地域の被害とドイツ空軍の戦果についての情報を集めた。その結果、空軍の戦闘機隊も高射砲部隊もかなり善戦していたが、それでも爆撃された操車場は、大きな被害を受けたことがわかってきた。ガーランドが達した結論は以下のようなものだった。
50機に対して20機を撃墜しても、30機が目標を爆撃できる。B-17は4トンの爆弾を搭載できるから100トン以上の爆弾が投下されることになる。ノルデンの精密照準のおかげで、2割以上が目標のエリア内に着弾すれば、20トンが命中したことになる。これだけの爆弾が集中して命中すれば、目標となった施設は大きく破壊される。
防空戦の分析により、ガーランドが達した結論は、更に多数の爆撃機を撃墜しなければ、うち漏らした爆撃機による被害は無視できないということだった。しかも大きな損害を与え続ければ、アメリカと言えども遠からず爆撃作戦そのものを中断せざるを得ないだろう。ガーランドは防空組織の強化に直ちに着手した。
戦闘機については、護衛戦闘機と戦う新型戦闘機と四発機を一撃で撃墜できる武装強化型戦闘機の配備を急がせた。
ガーランドは再びカムフーバーに連絡した。
「昼間の防空戦でもヒンメルベットの有効性が証明されました。これからは、ヒンメルベット局と昼間戦闘機隊が直接会話が可能なように通信機材を調整したいと思います。地上局の誘導員には、昼間戦闘機部隊の攻撃作戦を理解してもらって、誘導訓練も実施したいのです」
もちろん、カムフーバー中将もすぐに賛成して協力すると約束した。
「四発機の攻撃ならば、大口径機銃を多数装備した夜戦も使い道があるだろう。敵戦闘機をなんとかしてもらえるならば、爆撃機の攻撃には参加できるぞ」
「わかりました。護衛の戦闘機については、我々の戦闘機隊が排除します。その後に夜間戦闘機隊には戦ってもらいましょう」
ドイツ軍の防空態勢が強力なことをいやになるほど体験していたイギリス空軍は、大規模な爆撃作戦を実行するならば、各種の電波妨害策を使うべきだとアメリカ軍に助言していた。スパーツ少将は熟慮した結果、ウィンドウの活用を決めた。彼はレーダー波を反射する雲を使って、戦闘機を誘引するおとりのように使えるだろうと考えた。しかし、それ以外のレーダーの電波妨害機器の搭載はためらった。装置の追加で搭載可能な爆弾が減ることを嫌ったことが表向きの理由だ。しかし、実際にはイギリスが使用している電波妨害機器の効果を疑っていた。ドイツ軍の夜間迎撃が成果を挙げている状況では、イギリス空軍の対策の有効性を疑うのもやむを得ない。
1942年8月には、ヒンメルベット警戒網は、ドイツ本国の北側からベルギー北方を経てフランスのルーアン北方まで拡張されていた。警戒区域が拡張されたおかげで、ドイツ軍のレーダー警戒網はフランスを目標とした作戦でも有効に機能した。更に、沿海部のレーダーと上空を警戒していたFw200警戒機のおかげで、ドーバー海峡上空でもアメリカ軍爆撃機の位置と飛行方向を知ることができた。
探知したアメリカ軍の侵攻は、電子計算機の通信網を経由して、北フランスからベルギー、オランダのドイツ空軍部隊を統括している第3航空艦隊の司令部に報告された。3航艦の司令部もオペラハウスと類似した設備が設置されて、戦闘機隊の指揮官が待機していた。
第3航空艦司令部のシュペルレ元帥は、大規模な爆撃隊が侵攻してきたとの報告を受けて、配下の第2戦闘航空団(JG2)と第26戦闘航空団(JG26)に迎撃を命じた。
アメリカ爆撃隊が目標としたルーアンは、航続距離の短いスピットファイアでも護衛可能な距離だった。第8航空軍の作戦を成功させるために、イギリス空軍もスピットファイアⅨによる護衛を優先した。
キングカム少佐は、新たに配備された性能向上型のスピットファイアをかなり気に入っていた。この機体の性能ならばFw190Aと戦うことになっても、かなり有利に戦いを進められるだろう。しかも、今回の作戦は排気タービン付きのB-17の巡航高度に合わせて、高高度が戦闘空域だ。爆撃隊の飛行高度は、Fw190Aの性能が低下してくる2,4000フィート(7,315m)だった。この高度ならば、なおさら2段過給機を備えたスピットファイアⅨが有利に戦えるはずだ。
ドーバー海峡を超えた直後に、早くも前方からドイツ軍の戦闘機隊が南東方向から上昇してきた。ベルギー側から発進したドイツ軍の戦闘機は2群に分かれていて、それぞれが10機程度の編隊だった。そのうちの1隊が前方から爆撃隊に接近していった。
「前方からドイツ軍の戦闘機。おそらく液冷のメッサーだろう。敵戦闘機隊を排除する」
少佐は、先行してきた戦闘機隊は、機体のシルエットからBf109と判断した。おそらく中隊だろう。十数機の編隊に見える。
……
JG26のプリラー少佐は、操縦席の中でにやりとしていた。新型のFw190Dは、環境が整っているドイツ本土の部隊から配備が始まった。そのおかげで、JG26も新規配備の部隊に含まれることになった。この機体ならば、たとえ相手が改良型のスピットファイアであっても優位に戦えるだろう。
少佐は、レーダーによる誘導が使えるという地の利を生かそうと考えていた。
「敵の編隊はスピットだ。後方から敵編隊の後方に接近したい。雲に隠れて接近するので誘導を頼む。後方の第2中隊はそのまま前進せよ」
Bf109Fの編隊と分離して飛行したFw190Dの中隊に対しては、少佐の期待通り、後方を飛行していたKG200の早期警戒機が誘導してくれた。Fw190Dの編隊は、6,000mあたりの断雲に隠れながらイギリス戦闘機よりやや低いところを迂回して、後方に抜けるとぐんぐん上昇を始めた。エンジンをJumo213に換装した長鼻のドーラは、プリラー少佐の期待通りの性能を発揮していた。高度7,000mになってもFw190Dはどんどん上昇していった。
(やはり、フォッケウルフのエンジン交換は、成功だったな。アントンからドーラになって、高高度での性能は大きく改善された。後方のBf109Fはそのまま直進したおかげで、先にスピットに発見されるだろう。だが大丈夫だ。その間に我々は後方に回り込んでイギリス戦闘機を攻撃する)
プリラー少佐は新型のFw190Dでも4,000m以下の高度であれば、従来のFw190Aとそれほど差がないと感じていた。しかし、高度が上がれば話は別だ。明らかにJumo213の性能によりFw190Dが高速だ。
「スピットの編隊の後方に出た。これから攻撃を開始する」
しかも、今回はレーダーによる誘導で有利な態勢で背後から接近できた。プリラー少佐の編隊は、スピットファイアの編隊後方から上昇していった。既にスピットファイア編隊の後姿が見えていた。
「前方のスピットを攻撃する。突撃せよ。パワーブーストを入れろ」
上昇してきたFw190Dが水メタノール噴射でエンジン出力をぞうかさせて、後方から一気に加速しながら接近してくると、さすがにイギリス軍も気づいた。
いち早く後方のドイツ軍機に気づいたボーモント軍曹が、大声で叫んだ。
「後方に敵機だ! フォッケウルフが後方から接近してくるぞ」
この声で、スピットファイアのパイロット全員が後方を振り返った。一刻も早く回避しなければ、撃墜される位置関係だ。一斉に退避のための機動が始まった。しかし、Fw190Dは高度2,4000フィート(7,315m)でも、MW50パワーブースト(水メタノール噴射)を使えば、690km/hで飛行できた。一方、スピットファイアⅨは、660km/hが限界だった。
既にMW50を使って加速しているFw190Dから逃げられた機体はそれほど多くはなかった。旋回や急降下が遅れた編隊後方の2機がまず撃墜された。反射的に急降下に入った機体も、既に加速していたFw190Dが後方から追尾してきて撃墜した。
プリラー少佐が狙った機体は、緩い角度の上昇でFw190Dを引き離そうとした。速度差で距離をとった後に水平旋回で後方にまわって攻撃に転じるつもりだ。
(今までのFw190Aであれば、距離を開けて逃げられるだろう。しかし、今日はそうはいかない。私の乗機が新型機だからだ)
パワーブーストにより、どんどん加速した少佐のFw190Dは距離を縮めると、後方からの1連射で20mm弾と13mm弾を命中させた。少佐機の後方から、別のスピットファイアⅨが攻撃しようと接近してきていたが、僚機が上昇してきて、機銃弾を浴びせかけた。結果的に2機のスピットファイアが炎の尾を引いて墜落していった。
周囲でも激しい空中戦が始まっていた。スピットファイアⅨは機数で優っていたが、最初の攻撃で編隊がばらばらになってしまった。しかもフォッケウルフからの攻撃回避を優先していると、上空からBf109Fが降下攻撃を仕掛けてきた。戦闘機の空戦では、徐々にドイツ軍が優勢になっていた。
キングカム少佐は、接近戦になったことで攻撃してきた機体が新型のフォッケウルフだということを認識した。明らかに機首が長くなって、エンジンを乗せ替えている。フォッケウルフの速度と高空性能が向上していることも、エンジン交換と符合する。
少佐の機体は1発の20mm弾を左翼に受けて激しい振動が発生していたが、何とかイギリスに向けて飛び続けていた。既に無事に基地に戻ることが最優先事項になっている。
(空中戦を通して、新型のフォッケウルフがどの程度の性能なのかおおむね把握したつもりだ。なんとしても、帰投して新型機の登場を報告しなければならない)
その頃、爆撃機に迫っていたのは、北部フランスを基地としていたJG2の戦闘機隊だった。
大陸上空に侵入するとB-17の編隊は、ウィンドウの散布を開始した。しかし、イギリス空軍への迎撃戦でウィンドウによる妨害を経験していたドイツ軍は、大きく混乱することはなかった。電波妨害を受けてレーダーの設定を変更したり、通信回線から他の基地からの情報を受けたり、既に経験済みの対策で混乱を回避した。地上のヒンメルベット局は引き続き友軍の戦闘機をB-17の編隊に向けて誘導できた。
Ⅱ/JG2(第1戦闘航空団/第2飛行隊)のライエ大尉が率いていたFw190Aの中隊は、イギリスの戦闘機に妨害されることなく爆撃機の編隊に接敵できた。しかも、フォッケウルフの戦闘機は、R2改修により両翼下面に30mm機関砲を増設していた。
ドイツ軍機の装備を変更する方法には2種類が存在する。一つは、U改修と呼ばれる工場の生産ライン上で、装備を追加搭載する改修法だ。二つ目は、R改修であり、改修用のキットを現地部隊に届けた後は整備隊が装備を追加する方式だ。大尉の機体はR2仕様の現地改修により、30mm機関砲のMK108を両翼下面にそれぞれ1門ずつ装備していた。1,800馬力超のエンジンのFw190Aならば、装備追加の負担も小さいと考えられた。
フォッケウルフは、8,000m程度まで上昇してから、下方の爆撃隊に向けて急降下すると、750km/h以上の高速に達した。Fw190A型は高空性能が劣っていると言っても、8,000mで570km/h以上は出せる。B-17やB-24が相手ならば、十分攻撃可能だ。
爆撃機の直上からの急降下に対して、動力銃座は照準が可能だったが、高速の戦闘機に対しての追尾精度は低下した。12.7mm機銃の強力な防御武装を有するB-17やB-24に対して、頭上からの攻撃法は、ドイツ軍戦闘機隊が検討してきた攻撃法の一つだった。しかも急降下攻撃であれば、MK108の弾道が山なりになるという欠点も重力により顕著にならない。
ライエ大尉が、急降下攻撃で20mmと30mmの機銃を射撃すると、B-17の胴体中央部から右翼にかけて10発以上の機銃弾が命中した。爆発炎が晴れると、胴体と主翼に1メートルを超える破孔が生じた。右翼の破孔からは、激しく白い雲が後方に噴き出している。しばらくするとエンジンの排気を受けて右翼のガソリンの霧は激しい炎に変わると、そのまま機首を下げて墜落していった。
大尉はすぐに後方を飛行していた別のB-17に目標を移した。急降下から機首を上げて上昇すると、B-17の腹部を狙って射撃を開始した。胴体後部下面の球形銃座から猛烈に撃ってくる。しかも隣のB-17からも射撃してきた。イギリス軍とは異なり、アメリカの爆撃隊は相互の支援が可能なように密接な編隊を構成していた。
大尉は、後方からやや長めの射撃を行った。山なりになった曳光弾がB-17の前部に吸い込まれてゆく。B-17の前部胴体が爆発炎に包まれる。同時に大尉は、ガンガンと激しい振動を感じた。考えるよりも早く反射的に機首を下げる。降下しながら、すぐに自分の手足と体を確認したが怪我はないようだ。左翼側を胴体前半が激しく破壊されたB-17が墜落してゆく。2機目の撃墜を喜ぶ間もなく、風防の前面が噴き出してきたこげ茶色の液体におおわれた。
(これはエンジンオイルだ。すぐにプロペラが止まるぞ)
ライエ大尉のFw190Aは、フランスとベルギーの国境付近に不時着した。
(どこに降りても我が国の支配領域なので、問題ないだろう。パルチザンに気を付けていれば、明日には基地に戻れるはずだ)
……
B-24爆撃隊には、通常型のFw190Aの編隊が攻撃を加えていた。20mm機銃を4挺備えたFw190Aは、接近さえできれば、重武装により容易にアメリカの四発爆撃を撃墜可能だった。ドイツ軍機から繰り返し攻撃を受けて、数機のB-24が黒煙を引いて墜ちていった。アメリカ軍の搭乗員は圧倒的にB-17を好んでいた。B-17が被害を受けても粘り強く飛んでいられる機体の強度と、スピンに入りにくい安定度が優れていたからだ。
アメリカの爆撃隊が目標のルーアンに接近すると、お決まりのように高射砲が射撃してきた。但し、ドイツ本土とは違い、展開していた高射砲部隊は3個中隊から構成された1個大隊だった。そのため、射撃した高角砲は12門だった。
それでもレーダーによる測距と計算機を利用した照準により、高度7,500mの編隊に対して正確に射撃できた。爆撃編隊の中で近接信管の高射砲弾が次々と爆発すると、黒煙を吐き出す機体が現れた。煙の濃度がどんどん濃くなってゆくと機首を落として墜落していった。
激しい高射砲の弾幕を潜り抜けた40機近くの機体が、爆撃目標の操車場を捉えて投弾した。
爆撃が終了して帰投できたのは、出撃した48機の爆撃機のうち32機だった。しかも、撃墜されたのとほぼ同数の機体が二度と出撃できないほどの大きな被害を受けていた。今まで1つの作戦では決して発生しなかった2桁の被害だ。しかし、432発の500lb(227kg)爆弾を投下した結果、ノルデン爆撃照準器の効果により、2割が細長い目標の敷地内に着弾した。目標の完全な破壊は無理だったが、4割以上の施設に損害を与えられたのは昼間爆撃の効果だろう。
スパーツ少将は想定外に被害が大きかったことは認めたが、多数の爆撃機による昼間の精密爆撃という基本方針は間違っていなかったと考えた。爆撃の成果については、目的をやや下回ったが、有効だったと主張できる。元々、一度の攻撃では完全にルーアンの目標は破壊できないだろうと想定していた。従って、半分の破壊でも大きく想定成果を大きく下回ったわけではないとの判定だった。
それでも、アメリカ軍は数%の損失を想定していたので、被害は想定外に大きかったことを認めざるを得なかった。少将は爆撃隊の訓練不足と護衛戦闘機の連携の悪さを原因と考えた。
まず爆撃隊の隊形を防御力を高めるように進歩させる必要がある。6月から、ヨーロッパに来ていたルメイ大佐に隊形の改善を検討させた。大佐はいくつかの形態を実際に飛行させて実験した。最終的には、立体的に高度を変えた小隊を組み合わせて、18機を単位としたコンバットボックス型の編隊を完成させた。
護衛戦闘機については、そもそも機数が不足していた。第8空軍としてはイギリス空軍の戦闘機だけに頼るわけにはいかない。イングランドに到着し始めていたP-38ライトニングによる護衛を決定した。双発機のP-38は、スピットファイアよりもはるかに広い範囲の護衛ができるというメリットもあった。大型増槽を装備すればベルリンまでを行動範囲に収められた。
しかも、実戦の分析からは、スピットファイアが爆撃隊とはかなり離れた空域で戦っていたことが判明した。爆撃編隊から離れた間に攻撃を受けたケースも多かった。実際にはドイツ側が意図的に、戦闘機との空戦を先行させて、爆撃隊から護衛戦闘機を切り離したのだが、護衛戦闘機の行動が不適切だと判断されたのだ。
訓練のために、スパーツ少将は、北海沿岸のレーダー施設や近郊の鉄道などに対して、小規模な攻撃を実行させた。爆撃隊の練度を向上させる必要があったのだ。スピットファイアとP-38による護衛を全行程で随伴させた。もちろん、護衛戦闘機にも訓練が必要だったからだ。
……
ガーランドは、アメリカ爆撃隊がルーアンを攻撃して引き上げると、爆撃された地域の被害とドイツ空軍の戦果についての情報を集めた。その結果、空軍の戦闘機隊も高射砲部隊もかなり善戦していたが、それでも爆撃された操車場は、大きな被害を受けたことがわかってきた。ガーランドが達した結論は以下のようなものだった。
50機に対して20機を撃墜しても、30機が目標を爆撃できる。B-17は4トンの爆弾を搭載できるから100トン以上の爆弾が投下されることになる。ノルデンの精密照準のおかげで、2割以上が目標のエリア内に着弾すれば、20トンが命中したことになる。これだけの爆弾が集中して命中すれば、目標となった施設は大きく破壊される。
防空戦の分析により、ガーランドが達した結論は、更に多数の爆撃機を撃墜しなければ、うち漏らした爆撃機による被害は無視できないということだった。しかも大きな損害を与え続ければ、アメリカと言えども遠からず爆撃作戦そのものを中断せざるを得ないだろう。ガーランドは防空組織の強化に直ちに着手した。
戦闘機については、護衛戦闘機と戦う新型戦闘機と四発機を一撃で撃墜できる武装強化型戦闘機の配備を急がせた。
ガーランドは再びカムフーバーに連絡した。
「昼間の防空戦でもヒンメルベットの有効性が証明されました。これからは、ヒンメルベット局と昼間戦闘機隊が直接会話が可能なように通信機材を調整したいと思います。地上局の誘導員には、昼間戦闘機部隊の攻撃作戦を理解してもらって、誘導訓練も実施したいのです」
もちろん、カムフーバー中将もすぐに賛成して協力すると約束した。
「四発機の攻撃ならば、大口径機銃を多数装備した夜戦も使い道があるだろう。敵戦闘機をなんとかしてもらえるならば、爆撃機の攻撃には参加できるぞ」
「わかりました。護衛の戦闘機については、我々の戦闘機隊が排除します。その後に夜間戦闘機隊には戦ってもらいましょう」
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