月の綺麗な夜に終わりゆく君と

石原唯人

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約束

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一週間ぶりに見る彼女は点滴以外も色々な機械が繋がっていて起き上がる元気が無く、こちらに顔を向けるだけで精一杯の彼女に普段通りに夏織さんが話しかける。
「お姉ちゃん、篁さんがお見舞い来てくれたよ」
夏織さんの言葉に彼女の目が僕の方に向けられる。
「やあ、久しぶり」
僕は初めて見る彼女の姿に何を言えば良いのか分からず、普段通りにしようとしてぎこちなく挨拶をしただけで言葉が出なくなる。
「僕は沢山のものを君に貰ったのに君に何もしてあげられない」
結局それでも口からどうにか出た言葉は自分の無力感を懺悔する言葉だけだった。
「そんな事ないよ」
「本当に?」
「うん、貴方が自分で思っているより沢山の大切なものを貰ったよ」
「そうだといいな」
「もう少し自分に自信持ちなよ」
そう言われた僕は単純で胸に温かいものが広がるのを感じる。
「やっぱり、君は凄いね」
自分が一番大変な時なのに他人の事を思いやれる彼女の言葉に情けなさやら色んな感情が溢れそうになる。
「そう? 良かったら一つだけお願いしてもいい?」
「僕に出来る事なら何でもどうぞ」
こんな僕でもまだ彼女の為に何か出来るのなら何でもいいから何かしたかった。
「一緒に月を見に行かない?」
彼女のお願いに僕は拍子抜けする。
「勿論、そんな事で良いの?」
頷いて彼女が自分の小指を僕の指に絡めてくる。
「指切りげんまん嘘ついたら針千本呑ます、指切った」
そんな彼女との何気ない約束が嬉しかった。
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